2005/12/17 16:09:33

南部陽一郎先生が科学館に

大阪市立科学館 斎藤吉彦


 12月2日に世界的に著名な理論物理学者、南部陽一郎先生が科学館においでになりました。南部先生は、素粒子論において歴史に残る数々の業績をあげられたのですが、ご自身で最も高い評価を与えておられるのが、「対称性の自発的破れ」という概念の提唱で、これは素粒子の質量起源を与えるものです。科学館にある「磁石のテーブル」はその「対称性の自発的破れ」を示す装置で、おそらく世界初のものです。南部先生はこの「磁石のテーブル」を訪ねて、科学館においでになりました。 





 「磁石のテーブル」で「対称性の自発的破れ」を楽しまれた後、


アインシュタインと記念撮影。

 次は南部先生からいただいたメールです。

 昨日は大変楽しく印象深い1日を過ごさせていただきました。

中略

展示の方位磁石について。
 巧みに工夫されています。市販の部品を利用したのはすばらしい。ただ、対称性の破れの概念は抽象的なものですから、これを分かってもらうのはなかなか難しいでしょう。前にいただいた論文を改めて読んでみました。磁石がなぜ同じ方向にそろおうとするのか、お互いのあいだにどんな力が働いているのか、展示の場所にも説明はあるとおもいますが。
あとで私自身いくつかの問題を考えました。(古典的か量子的かには無関係)

(a) ドメインの大きさが何故あのようになるのか?何度もやってみたらドメインの分布はどうなるだろうか?
(b) 境界の形によってどう変わるか?三角形ならば完全にひとつのドメインを作れるか?
6角ならば?トポロジーを変えたら?(たとえばドーナッツ型)
(c) 磁石の密度を変えたら?あるいは配置の形(3画格子、4画格子、カゴメ格子など)を強制的に作れるか?(容器の底に格子を入れる?)
(d) 温度に相当する一様な外場が考えられるか?相転移に相当する臨界現象がみられるか?
(これができたら面白い。)
(e) スピン波に相当するもの(Nambu−Goldstone mode)を観測できるか?(強磁性の場合には左巻きか右巻きのカイラル波しか存在しない。)
(f) 反強磁性体のモデルはできるだろうか?


 詳しくは「月刊うちゅう」に書く予定です。みなさんも、一度「対称性の自発的破れ」に挑戦してみませんか?こうご期待!
 南部先生には、貴重な時間を割いていただき、またコメントまでいただき、これ以上の光栄なことはありません。ここに、南部先生に謝意を表します。ほんとうにありがとうございました。

大阪市立科学館 斎藤吉彦