サイエンスショー「ハラハラドキドキ静電気大実験」実施報告

斎藤吉彦

大阪市立科学館

 

身近なもの及びバンデグラフ起電機を用いた静電気による現象を観察し、電荷の移動をイメージさせるサイエンスショーを企画し、2000年12月〜2001年2月の期間実施した。

 


1.はじめに

バンデグラフ起電機による現象は放電など極めて大きく、強い印象を与える教材である。見学者の「良い反応」を得やすいので、当館では過去に何度もサイエンスショーのテーマとして採用してきた。大きな現象はショーアップには必須であるが、次のような傾向があるので注意が必要である。見学者は大きな現象だけで満足する。いわゆる「びっくり箱」による驚きに満足し、見学者は「良い反応」を示す。一方、演者はこの「良い反応」に自己陶酔する。ここには科学的思考による満足感がない。科学的思考を促がすことを常に心がける必要がある。そこで今回は、バンデグラフ起電機の迫力だけに頼ることを避け、身近なもので電荷の基礎概念の導入をし、バンデグラフ起電機で電荷の移動を思考させることを試みた。

2.演示

(1)導入

1−1.空飛ぶ電気クラゲ(正負電荷の相互作用)

細くさいたビニールひもと塩ビパイプをそれぞれティッシュペーパーでこすり帯電させる。

ビニールひもが塩ビパイプと反発し空中に浮き(図1)、アクリルパイプには引き付けられからみつく(図2)。

これらの現象を楽しみながら、パネルで正負電荷の相互作用を導入する(図3)。

1−2.手作りライデンびん34

プラスチックのコップとアルミホイルで作ったライデンびんを塩ビパイプで帯電させ、百人おどし、放電、蛍光燈の点灯(図4)。バンデグラフ起電機を理解するための準備をする。

 


図1

 


図2

 


図3

 


図4

(2)バンデグラフ起電機による実験

2−1.バンデグラフ起電機の説明

手作りライデンびん→金属球、塩ビパイプ→ゴムベルトと対応させ、バンデグラフ起電機の原理を説明する。放電の大きさから電圧を推定する(図5)

 


図5

2−2.電荷の移動

バンデグラフ起電機の金属球につけた紙テープが立ち上がる(図6)

金属球を触れた人の髪の毛が逆立つ(図7)

金属球から紙テープ、人体への電荷の移動と正電荷同士の反発を電気クラゲ(1―1)を例にとり現象の説明をする。

2−3.紙ふぶき(静電誘導)

 バンデグラフ起電機に紙ふぶきが引き寄せれれ、接触後飛び散る。飛び散る事は2−2から理解できるが、なぜ引き寄せられるかをパネルで説明(静電誘導)。静電気はものを引きつけるという常識に疑問を持たせ、思考させる。

 


図6

 


図7

2−4.ファラデーの籠(静電遮蔽)

金網で作った籠に金属製の竿を取付、ビール缶を針金で吊るす。

ビール缶の下で、バンデグラフ起電機を帯電させると、ビール缶が揺れながら徐々に降下し、やがて金属球−ビール缶間で放電が生じ、その後、バシッ、バシッと放電が続く(図8)

 


図8

見学者が金網に入る(図9)。金網の中は放電の影響を受けないが、外は放電のショックを受ける。蛍光燈が点灯する、しないでそれを確認。

 


図9

電荷の移動、静電遮蔽をパネルで説明(図10)

 


図10

 

3.考察

これまでの静電気実験はバンデグラフ起電機による放電を導入に使い、全ての実験がバンデグラフ起電機を使用したものであった。今回は、日常的なものによる実験を導入とした。その結果、以前は大きな現象だけが喜ばれるいわゆる「びっくり箱」という傾向が強かったが、思考・推論を楽しむサイエンスショーが展開できたようである。特に見学者の多くは、電荷の移動、電荷による引力・斥力、バンデグラフ起電機の原理を学習できたようである。バンデグラフ起電機だけでは見学者にとって全く特別な装置とそれによる特殊な現象でしかなく、リアリティに乏しいショーである。ビニールひもや使い捨てコップなどによる実験は日常的な道具によるものでありリアリティがあり、また、現象も効果的である。さらに、この実験の効果でバンデグラフ起電機も特殊な実験装置でなくなったようである。今回の静電気実験は従来の「びっくり箱」から思考・推論のできるものへ変革することができたと考える。

ただし、今回の実験メニューを20分間で展開するのは困難で、2−4「ファラデーの籠」は駆け足状態で十分な思考・推論ができなかった。時間の余裕があればこの展開でよいのだが、当館では20分という制約があるので、精査が必要である。

参考文献

1 大阪市立科学館研究報告2 127-132 (1992)

2      おもしろ理科実験集(工学院大学企画部)P.73

3      おもしろ理科実験集(工学院大学企画部)P.76

4      小野昌弘 大阪市立科学館研究報告10 113-116(2000)