ホシ ヲ メグル センイチ ワ

星や天文にまつわる短いお話を1001話書こうと思います。スタートは2005年2月25日。ボチボチやっていきます。

公序良俗に反さないかぎり、配布・コピーは自由とします。出典を、小さくてもけっこうなので、明記してください。WEBに転載される場合は大阪市立科学館の渡部ページにリンクをお願いします。

大阪市立科学館 学芸員 渡部義弥

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2026年10月16日 第179話 オーストラリアから見えない星座はない

ある場所から見える星は、一度に最大で天球の半球分、つまり半分です。ただ地球の自転に伴う日周運動で、星が昇ってくるので、やがて見えない星も見えるようになります。

ただ、自転によっても見えない星があります。極端なのは北極点で、星は水平方向に日周運動をするため、天の赤道より南の星は地平線の上にやってこなくて見えません。南極点ではその逆になります。

日本のような中緯度では、見えない星は減りますが、それでも大阪ではみなみじゅうじ座など、天の南極付近の10個の星座が見えず、加えてみなみじゅうじ座もほんの僅かのエリア以外はません。

では、オーストラリアではどうでしょうか。首都キャンベラや最大都市シドニーは、ちょうど大阪と赤道を挟んで対称の場所にあるので、天の北極付近の星が見えず、こぐま座などいくつかの星座は見えません。 ところが、オーストラリアの国全体で見ると、事情が変わってきます。オーストラリアの最北端はヨーク岬の北側のトレス諸島で、これが南緯9度ほどなのですが、 ここでは天の北極から9度以内、つまり赤緯81度以上の星だけが見えません。ただ、赤緯81度以上だけに広がる星座はなく、北極星を含むこぐま座でさえ、一部は見えるのです。

結果として、オーストラリアからはすべての星座の少なくとも一部分は見えるのです。

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2026年10月10日 第178話 土星の色

青い地球、赤い火星など、惑星にはそれぞれ特有の色があります。地球は表面の7割を占める海。火星は表面を覆う赤茶けた砂の色を反映しています。

火星は時々やや黄色っぽく見えることがあります。惑星規模の砂嵐が起こり、表面の模様をかき消してしまうためです。また、地球も氷河期のころは全体にもっと白っぽかったでしょう。

では、土星はどうでしょうか。土星の色味は、太陽系の惑星では火星についで赤っぽく、だいたい黄色と言われることが多いです。ただ、この土星は時に白っぽく見えることがあるのです。

土星の表面は雲であり、色味の変化は乏しくなっています。変化の最大の理由はリングで、これは全体として白っぽいのですが、見込む角度が±30度近くも 変化し、リングが傾いて、反射した光がよく見えるときは土星はやや白っぽくなり、リングがほぼ真横を見る時は本体の色を反映して黄色っぽくなります。

この変化の周期は15年ごとになります。

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2026年10月9日 第177話 巨大な望遠鏡IceCube

2026年のノーベル物理学賞は、IceCube(アイスキューブ)・ニュートリノ観測所による 高エネルギーニュートリノ研究を長年牽引してきた、フランシス・ハルツェン博士に授与されることが決まりました。

IceCube は、南極の分厚い氷そのものを巨大な検出器として利用し、 氷に掘削した多数の縦穴に光センサーを吊り下げて、 活動銀河核などの宇宙の天体で生じる超高エネルギーニュートリノを捉えることを目指した観測施設です。

超高エネルギーニュートリノは宇宙の遠方から飛来することもあり、 検出できる数は非常に限られています。 そのため、「とにかく大きな検出体で待ち受ける」という発想が必要でした。 IceCube が用いたその“検出体”は、1立方キロメートルにも及ぶ南極点付近の氷です。 ニュートリノが氷中の原子と衝突して生じるミュオンが放つ チェレンコフ光を捉えるには、大量で均質、しかも極めて透明な物質が求められます。 そこで選ばれたのが、南極点地下の氷でした。

南極点は標高約2800m、その下の氷も2000m以上の厚さがあります。 地下1450~2450mにセンサーを展開することで、 圧力によって均質化され、100m先まで見通せるほど透明な氷を検出器として利用できるのです。

つまり IceCube は、1立方キロメートルの巨大な氷のニュートリノ望遠鏡です。 天文学では、望遠鏡は大きければ大きいほど、かすかな天体の信号を拾うことができます。 巨大であることは、それ自体が観測能力の向上につながります。

では、他の種類の望遠鏡では、何が「巨大」なのでしょうか。

波長帯 最大級の望遠鏡・観測装置 サイズ
電波 FAST(中国) 口径500m
赤外線(近~中間赤外) ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST) 主鏡6.5m
可視光・赤外線(近赤外) ELT(建設中) 主鏡39m
紫外線 ハッブル宇宙望遠鏡 主鏡2.4m
X線 チャンドラX線観測衛星 外径約1.2mの斜入射鏡
ガンマ線 CTAO 口径23mの大口径望遠鏡(LST)4台を含む、100台近くの大気チェレンコフ望遠鏡(3~10 km²に配置)
ニュートリノ IceCube 検出体積約1km³

CTAOは、100台近くの大気チェレンコフ望遠鏡を3~10 km²の広大な領域に配置する計画です。水平方向の広さではIceCubeの約1 km²を大きく上回りますが、IceCubeは1辺1kmの立体的な検出器である点が特徴です。 IceCubeは、やはりとてつもないことが分かります。

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2026年10月8日 第176話 ボレアリスとオーストラリス(北と南)

星や星座の名前を英語で覚えると、ときどき ボレアリス(borealis) や オーストラリス(australis) という言葉が出てきます。

たとえば、みなみのかんむり座は コロナ・オーストラリス(Corona Australis) ですし、 北極付近で見られるオーロラは オーロラ・ボレアリス(Aurora Borealis) と呼ばれます。 タイトルに書いたように、ボレアリスは「北の」、オーストラリスは「南の」という意味があるラテン語です。 国名になっているオーストラリア(Australia)は、南の土地という意味があります。これも同じ使い方ですね。

このことを知っていると、なるほどなと思うことが時々あります。みなみのかんむり座の星座略号はCrAですが、 かんむり座はCrBとなっています。つまり本当は「北の」かんむり座(Corona Borealis)なんですね。

なお、星の話ではないのですが、オーストラリアとよく似たヨーロッパのオーストリア(首都のウィーンの方が有名な国)は、 なんと東の地域という意味です。古いドイツ語の Ostarrîchi、Ost(東)Reich(地域)であり、これがAustriaになったのです。 神聖ローマ帝国の東の地域という意味だったのですが、おもしろいですね。