「夏休み何でも相談室」の実施について

斎藤吉彦

大阪市立科学館

 

概要

 夏休みの自由研究課題にヒントを提供することを目的に、自由研究見本の展示、および相談員による相談室を実施した。はじめに

夏休みの自由研究課題に「どうしよう、なにをしよう」とまったく手付かずで悩む学童が多いようである。そこで、自由研究着手のきっかけとなるヒントを与えることを目的に「なんでも相談室」と「夏休み自由研究ヒント展」を実施した。熱心なのは学童本人でなく保護者であって、相談室は科学工作のワークショップと化した。以下にその様子を報告する。

 

2.なんでも相談室

図1.「なんでも相談室」。科学工作をする親子の向こうで、保護者が相談している。

実施期間は学童のニーズが最も高いであろうということで、8月21日(火)〜30日(木)の9日間とした。相談時間は準備後片付け、および相談員の休憩を考慮し、次ぎの3つの時間帯とした。

10:00〜12:00

13:00〜14:30

15:00〜16:30

学生2名と学芸員とが相談に応じた。基本方針は学童の自主性を促すこととした。すなわち、学童の質問に直接答えを与えるのではなく、調査方法などを示すこととした。

実施した結果は、本来目的とした自由研究の相談はほとんどなく、あっても学童本人でなく、教育熱心な保護者によるものであった。大勢が一度に相談に来る場合を想定し、予約制としたが必要なかった。そこで、見本展示(次章参照)のサンプルを使用した科学工作のワークショップが始まった。これには来観者のモデリングが生じ、入館者が多くなると参加者が激増し、大人気であった。

図2.ワークショップと化した「何でも相談室」

相談者が少なかったのは、イベント自体に魅力が感じられない、来館するほどのニーズがない、などが考えられる。周知が不十分であったことも考えられようが、テレビ放映がなされたものの翌日の反響が少なかったことから、それは本質ではないようである。次回実施する場合は、内容の工夫が必要であろう。以下は学生相談員の日誌からの抜粋である。

 

8月21日(火)

台風のためかあまり人がいなかった。真空ポンプを作ったという子どもの質問に答えた。(T)

午前中は全く人がこなかった。昼からは台風もおさまり、人も多くなった。質問も何件かあって、なんとか形にはなった。(O)

8月22日(水)

14:00ごろより急に繁盛しはじめた。ちびっこがいっぱいで工作中心。15分きざみではこなせなかった。(O)

工作コーナと化してしまった。自由研究については1人聞きに来ただけ。人がうじゃうじゃしてきたら、絵を描かせて流れ作業的にするとなんとかのりきれそう。(T)

8月23日(木)

午前中はほとんど人がいない。午後からは忙しくなった。こま作りが簡単なのでやりたがる子が多かった。(M)自由研究らしきものをしている人が少し多くなってきた。(T)

8月24日(金)

前日までの記録では午前中は余裕があると思っていたが、それほど余裕はなかった。午後はどとうのようにちびっこ達がやってきた。(M)

今日はブーメランが大人気。休憩時間は任意で交代した方がよい。(T)

8月25日(土)

スライムづくりをした。(Y)

自由研究の相談にあまり応ずることができなかった。(I)

8月26日(日)

スライムに色をつけた。ちびっこは大喜び。キラキラこまも大人気。(I)

いまどきのちびっこでも「コマ」にむちゅうになるのは、やっぱりちびっこなんだな。(Y)

8月28日(火)

「そんなにスライムが好き?」自由研究の相談と思ってたのに、普通に工作をやってるという感じ。(A)

なぜ、本人でなく親御さんが質問に来るのだろう?どうしたら飛行機がよくとぶのかを考えるのではなく、色付けに夢中。(M)

8月29日(水)

昨日より落ち着いてきた。工作やその他小道具をカウンターに置いておくとそれに関心を示して集まって来る子がいた。(A)

カッターを使ったことのない女の子が「カッターの使い方を覚える!!」と言ったので、力を入れて教えておいた。(M)

8月30日(木)

今日は難しい質問が多くて困った。でも、やはり工作が多い。(T)

相談とは少し違う気がする。しかし、工作に目覚めた子が次々と挑戦していたので、それは非常によい経験になっているだろう。(U)

 

3.夏休み自由研究ヒント展

下記のアイテムを自由研究のヒントとして展示した。展示物の製作は科学館学芸員の分担による。

日時計2種、スライム、手作り電池、望遠鏡、紙飛行機、ピンホールカメラ、カメラオブスキュラ、折り紙で化学の世界、草や花で染めよう、結晶作り、ペーパークロマトグラフ、振り子、ベンハムの円盤、イヤホン、クリップモータ、ブーメラン。

展示期間は夏休み期間の7月20日〜8月31日である。

主に成人が熱心に観察し、相談員に質問をしていた。自由研究課題で追いつめられているのは保護者であって、学童はのんびりと夏休みを過ごしているのかもしれない。じっさい「自由研究するもしないも自由」という声を聞く。

図3.「夏休み自由研究ヒント展」

 

4.まとめ

自由研究は自ずから課題を見つけ、自ずから解決するために試行錯誤し、そして達成感を味わうというのが本来の姿であろう。また、夏休み中、手付かずで思い悩むのも学童にとっては貴重な経験であろう。ところが、保護者の方が自由研究に熱心になるようで、学童には科学館に来てまで解決しようとする気概はないと思われる。このことはテレビ放映後の反応がほとんどなかったことから推測できる。単に自由研究の相談というだけでは学童にとってまったく魅力がなさそうである。以降実施するにあたっては、学童にとって魅力あるイベントであり、しかも科学館でしかできないものを考案する必要がある。また、本来の自由研究の目的を損なわないよう配慮しなければならない。さらに、学校教育の補完としてではなく、科学館の積極的な普及事業であって、結果的に相乗効果が生まれるようなものでなければならない。