磁石に関する展示コーナ開発について

斎藤吉彦

大阪市立科学館

 

概要

 本館4階展示場の「サイエンスタイムトンネル」において、磁石に関する展示コーナの開発を試みて入る。その一環として、展示品2点「磁石と磁石」、「天然磁石」を追加した。

 


1. はじめに

1999年に開設したされた展示ゾーン「サイエンスタイムトンネル」は古代から現代までの科学の発達史を概観するもので、静展示と参加型展示を併設し、それぞれの利点の相乗効果が期待されていた。しかし、設置後の評価では、\電玄┐呂曚箸鵑浜用されていない、⇒茣兌圓砲箸辰篤颪靴ぁ↓3禿玄┘▲ぅ謄爐唐突である、こ擴依遒繊△覆匹隼愿Δ気譴討い襦[1],[2]

 

写真1.「サイエンスタイムトンネル」の導入部付近

 

「サイエンスタイムトンネル」の中の電磁気学の発達史を表現するエリアも例外ではなく、表1に示すように磁石に関しては、「磁石のいす」1品だけが展示されていた(写真2)。磁石は電磁気学において不可欠の概念であり、このエリアの導入部で磁石は重要な役割を担う。

「磁石のいす」(写真3)はネオジム磁石の強力な反発力をクッションにしたインパクトのある展示で、当館では相対的には人気がある。[3]しかし、磁石に関するものがこの1品だけなので、磁石を見学者の記憶に残すことができず、他の電磁気学の展示との関連が得られていない。すなわち、電磁気エリアの展示として機能していない。そこで、磁石の記憶を強めるため、表2に示した磁石に関する展示を増設した。

その後、天然磁石はケースから外へ出し、ハンズオン展示とした。様々な磁石もケースから外へ出し、壁掛け用パネルに改良する予定である。

磁石に関しては、これまでよりも効果的なゾーンになっている。

 本稿では、今回増設したうちの「磁石と磁石」、「天然磁石」の2展示の開発について報告する。

 

1.電磁気エリアの展示一覧

人間電池

2種類の金属板と人間によって“電池”ができることを体験できる

磁石のいす

2つの強力磁石の反発力をクッションにした椅子 

静電気マシン

ウィムズハースト型という起電機で静電気を発生させ、放電などを観察する 

北はどっち?

電流と磁界の関係を示す「右ネジの法則」を体験的に学習できる 

飛び出すコード

磁石の間でコードに電流を流すとコードが飛び上がる。

トランス

ファラデーリングの体験版 

磁力線を見よう

磁力線を観察しながら、電磁誘導を体験的に学習する

回転たまご

銅製のたまごを交流磁場で回転させることで、誘導モータを体験的に学習する 

電波が見える

ヘルツの電磁波発見の体験版

ベルの電話機

ベルが発明した電話機のレプリカ 

じ・し・や・く

アルミ板を磁石で動かす 

電磁気

19世紀に発達した電磁気関係の実験器具などの静展示

エジソン

円筒レコード用の2台のエジソン蓄音機(1910年製造)や円筒レコードなどの静展示

 

写真2.電磁気エリア。「磁石のいす」付近

 

写真3.磁石のいす

 

写真4.さまざまな磁石


表2.増設した展示

磁石のテーブル[4]

磁区や磁力線を観察する装置

磁石と磁石

写真5

磁石と磁石との相互作用を体験する装置

磁石の利用・今昔

写真4

天然磁石、指南、19世紀のものと思われる馬蹄形磁石、乗用車やパソコンなどに利用されている様々な磁石のケース展示

 

2.磁石と磁石

アクリルケース180個(1215列)を格子状に並べ、各ケースにネオジム磁石を入れ、強化ガラスでふたをする。強化ガラスの上で、フェライト磁石を動かすとネオジム磁石が蚤のように反応する。使用した物品のサイズなどを表3に与える。図面を本編最後に添付した。

写真5.「磁石と磁石」

 

表3.「磁石と磁石」に使用された主な物品

アクリルケース

35×35弌透明

ネオジム磁石[i]

約1个離優ジム磁石を数個一直線に吸着させたもので、熱収縮チューブ(赤と青)でNSが解るようにコーティング

フェライト磁石

直径100个離侫Д薀ぅ伴Ю个鯑明アクリルでコーティング

 

2−1 反応テスト

35×35个離▲リルケース16個にネオジム磁石を入れたもの[5]で、被験者数人に対して反応をテストし、好評であることを確認した。これらの事前評価を基に、アクリルケースを増やし展示品として制作することした。

写真6.テスト品

 

2−2 制作後明らかとなった問題点

1.                                 アクリルケースの蓋にネオジム磁石の角で傷が付き、すりガラスのように、曇った状態になる。

2.                                 ネオジム磁石が銀色で背景が黒色なので、ネオジム磁石が目立たない。

3.                                 ネオジム磁石が磁石として認知しにくい

2−3 改良した事項

1.                                 傷の付いたアクリルケースの蓋をはずし、強化ガラスで直接蓋をする。

2.                                 傷付き防止のためと磁石としてイメージしやすいように、ネオジム磁石を熱収縮チューブ(赤と青)でコーティング

3.                                 ネオジム磁石が目立つように、背景を黒から白に変更

2−4 今後の課題

ケースの外で操作するフェライト磁石の改良が課題である。磁石がイメージできないし、また、ガラスと接触する面が単極なので、ネオジム磁石の動きが単調である。そこで、棒磁石に変更し、NSが分かるように赤と青に色分けしたFRPで覆ったものに変更する予定である。

2−5 評価

 反応テスト時ではアクリルケースが16個とスケールが小いため、観察する目の位置が対象物に非常に近くなり、動きがダイナミックに見えた。ところが、アックリルケースを一桁増やして、展示物にしたところ、目の位置が大きく後退し、対象物の動きが小さく見えるようになり、面白味が半減以下となった。磁石の記憶を強化させる機能は他の展示との相乗効果で果たしてはいるが、想定していた効果はない。

 スケールを小さくして試作する場合、目の位置や視野が変化することに注意が必要である。

 

3.天然磁石

写真7.「天然磁石」

 

天然磁石の磁力をクリップなどをくっつけて体感するものである。

3−1 制作まで

1.                                 サイエンスショーで使用し、見学者の興味を事前に把握していた。[6]

2.                                 ケース内に展示したが、ガラス越しで遠い存在であった。また、ケース展示のため、目立たないので、存在に気づかないことが多かった。

3−2 設置後の反応

1.                                 触れるようにすることで、吸引力・保持力が格段にあがり、見学者の反応も上々である。

2.                                 磁石の記憶を強化させるのに、大きな効果をもたらしていると思われる。

 

3.まとめ

磁石に関する展示は、このゾーンで5点となり、「磁石のいす」が一点の時と比べて、相乗効果が生まれ、磁石の記憶を残したまま、電磁気の展示を見学することが可能になった。今後、磁石につくものとつかないものという基本的な展示を付加することを検討中である。

しかし、電磁気の展示とはまだリンクできていないようである。電磁気の展示も、磁石の展示が「磁石のいす」一品だけだったように、1つの概念に対して1つの参加型展示を配しているだけで、利用者にとって困難な展示となっている。そこで、「飛び出すコード」には携帯電話などのモータ各種を、「磁力線を見よう」には自転車の発電機を、「回転たまご」には、洗濯機などのモータなどのケース展示を増設しているが、まだ背景となる展示が少ないようである。特に、電気コードに電気が流れていることがイメージできないのが困難の要因と思われる。今後の課題は、他の電磁気に関する展示の増設し、磁石ゾーンと有機的に機能する電磁気学のエリアとすることである。

 

謝辞

「磁石と磁石」は(株)SGSの渋谷勝氏が既に製作され、実演に使用されていたものを原型に展示化したものである。渋谷氏には展示化を快く許可していただいた。ここに、謝意を表する。また、()彩美術工房の松井俊二氏には、「磁石と磁石」と「天然磁石」の設計・製作において、適切な助言をいただき、さらに、無理な注文にも快く応じていただいた。ここに、謝意を表する。川端紫生氏には「磁石と磁石」のネオジム磁石180個全てをコーティングしていただいた。著者の不適当な指示で何度も作り直しとなったが、丁寧に仕上げていただいた。ここに謝意を表する。

 

参考文献



[i] ()SGS寄贈



[1]大倉宏・斎藤吉彦:大阪市立科学館研究報告 No11,2001,43-46

[2]井上晴貴・菊池恵子・染川香澄・那須孝悌・横尾武夫:大阪市立科学館研究報告 No11,2001,47-60

[3] 斎藤吉彦:「大阪市立科学館における展示の利用実態評価」(本編)

[4]斎藤吉彦:大阪市立科学館研究報告 No12,2002,57-62

[5]渋谷勝氏のアイデア

[6]斎藤吉彦:「サイエンスショー「磁石のひみつ」実施報告」(本編)