お母さんのための科学教室「世界初の電池に挑戦」実施報告

斎藤吉彦

大阪市立科学館

 

概要

電池の発明が科学史・産業史に与えたインパクトを知ることを目的とした科学教室を実施した。対象は主婦で、数種類の実験と本館で開催中の「大英科学博物館展―電池200年―」の見学を行った。

 

 


1. はじめに

本館で開催中の「大英科学博物館展―電池200年―」(大英展)にあわせて、主婦対象に標題の教室を催した。大英展は電池の発明が科学史・産業史に与えたインパクトを語るもので、この見学も含めた教室を実施した。実施内容は、まず、実験を通して電池発見までの歴史を学習し、その後展示場で関連ハンズオン展示と大英展見学をする、というものである。以下に実施した様子を報告する。

2.実施要綱等

定員:30名

参加費:300円

日時:12910日 14001530

参加人数:9日7名、10日2名

3.実験一覧

(1)    静電気の時代

目標:電池が発明される以前は定常電流はなく、電気に関する知識は静電気によるもののみであった。現代から見るとそれは非常にわずかな知識でしかなかった。このことを静電気実験を通して実感する。

実験内容

手作りライデンびんで蛍光燈を点灯させる。1、2

ウイムズハースト起電機による放電実験

バンデグラフ起電機による放電実験

(2)    電池が発明されるまで

目標:ガルバーニの動物電気の概念を知る。「人間や動物から電気が取り出しているのでは?」という推測をさせる。

結線したアルミ箔とステンレス製のスプーンで舌をはさめば味がする。

人間電池:アルミ缶とステンレス製のスプーンで人間電池を作り、電子オルゴールを鳴らす。2、3

十円硬貨と一円硬貨と人間で生じる電流をテスターで計測する。

(3) 電池の発明

目標:ボルタの発明を再現し、動物電気の概念から電池の概念への飛躍に感動を与える。塩水で得られる電流が人間で得られるものより桁違いに大きいことからこの感動を与える。

十円硬貨と一円硬貨で塩水で濡らした厚紙をはさみテスターで電流を計測。指針が飛ぶように動くことを確認(11円電池)。

上記11円電池を6組重ね(ボルタの電堆)、LEDを灯す。

データ

 11円電池の電流、電圧データーを以下に記す。

1.11円と指:15μA

2.11円と塩水で濡らした指:80μA

3.   11円と塩水で濡らしたティッシュ:

500μA500mV

4.   3で10円硬貨を磨く:1mA500mV

4.まとめ

参加者は動物電気からボルタの発見への飛躍を体験し、感動を得たようである。大英展を見学する十分な基礎知識は得ていたはずであるが、期待した反応はなかった。「これが、最初の電池!」という大きな反応はなかった。実験のインパクトが強烈で、その余韻のため資料を観察する心理状態になっていなかったのかもしれない。実験はねらい通りであったが、大英展見学はその反動で、思惑からはずれてしまったようである。短時間で二兎を追うのは無理なのかもしれない。実験とケース展示見学一組の事業は、2日間コースとし、初日は実験、2日目は見学とするなど、方法を検討する必要がある。

 

謝辞

サイエンスショー「電池の実験」が本教室と同時進行であり、その考案者である小野昌弘氏は既に多くの予備実験を実施していた。今回、この教室を準備するにあたって、小野市から詳しい情報を頂いた。ここに謝意を表する。

 

参考文献

1.   後藤道夫他「おもしろ理科実験集」工学院大学企画部p.76

2.   小野昌弘、本編「サイエンスショー・電池の実験実施報告」