食事をして、もし、味が感じられなかったら…。風邪で鼻が詰まったときなど、そんな経験をしたことはありませんか。味覚がないと1日3回(もっと多い人もいる?)の食事が苦痛になるかもしれませんね。鼻詰まりとき以外にも体の中のある金属が不足するとやはり味が感じられなくなったり、おかしくなったりする味覚障害を引き起こす金属元素があります。それが今回紹介する亜鉛(Zn)です。

亜鉛は、古くから知られている金属でしたが、中世までは合金で使われれていました。それは、合金の使い勝手が良かったせいもありますが、単体の取り出し方が分からなかったのです。結局、誰がいつ単体を取り出したのかというはっきりした記録は知られていません。紀元前から知られていたZnですが、13世紀のインドでようやく亜鉛鉱石を還元することにより単体が得られたといわれています。名前の由来は、一部の亜鉛鉱石がラテン語でzincumと呼ばれていたことに由来するようです。

Znは、原子量65.39、融点419.5℃、沸点907℃の銀白色の金属です。自然界で単体で存在することはなく、閃亜鉛鉱(ZnS)や、菱亜鉛鉱(ZnCO3)などの形で存在しており、アメリカ、カナダ、オーストラリアが主要な産地になっています。純度99.99%のZnの米国市場における取引価格は1ポンド(約453g)あたり0.5ドルと安い値段です。古くから知られていたZnですが、その用途の一つとして、Cuと合金を作り真鍮として使用されます。特に少量のZnを混ぜて作る合金は金色を作り出し、金属的な性質も優れているため、古代には貨幣としても使われていました。

60%Cu−40%Znの「6・4真鍮」は、硬くトランペットや、トロンボーンなどの楽器の製造や金製品の模造などに使われます。現在、Znの最も多い使用物は、鉄の上にZnをめっきしたトタンです。屋根などによく使われていますね。では何故、鉄の上にめっきをするのかですが、Znは鉄よりイオン化傾向が大きいため、水などと反応する場合、鉄より先にZnがイオン化してしまい、メインとなる鉄を錆から守ることができるのです。人間に必須のZnは、成人1日あたり15mg必要とされており、不足することで成長不良・停止、精子形成がされない、食欲不振、味覚異常がおこります。さて、次回は、鉄に行ってみましょう。



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