ホシ ヲ メグル センイチ ワ

1-25

 

星や天文にまつわる短いお話を1001話書こうと思います。スタートは2005年2月25日。目標は1日1話。
順調にいけば、3年後、40才になる前に完結の予定。
公序良俗に反さないかぎり、配布・コピーは自由とします。出展を小さくてもけっこうなので明記してください。WEBに転載される場合は大阪市立科学館の渡部ページにリンクをお願いします。

大阪市立科学館 学芸員 渡部義弥

2006年1月15日 第25話 土星の環を初めて見た2人の天才

土星の環をはじめて見たのは1610年のイタリアの科学者ガリレオ。でも彼の14倍の望遠鏡では、環かどうかがわからなくて、2つの星が土星本体の両側にあるとしている。環だとはっきりいったのは1655年のオランダの科学者ホイヘンスで、アクロマートが発明されていなかったので、長大な望遠鏡を使用し、そのするどい洞察力により環だと言い切った。

ガリレオは著名な科学者だし、ホイヘンスは機械式(振り子)時計の発明などでも知られる天才である。この二人の天才をたった2500円の望遠鏡で超えられるのだから、いまはすごい時代ですね。

そうそう、ガリレオを超える。といういいかただとこんな本がでています。月のクレーターも、木星の衛星もガリレオの発見。天の川が無数の星であることも、見えない星がたくさんあることも、みんなガリレオが見つけた。まあ、すくなくとも当時の人が見つけたわけです。

2006年1月15日 第24話 土星の環を見るには

土星を望遠鏡で見て「つまらなかった」という声はあまり聞かない。みな一様に、すこしばかり興奮して「かわいかった」「絵じゃなくて本物だよね」と、その体験のうれしさをかみしめる。宇宙に実際にあんなものが存在する。宇宙の不思議さの象徴が土星である。

土星を見る目的は決まっていて、その環を見ることだ。そして、見るためには望遠鏡が必要である。残念ながら、肉眼では環を確認することができない。古代からの鋭眼の天文学者がすべて、土星の環、またはそれに類するものに言及していないことからもそれが分かる。

では、どれくらいの望遠鏡が必要なのか。結論からいうと倍率30〜40倍以上。望遠鏡の筒の先のレンズに2枚組の色消しレンズ(アクロマート)を使っていれば、まず見える。このクラスだと、組み立てキットでちょうどいいものがあって、ぼくの職場のショップだと税込み2500円だそうだ。

ただ、倍率30倍ということは、手持ちで見るにはかなり難しく、なんらかの台座が必要になる。上のキットの別売り三脚は1000円だけれども、家にカメラやビデオ用の三脚があれば、そちらのほうがもちろん性能がよい。

もちろん、もっといい望遠鏡を使えば、もっと細かなところも見えてくる。しかし、2500円を1万円にしてもそんなに大きな差はない。もちろん、何十万円もかければ、性能のよい望遠鏡が買え、倍率も高くできるけれども、こんどは取り扱いが難しくなってしまう。

 

2005年12月7日 第23話 いまどきの宇宙人

科学者というのは、何でも「定義」をしてから、おはなしをはじめます。そうしないと、話がかみあわないことが多いからです。まして、誰もちゃんと見たことがないものを話すことはなおさらです。

「宇宙人」といった場合も、これまたいろいろでして、欧米では「Little Green Man:LGM」=小さな緑色の人といえば、宇宙人の代名詞って場合もあります。元ネタはSFに登場する火星人のことだったと思いますが。あと、目がとんがって大きく、体毛がなくて、身体が灰色の宇宙人(グレイとかいうんでしたか)を指したりもしますね。UFOに乗って、なんとか座のなんとか星からやってくるのがそれだといったりします。

最近はどうも、この手の宇宙人話はちょっと下火みたいな気がしますが、子どもには相変わらず人気のようです。

ところで宇宙人って、何なんでしょうか。宇宙に住んでいるということであれば、宇宙の一部である地球に住んでいる我々もまちがいなく宇宙人です。

地球外にいるということだと、たとえば、月まで行った宇宙飛行士は宇宙人ということになりますね。

出身地が宇宙でないとというのであれば、将来、宇宙ステーションなりで生まれる子どもができないともいえません。その瞬間、人類は宇宙人と出会うのでしょうか。いや、いまだって、宇宙でつくられた精子が(卵子は最初から作られていますから)地上で受精して誕生した子どもがいるのかもしれません。

いや、宇宙からやってこないといけないでしょう。というなら、私たちの身体を作っている物質は、かつて宇宙からやってきたものです。なにしろ、最初は地球という星そのものがなかったんですから。

やはり、私たちも宇宙人であり、その自覚を持つ必要がありそうです。

なお、多くの科学者は、地球以外の宇宙人はいるだろうと考えています。ただ、直接の証拠がありません。状況証拠があるだけです。つまり、星はたくさんあり、地球のような星はみつかっていないけれども、きっとあるんじゃないかなということです。

地球のような星が見つかったとき、宇宙人に対する考えは少しは変わるでしょうか。

 

2005年11月25日 第22話 天体観察会に必要なもの

天体観察会をやりたいと思った時に、必要なものは、次の通り。

1.お客さん。最低1人。

2.晴れた夜空。

3.その空に輝く星の名前が1つ以上わかる人。最低1人。

時間は10秒もあれば大丈夫です。空を見上げ、指さし「あれがXX星だ」「ふーん」で、観察会成立。大都会の真ん中でももちろん可能です。

2005年11月20日 第21話 月で星の名を知る

晴れた夜空を見上げ、輝く星があったとして、その名前、わかりますか? この質問、よくプラネタリウムで解説をするときにするんですが、ほとんどの人は、1つも星の名前なんてわかりません。いや、名前は知っているのだけれど(たとえば、土星だとか、おりひめ星だとか北極星だとか)、あてはめられないんですね。

星を見るのになれた人だと、何時にどっちの方角のどの高さに見えるかで、それがどんな星かわかってしまいます。宇宙の雑誌にのっている「今月の星空」の図(星図)などを見ながら、分かる星をめじるしに、分からない星を芋づる式に知ってしまうこともでき、星を見る醍醐味です。

でも、はじめの一歩には、方角や星図ではなく、月を使うことをオススメします。

だれでも、わかる月。その月のすぐそばに見えることを基準にすれば、迷うことはありません。

問題は、その星が何かを調べる方法です。

一番簡単なのは、人に聞くことです。プラネタリウムの解説者に電話で聞くのが一番早いです。

でも、深夜に電話というわけにもいかないでしょうから、その場合は、一覧表を参考にしましょう。たとえばうちで出しているこよみハンドブックのWEB版なんかどうですか。月が見えない夜があることも気をつけて。

2005年11月20日 第20話 シロウトが読める宇宙の雑誌

19話ではアヤシイ雑誌の話をしましたが、もちろんシロウト向けの宇宙の雑誌というのもあります。

日本語で読めるものとしては「月刊星ナビ」「月刊天文」「月刊天文ガイド」があり、またより広い科学の話題をとりあつかった雑誌では「Newton(ニュートン)」「子供の科学」などがあります。

今月見える星は? 宇宙の新発見 といった記事のほか、読者による驚くほど美しい天体写真などが毎号紙面を飾ります。また、全国のプラネタリウムや星を教えてくれる施設のリストやイベント情報(ん? どんなイベントなんでしょうね)など盛りだくさんです。

いずれも価格は500円〜1000円程度。難しい内容もありますが、最初は読み飛ばしてもいいでしょう。いちばんいいのは、図書館を利用することでしょうね。

2005年11月20日 第19話 「雑誌会」で読まれる雑誌とは

京都大学の宇宙物理学教室では「雑誌会」というのが行われているそうです。これは、スタッフや学生、さらには他の大学や研究施設のスタッフや学生も集まって、雑誌の記事など読みながら話しあう会です。なかには「プラズマ雑誌会」なんてのもあり、字面だけ見ると、SFかファンタジーの世界みたいですね。

ところで、この雑誌会で読む「雑誌」というのは、コンビニやキオスクで売っている雑誌とはちょっと違います。それどころかほとんどが一般の書店では入手できないものなのです。Astrophysical Journal とか、MNRAS といった学術雑誌がそれで、中には論文ばかりが掲載されています。論文はほとんどが研究者が投稿したもので、厳重な審査を経、直しを入れたうえで、投稿者が費用を支払って掲載されます。

そうした学術雑誌の論文は、最先端の研究ばかりであり、雑誌会はつまり、最先端の研究はどうなっているのかを学ぶ会ということだったのですね。ちなみにMNRAS は、Monthly つまり月刊誌ですが、Astrophysical Journal は、ほとんど週刊誌に近いものです。買っていると紙ばかりたまってしまうので、最近はオンライン版で購読する人も多いようです。

ところで、こうした学術雑誌の中には、大手書店などで購入できるものがあります。自然科学全般の論文を掲載する週刊誌!の Nature や Science がそうで、特に Nature には日本語による記事紹介が載っています。あ、ちなみにこの週刊誌、定価は4000円です。

2005年9月19日 第18話 イギリスの天文学者

先日、イギリスに観光旅行に行った。家族の希望で、コッツウォルズ地方をドライブしたのだが、その起点にしたのはオックスフォードだった。ロンドンから列車で1時間のこの街は、大学の街としてあまりにも有名である。

1000年の歴史があるといわれるオックスフォード大学は日本の大学と違い大学それ自体が観光地になっており、世界的な書店ブラックウェルズをはじめとするショッピングや、キャンパス散策、そしていくつもの博物館や図書館など見どころはいろいろだ。家族は、学校の卒業旅行で、ここで体験授業を受けさせてもらったこともあるという。

もちろん、大学内では現在もイギリス中の英才が集まり、盛んに研究活動が行われている。

さて、こうした施設の中に、科学史博物館があった。これを見るのが楽しみでオックスフォードに行ったようなものだ。小さな博物館だが、ここにはオックスフォード大学にゆかりのある研究成果の他に、非常に古い資料も豊富に展示されていて、圧倒されてしまった。

ところでイギリスから帰ってきてから、博物館の話をしていると、「イギリスにそんなすごい科学者っていましたっけ?」ということをいう学生がいた。ちょっとあっけにとられたのだけれど、そんなものかもしれませんね。だいたい、日本の科学者だって、あやしいものだし。

ということで、イギリスの科学者(天文学者でも可)どんな人を思い浮かべられますか? 10人あげよ、というクイズをしたら、理系の人でも答えられるかしらね。→答えの例はこちら

2005年9月19日 第17話 月の足跡が消えないわけ

1969年7月。アメリカの宇宙船アポロ11号に乗り組んだアームストロング( Neil A. Armstrong )とオルドリン( Edwin E. Aldrin, Jr. )の2人は、人類ではじめて月の大地をふみしめました。

月に第一歩を記した時の「これは小さな一歩であり、人類にとっては大いなる飛躍である( "That's one small step for man, one giant leap for mankind" )」というアームストロングの言葉はあまりに有名です。

ところで、この足跡(ひとつだけではありません。たくさん)は、ずっと残るという話があります。その理由として「風が吹かないから」とされています。

その通り、月には風が吹きません。ただそういうと、ずうっと空気がよどんでいるようなイメージがありますが、そうでなく、月には風のもとになる空気がないのです。もっといえば、真空なのです。

また、足跡をくずす原因は、何も風(空気の流れ)だけではありません。たとえば、大きな地震がおこれば足跡など崩れてしまうでしょうし、水が流れてくれば、足跡は消えてしまうでしょう。その他にも足跡をなくすための原因はいろいろ考えられます。だから、風が吹かないからだけでは理由としては不十分です。

そして、実は月には、いつもいん石がふりそそいでいます。地球ですと、空気がある程度防いでくれるのですが、月には空気がないので防ぎようがありません。このいん石によって足跡は一瞬でなくなることがあるのです。

また、太陽からはいつも月に宇宙線が降り注いでいます。これも長い間には足跡を崩していきます。

また、もしかしたらアポロ宇宙船が地球に帰るときの噴射で、足跡が少しくずれたかもしれません。自然に風はなくても、人間が風を作るのです。

月の足跡、残っているかどうかは、最終的には「もう一回いってみないとわからない」が正しいのでしょうね。でも、たぶん、残っているのではないかと思いますけれども。

参考:NASA Appollo計画ホームページ

2005年8月21日 第16話 ブラックホールを作る話

そこからは何も脱出できない。時間の止まる星ブラックホール。理論的にはいろいろといわれ、観測もされているのですが、やはり、手元で実験できないのは隔靴掻痒というところです。そこで、ブラックホールを人工的に作って調べればよいと考え、「ブラックホール製造法」を研究をしている人たちがいます。

ブラックホールは、モノをある限界以上に小さくすれば、それだけでできます。これはアインシュタインの一般相対性理論に基づき、1916年にシュバルツシルトが発見しました。また、宇宙にはすでに多くのブラックホールが発見されています。

一方、量子力学という新しい学問が発展すると、ある程度以上小さなブラックホールはできないとされました。重さは10のマイナス8乗kgが限界なのです。

一方、人類が作れる最大のエネルギーは重さに換算すると(不思議ですね、これもアインシュタインがいったこと)10のマイナス23乗kgで、これは全然たりません。

ところが、最新の多次元重力理論では、これでなんとブラックホールが作れるというのです。電子や陽子のような素粒子をものすごいスピードまで加速してぶつける「加速器」のうち、最強の能力を持つスイスのCERN研究所で作られているLHC(大型ハドロン衝突加速器)をつかえば、うまくいくと毎秒1個のブラックホールが作れ、それが壊れる様子を観測できるというのです。

もし、これができれば、ブラックホールの性質について詳しい研究が行えます。装置の完成は2007年ごろ。何がわかるのでしょうね。

ところで、この方法で作るブラックホールはできたとしても元となるモノはごくごく小さなものですので、それがまわりのものを飲み込むことはありません。また、理論的には短い時間で消滅するとも考えられています。

また、同じようなエネルギーは地球に降り注ぐ放射線(宇宙線)の中の強力なものはもっていて。毎年200個のブラックホールが上空でできては消えていると考える人たちもいます。

参考:B.J.カー、S.B.ギディングズ、「ブラックホールを製造する」、日経サイエンス、2005年8月号26ページ、日本経済新聞社

 

2005年8月21日 第15話 ブラックホールの発見

そこにいくと、けして出られない、SOSの信号すら出せないブラックホール。その発見は1916年、1918年、1971年と3回あったといっていいでしょう。

1916年は、理論的にブラックホールが発見された年です。カール・シュワルツシルト(Karl Schwarzschild:1873-1916)が、42年の短い生涯の最後に歴史に残る発見をしました。彼は、前の年にアインシュタインが提唱した一般相対性理論の方程式を史上初めて解いた天才です。一般相対性理論によって、光が重力によって曲がることが示されましたが、シュワルツシルトは光を閉じ込めてしまう場所が重力によって作られることを示したのです。

シュワルツシルトの計算によると太陽なら直径6km、地球を直径18mmに縮められれば、理論的にはブラックホールになります。が、実際にそこまで縮める方法は見つかっていません。実際にブラックホールになれるのは、太陽の30倍といった巨大な星になります。

残り二つは、それぞれ、ブラックホールによる現象を人類がみたのだけれども認識できなかった年と、ブラックホールが観測で確認された年にあたります。話はじめると長くなりそうなので、これは別の項目で。

2005年3月27日 第14話 カタイ星、ふわふわした星、近づけない星

空にきらめく星、さわるなんて考えられないけれども、もし、さわれるとしたら、どんな感じだと思いますか。実はこれは星によってもいろいろなのですが、おおきくわけて3つになります。それは、カタイ星、ふわふわした星、近づけない星です。

カタイ星の代表は、月です。ちょっと粉っぽいのですが、大地はしっかりしています。月に実際に着陸するまでは、表面は分厚い「塵の海」で覆われていて、しっかり立てないだろうと考える人もいたのですが(そういうSFもあります)、実際はしっかりした大地でした。同じような星には、火星や金星、水星などがあります。また、表面は岩石でなく氷の星もみつかっていて、冥王星や木星の衛星のエウロパ、ガニメデ、土星の衛星のタイタンなどがそうです。

ふわふわした星の代表は、木星です。木星は表面はすっぽりと雲で覆われており、地面というものがありません。さらに、雲は最大で100kmもつづき、その下は水ではなく、液体水素の海となっています。同じように雲で覆われていてそれが事実上の表面の星は、土星、天王星、海王星などがあります。

さらに近づけない星というと、その代表は太陽です。太陽の表面温度は5500度に達し、表面として見えているのは、発光する空気です。同じような星は、星座を作る星が全てそうで、恒星といわれます。

星ってどんなものといっても、本当にいろいろですね。

2005年3月27日 第13話 星をみせてくれる場所

フツーの人に「星を見せてくれる場所」。といって思い浮かぶのはどういうところでしょうか? プラネタリウムには、全国で年間500万人以上の人が足を運んでいますから、一つはこれになると思いますが、そうした「星の殿堂」はほかにもあるのです。それが、公開天文台です。

公開天文台とは、研究などにあわせ、フツーの人に星を観察してもらいながら学習してもらうことを目的につくられた施設で、全国に200以上があります。もちろん夜間の公開も行っているところがほとんどで、なかには週末にはかならず観望会を開いているところもあります。もちろんガイド付き! なかには専門研究をしている天文学者がガイドしてくれるところもあります。

運営はさまざまで、市町村立や国立!、ホテルの一施設というところもあれば、個人がやっているところもあります。かわりだねとしては、お医者さんが自分の趣味と、患者さんや地域の人へのサービスとしてもっているところや、アーティストが宇宙アートの発表の場と交流の場として設定しているところもあります。

いずれも、無料かリーズナブルな値段で利用できます。土星の環を見てみたいとか、月のクレーターを見てみたいと思ったら、まずはこうした施設を利用するのもいいのではないでしょうか。

参考:公開天文台のリスト(天文雑誌「星ナビ」編集)


2005年3月26日 第12話 ゆれない双眼鏡

双眼鏡で星を見ると楽しい。といいましたが、手持ちでみるとどうしてもグラグラとゆれて、落ち着かないことがあります。

このグラグラをふせぐには、写真やビデオ用の三脚などに固定してしまうのが簡単です。双眼鏡を三脚に固定する金具は、大きな写真用品店などで1000〜3000円ほどで売られていますので、三脚を持っている方は試してみてもいいでしょう。

いっぽう、手持ちでもゆれない双眼鏡というのもあります。ゆれにあわせて内部のプリズムを移動させるもので、手持ちの手軽さと、ゆれない快適さをあわせて享受することができます。使ってみたことがありますが、素晴らしい効果です。ちょっと重めなのが持ち運ぶさいの難点ではありますが。

ただしお値段もそれなりで、キャノンフジノンニコンなど数社から製品がでていますが、量販店のバーゲンでも、5万円〜15万円といったところです。

2005年3月26日 第11話 双眼鏡で星を見る

星をみるなら望遠鏡。と思いがちですが、双眼鏡で見てもなかなか楽しいものです。

たとえば、天の川。田舎で肉眼で見ても感動的ですが、さらに双眼鏡で見ると、そこには無数の星がきらめいていることがわかります。月の大きなクレーターや、木星の主な衛星なども見ることができます。オリオン星雲やアンドロメダ銀河といった天体も写真のようにとはいきませんが、そこそこ観察できます。一気に世界がひろがります。

こうした双眼鏡を選ぶさいにポイントになるのは、レンズの大きさです。天体観測用にはレンズは大きければ大きいほどいいのですが、重さとのかねあいで、手持ちできるのは直径5cm(50mm)程度が限界でしょう。また、倍率はあまり高すぎると扱うがむずかしくなるので、7〜10倍程度のものが常用されます。天文ファンは、倍率が7倍でレンズ直径が50mmのものを、7X50(ナナバイゴジュー)の望遠鏡といって標準的に購入することが多いようです。

これは、船舶用の双眼鏡でもあるので、量産されており、比較的安価に高性能のものが入手できるからです。でも、ちゃんとした品は実売価格で1万円以上のものになります。

このほか、コンパクトなタイプの双眼鏡をえらび、いつでも持ち運ぶという考え方もあります。ただ、コンパクトタイプは製造が難しいため、あまりケチるとよくありません。考え方は人それぞれですが、私は実売価格で2万円以上のものがいいと思います。

2005年3月14日 第10話 自動車で太陽を追いかける話

正午、太陽は真南の空にやってきます。南中(なんちゅう)といいます。英語では transit =通過という言い方をします。 北回帰線(北緯23.5度)より南では、正午に真上、ないし真北の空にくる(北中)こともあるので、正中(せいちゅう)という言い方を専門家は好みます。ここでも正中を使いましょう。

さて、この太陽の正中時刻ですが、実は、正午になることは、めったにありません。一例を示すと、兵庫県明石市の明石市立天文科学館の展望塔(東経135度)での時刻は理科年表(丸善)の数値から計算すると次のようになります。

2005年3月14日 12時 9分 16.7秒
2005年5月14日 11時 56分 19.0秒
2005年7月14日 12時 5分 49.2秒

なんと10分以上も変化しています。これは、均時差といって、地球の太陽に対する回転が一様でないので起こる現象です。さらにこれだけではありません。場所を変えると、2005年3月14日の太陽の正中時刻は、次のようになります。

  東経 太陽の正中時刻
明石市立天文科学館  135度  12時 9分16.7秒
大阪市立科学館 135度29分30秒 12時 7分 18.7秒
旧東京天文台(港区麻布台) 139度44分29.3秒 11時50分18.7秒
札幌市立天文台 141度21分10.2秒 11時43分52.0秒
千島列島のウルップ島 150度 11時9分16.7秒
台湾の西端・上海と南京の中間 120度 13時9分16.7秒

下の二つの例からわかると思いますが、経度差15度で1時間かわるのです。つまりこれは、時差なわけで、日本国内にも本来は時差があるのを無視して生活しているわけですね。かつて台湾が日本の領土だったときには、1時間の時差をつけていたそうです。

さて、1時間差が経度差15度ということは、1秒差は、その3600分の1、経度差15秒(ややこしいけど)ということになります。これは大阪あたりの緯度(北緯35度)では、ざっと400mになります。つまり、東西に400m行くごとに、太陽の正中は1秒間前後するということですね。タクシーのメーターみたいですが、、4kmで10秒、20kmあまりで1分間になります。自動車でひとっ走りする程度の距離で、太陽の正中は1分間も違うというと意外な気がします。地球の丸みがなんとなく感じられる瞬間です。

さらに、毎分20km、つまり、毎時1200kmで東に移動しつづければ、太陽がずーっと正中しっぱなしということも可能です。緯度が高いともっと楽で、北極付近(北緯89度)なら、毎分500m、毎時30kmとなりますから、自動車で太陽を追いかけられます。うーむ、地球の自転って速いんだか遅いんだか。

なお、太陽だけでなく、あらゆる天体に正中はあります。これらにも太陽とまったく同じことがあてはまります。ただ、天の南極と北極にある天体には正中時刻は複雑です。ずーっと正中しているといえるからですが、本当は天の南極や北極自体が少しずつ動いている正中の瞬間はやはり一瞬なのです。この場合は非常に複雑な話しとなるので上のような単純なことはいえなくなります。先端の科学研究のネタはこういう微妙なところにかくれていたりします。

参考:地点の経度は60ページ 理科年表 2005年版 暦部 及び 国土地理院ウォッ地図(地図閲覧サービス)より 

2005年3月13日 第9話 一番暗い1等星

星の中で、特に明るい星を1等星としています。これは20ばかりあり、以下2等、3等・・・で人間が見ることができる限界の星が6等星です。これは、2000年ほど前に天文学者のプトレマイオス(トレミー)が星図の中で使用したもので、現在でもこの伝統が続いています。

ただし、この6ステップしかない分類法は、科学的につかう物差しとしてはつかいにくく、後に、小数点やマイナスを導入して、現在に至ります。たとえば、1.32等級とか、マイナス1.5等級といった具合です。

一番明るい星については、第2話でご紹介した通りですが、1番暗い、1等星となるとどうなるでしょう? どこまでを1等星とするかが問題です。理科年表(丸善)のおもな恒星の表によると、暗い方は次の通りになります。

1.3等 ベクルックス(みなみじゅうじ座)、デネブ(はくちょう座)、レグルス(しし座)
1.4等 
1.5等 アダラ(おおいぬ座)
1.6等 カストル(ふたご座)、ツィー(カシオペヤ座)、ガクルックス(みなみじゅうじ座)、シャウラ(さそり座)、ベラトリックス(オリオン座)、

1.3等と1.5等の間にちょっとギャップがあるため? アダラは2等星の仲間に入れられます。まあ、四捨五入でもそうなるんですが、もうちょっと詳しく調べるとこれ、1.50等級なんですね。さらに詳しく3桁以上まで調べられて、1.4999とかだったら、1等星の仲間に入るのでしょうか?

あともう一つ1.6等のツィーは通常2.5等級ですが、変光星なので、どうも、一番明るいときは1.6等級になるようです。明るさを変えるので極端なのは火星で、最高ではマイナス2.9等とすごく明るくなりますが、暗いときは、1.6等で2等星の仲間入りになってしまいます。

2005年3月10日 第8話 水星を見たことがないコペルニクス

太陽を巡る惑星の名前は、割と広くしられていて、漫才のギャグネタに使われることもあるくらいです(ぼくが知るかぎり嘉門達男の歌「 この中にひとり 」に登場)。そう、覚え方は「水金地火木土天海:すい・きん・ち・か・もく・ど・てん・かい・めい」ですね。英語では My Very Educated Mother Just Served Us Nine Pizzas だそうです。各惑星の頭文字です。

しかし、中世といわれた時代。この順番はちょっとちがっていました。太陽からの順番という発想ではなく、地球が宇宙の中心で、まわりを月、太陽、水星などがまわると考えられていたのです。地球が動いていることを感じる人はまずいないわけで、そういう点からも受け入れやすい考えだったといえます。

これを、天動説といいますが、地球がエライから中心ではないのです。猥雑な、地獄に近い地の底ということで、空にあがるほど、清浄な世界という価値観なんですね。

ところが、この天動説だと、遠い世界は果てしなく速くまわらなければなりません。そんなんより、地球をまわしたほうが簡単ではないか。と考えたのが15世紀のポーランドの神学者コペルニクスです。彼は過去の書物でも、地球が回る、あるいは太陽が中心という説があるということをつきとめて意を強くしてこの説を本「天体の回転について」に現します、周囲の目を気にして出版をしたのはなんと死後だったのです。

ところで、太陽のまわりを地球も他の惑星も巡ると唱えたコペルニクスは、なんと水星を見たことがなかったらしいのです。私の大学のそして業界の大先輩にあたる金井三男さんは、ポーランドが高緯度だから当たり前といっています。日本は見やすいから理解できないと・・・みなさんは水星を見たことがありますか?

注:このコラム執筆時点だけの限定情報ですが、いま、水星よく見えます。3月15日ごろまで夕方西の空 >  参考 水星が東方最大離角 by 星ナビ

2005年3月8日 第7話 空にあがると寒い? 暑い?

ギリシャ神話に「イカロスの翼」という話があります。ご存じでしょうか? イカロスは少年で、天才職人ダイタロスの息子。父が作った翼を使い、空にあがっていきますが、あまりに高くのぼって太陽に近づき、ロウで固めた翼が溶けて、落下し、死んでしまうというお話です。

実際に、高くあがるとどうなるかというと、温度が次第にさがっていきます。これは、夏に高原にでかけると涼しいことから実感できますし、富士山など高い山では上の方は雪があるけれど麓ではない。ということからもわかります。

こうしたことから、太陽に近づいているのに、暑くならないから、太陽は本当は冷たいのである。という主張をする人もいるのですが、それはそれで実感とちがいますね。日なたほうが暖かく、手のひらを太陽にかざせば熱を感じるのですぐにわかります。

高くあがると寒くなるのは、空気が冷たいからです。空気は太陽からの熱はほぼ素通しします。熱は地面で吸収され、地面に近い空気から順次あたたまっていきます。山の上は地面はありますが、山のないまわりの空気が冷たいので、結局涼しくなります。

最後に、山のうえにのぼっても、太陽までの距離はほとんど縮まりません。地球から太陽までの距離は1.5億km、山のてっぺんはヒマラヤですら、わずか9kmです。つまり、千万分の1もかわらないのです。これは1.5m前のストーブに、1mmのさらに1万分の1近づいたことにあたります。

2005年3月3日 第6話 「耳」という名の天文台 

天文台は、人類が作った専門施設の中でも最古のものの一つでしょう。望遠鏡の発明以前から、宇宙を見つめる「目」と比喩されてきた天文台。1946年に完成し、当時世界最大だったアメリカのパロマ山天文台の望遠鏡は、ビッグ・アイ(巨大な目)というニックネームでも知られていますが、これが典型です。

ところが、「耳」という名前の天文台があったのです。通称ビッグ・イヤー(巨大な耳)天文台は、電波望遠鏡。光ではなく、天体からの電波を観測するための装置です。アメリカのオハイオ州立大学が持っていたもので、現在は記念公園になっています。形状がかわってて、グラウンドの両脇に金網がせり上がったような形をしています。

当初は天体の電波地図を作るのに活躍しましたが、後年は、宇宙人が出しているとえられる電波を探すSETI計画にも参加した望遠鏡として知られるようになりました。

電波アンテナというと、イメージは無線やラジオ、携帯電話。たしかに、聞き耳をたてるというイメージがふさわしい気がしますね。宇宙人のささやきを聞き取ろうという大耳とも言えるでしょう。

ちなみに3月3日は、桃の節句、雛祭りであると同時に、耳の日でもあります。

2005年3月2日 第5話 星座は星空の番地

星座は、もともと星と星をむすんで、夜空に絵を描いたものです。でも、ある時代から、それは星空の領域を示す意味に使われることが多くなりました。たとえば「土星はふたご座に見える」という言い方ですが、これは土星がふたご座の領域に入っているという意味ですね。

そうした領域は正確に決めないと困ったことになります。人によって、記録が変わってしまってはこまるわけです。まあ、夜空にも土地問題があるといったらいいでしょうか。

現在の星座の領域は1928年に国際天文学連合(IAU)で定められ、1930年より発効したもので国際的な取り決めとなっています。

もちろん、地球から見ての方向だけ(二次元の領域)なので、遠い将来はあるいは3次元の領域が設定されるようになるかもしれません。そうでなくとも、ごく近くにある月や惑星などは、地球上で見る地点が変わると、違う星座の領域に入ってしまうこともよくあります。

2005年3月1日 第4話 みなみじゅうじ座

南十字星というと、あこがれの天体、一度は見てみたいという人もけっこういそうです。私がはじめて南十字星を見たのは、新婚旅行で行ったシンガポールでした。町中をうろうろしていたら、上空になにげなく見えちゃったのでありました。日本では沖縄でかろうじて見ることができます。北半球でも北緯25度くらいなら見るチャンスがあるんですね。

この南十字星、それだけでれっきとした星座で、みなみじゅうじ座といいます。88ある星座の中で最小の星座です。もちろん、キリスト教のシンボルである十字架が元になっているわけですが、意外なことに南半球にヨーロッパ人が広く進出する前から知られていました。

星座の名前について、プラネタリウム業界人がとりあえず開く本「Star Names」 Allen(1899年) によると、みなみじゅうじ座は、学名が Crux です。「南」にあたる言葉はなく、ただ「十字架」なんですね。そしてさらに古いこれまた星座絵の出展として多用されるフラムスチード天球図譜(1776年)でもただ「十字架」です。まあ、この辺は大航海時代後ですから、南天の星座があっても不思議ではありません。

ところがさらに古く、2000年前のギリシャの天文学者プトレマイオス(トレミー)は、これはケンタウルス座の一部分で記録されているのです。彼は、アレキサンドリアで観測をしていたようですが、エジプトのアレキサンドリアの緯度は31度で鹿児島と同じくらいで、現在はみなみじゅうじ座は見えません。ヒッパルコスは、同じくイタリアでは見えないがアレキサンドリアなら見えるとしています。地球の地軸の向きが変化して見えなくなってしまったのです。

2005年2月27日 第3話 一番大きい星

第2話で紹介した明るい星は、地球から見たときの話でした。今回は、ともかく絶対に大きな星です。今年に入って、いままで確認されていたケフェウス座Mu星(ガーネット・スター)よりも大きな星がわかりました。わかったというのは、星は知られていたのですが、暗い星のため、いままで精密に調べられなかったのです。

あらたに一番大きい星とされているのは、いて座KW星、ケフェウス座V354星、そして、はくちょう座KY星の3つです。いずれも、赤色超巨星といわれる、非常に大きくて温度が低い星で、重さは太陽の25倍ですが、直径は太陽の1500倍にも達します。明るさは太陽の30万倍です。いずれも肉眼では見えない(9等から11等の)星です。

重さと直径を見ればわかる通り、かなりスカスカな星で、太陽の1億分の1の密度となります。これは、私たちが息をする空気の密度が太陽の千分の1ですから、空気よりも10万倍もスカスカ。ほとんど真空といっていいようなものです。この密度は高度200kmくらい、人工衛星が飛ぶ高度の下限くらいにあたりますから、これら巨人星の中を、あるいは宇宙船でとびまわることも可能かもしれません。

original source pp28, Sky & Telescope April 2005、理科年表2005気象147(313)

2005年2月26日 第2話 一番明るい星

空にかがやく星で一番明るい星は・・・・太陽です。インチキっぽいですか? でも実際そうですから。

以下、2位:月 3位:金星 4位:木星・火星 6位:シリウス 7位:水星・土星 9位:カノープス 10位:ケンタウルス座α星 となります。

夜空にかがやく1番は、月。星っぽいもので一番は金星。星座をつくる星で一番はシリウス。一番明るいといいながら、いろいろあるのがこまったものです。

2005年2月25日 第1話 月はどっちに見える

晴れていれば昼は太陽が、夜は月が見える・・・・とは限りません。そのためには、太陽のかわりに月が出る必要があります。で、そのためには、月と太陽は、地球をはさんで反対がわでないといけません。

月<−−地球−−−−−−>太陽

ところが、月は太陽の反対にいるとはかぎらず、時には太陽と同じ方向にあります。そう、月が地球の周りをまわっているからですね。

      地球−−>月−−>太陽

となると、月がどっちに見えるかは、その日によって変わるということになります。ちなみに、もとにもどるのは29.5日ごとで、つまり、これが一月という期間の元になっています。