「では、最後の実験です…。はい、何と磁石が宙に浮きました!!」9月2日まで行っていた、サイエンスショー「−200℃の世界」での1こま。液体窒素で超伝導体を冷やし、磁石を宙に浮かせていたのです。この超伝導体には、イットリウム(Y)が含まれています。そして、このYが非常に大事な物質でもあるのです。

 Yは、スウェーデンのイッテルビー(ytterby)という村で発見された、イッテルビットという鉱石中に、40%近く含まれていると事が分かりました。時に1794年。フィンランド人科学者、ガドリンが発見しました。しかし、ガドリンは、単体を取り出すことはできませんでした。単体を取り出されたのは1828年のことで、取り出した人物は、人類で始めて有機物を作り出したウェーラーだったのです。 スウェーデンが発見の地ですが、現在は、中国、アメリカ、オーストラリアなどが主な産出国で、50万トン以上が埋蔵されていると推測されています。用途は、レーザーの発振器、ブラウン管の赤色を出すための蛍光体などに使われます。また、セラミックスにも添加され、包丁などとしても使われます。

下の黒い物質が超伝導体

  さて、液体窒素温度で超伝導を発見したのは、ヒューストン大学のポール・チューという人でした。この研究室で、Yを使ったセラミックスを作り実験したところ、液体窒素(−196℃)でも超伝導をおこす物質を作ることができたのです。実は、この1980年代後半は、高温超伝導体を探すことで世界中が必死になっていたのでした。チューは、この論文を発表する雑誌で掲載が決まるまで、この超伝導体をイッテリビウム(Yb)の化合物ということで通しました。そして、印刷直前に書き間違いということでYbからYへ書き直させたということです。そして、見事に高温超伝導体の発見者ということになりました。彼がそのような手を取らなければならなかったのは、在籍していたのが田舎の小さな大学で、ベル研究所などという巨大な組織とも渡り合わなければならないためだったそうです。一寸でも情報がリークしてしまえば、あっという間にベル研究所出し抜かれてしまうという心配があったのです。

(うちゅう2001年9月号より)


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