連載ものを書いていると、取りあえず書けるところから書いてしまえとなってしまいます。そうすると、本連載のように百いくつというゴールが決まっているものは、後半の方にいくにしたがって、しんどくなっていくのは必然です。身近ではない、用途がないというのが書きにくい理由ですが、できるだけ、書きにくい元素も早目に取り上げて皆さんに紹介したいと思っています。そして今回が、その書きにくいものの一つ、イッテルビウム(Yb)、元素番号70番目の希土類元素です。

以前紹介した、イットリウムと同じ命名の由来を持ちます。それは、スウェーデンの首都ストックホルムの近くにあるイッテルビーという土地の名前からつけられたものです。発見者は、スイス、ジュネーブ大学の教授だったマリニャクという化学者です。彼は、スウェーデンのイッテルビーで採取される、ガドリン石から取り出した物質を熱分解しました。そしてそこからイッテルビアと呼ばれる物を取り出したのです。 これがYbにあたるのですが、さらにイッテルビアから、後に以前紹介したScが発見されています。イッテルビウムの元素

 Ybを発見したマリニャクは、精密な実験を繰り返して幾つかの元素の原子量を決める研究を行っていました。そして彼は「各元素の原子量は、水素原子の原子量の整数倍である」と信じていたために塩素のような35.5という当時としては半端な数字の原子量が出るのは、実験方法がまずかったか、計算ミスだと考えていました。

 さて、Ybの基礎データですが、原子量173.04、密度6.96g/cm3、融点824℃の灰白色の金属です。ハロゲンを含む全ての非金属と加熱することで反応させることができます。また、市場でのYb単体の取引価格は1kgあたり1600ドル程度で取り引きされています。他の希土類元素1kgが200〜20000ドルで取り引きされていますので、Ybはほぼ中くらいの値段で取り引きされているのではないでしょうか。 Ybの使い道は、あまりなく特殊なセラミックスやガラス、超伝導体の材料として利用されているそうです。

(うちゅう2001年10月号より)


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