* この原稿は、使用自由・転載自由・改変自由です 渡部@大阪市立科学館 * ■はじめに  自分で光らないものには、必ず影ができます。  でも、影は、それがうつる場所がないとあることに気がつきません。  たいてい、影がうつる場所は、足下だったり壁だったり、近くにある  のですけれども、飛んでいる飛行機の影は、かなり遠くの雲や地面に  うつるので、のっている人は気がつかないかもしれません。    もちろん、地球にも影があります。でも、地球のまわりには宇宙空間が  ひろがっているだけ。夜は地球の影の部分といわれても、ピンときません。  実は朝や夕方などに、空に地球の影がうつってみえることがあり、  地球影(ちきゅうえい)といわれるのですが、多くの人は気がつきません。    でも、月食はちがいます。だれでも、地球の影のありかがわかる現象です。  いまから2300年前、ギリシャ時代の科学者・哲学者だった  天才アリストテレスは、月食を見て地球の影によることを見抜き、  地球が丸い形をしていることを証明したのです。  みなさんも2300年前の天才にまけないように、月食を観測しましょう。 ■第56回【星空の連帯】全国版の参加ガイドです。 ◇目標   部分月食 ◇観察時刻 7月5日(木)22時〜25時30分までの5分間×2回      予報では、月食の始まりは 22時35分 終わりは 25時15分です。      ※これらの前後でも月食の影響は見られます。       また、一番大きく影にかくれるのは23時55分となります。 ◇観察場所   1:月が見えればどこでもOK。家の中でみられればベスト。  2:南が開けているところ。冬にも昼間の日当たりがよいところで。 ◇準備  道具:紙2枚に同じサイズの丸を描いたもの。下敷きになるもの     鉛筆、できれば色鉛筆も。時計。懐中電灯、できれば双眼鏡。  防犯:外はぶっそうです。できれば、家でやってください     だめなら、家族など大人の人と一緒にやりましょう。  防虫:虫除けスプレーなどで、虫対策をしましょう。かゆかったり     うっとうしいと落ち着いて観察できませんよ。 ■観 察: 0:月食の時間帯に月を見てみましょう。   欠けているのがわかりますか? 1:月食がはじまる(かけはじめる)か、終わる(かけおわる)時刻を   測ってみましょう。予報の時刻とどれだけずれるでしょうか?   予報は、1分以内の精度であっています。でも、実際には   予報の時刻とかなり違います。理由は後の「本影と半影」を   読みながら考えてみてください。   ノート:かけはじめ(おわり)    観察者:    観察場所:    かけはじめ(おわり)時刻:    X時X分X秒    感想など: 2:月を眺めて、どんなカタチをしているか見てみましょう。   ただ見るだけでなく、時刻をちゃんと測りながら、スケッチしてみましょう。   また、色はどうですか? 欠けている部分の色が何色か見てみましょう。   真っ暗ですか? 月は自分では光らない天体です。太陽の光があたって   いないのに、何が照らしているか考えてみましょう。 3:月食をスケッチしてみましょう。   特に色に注目。あらかじめ円を描いておいて、   ・どんな形に欠けているのか。   ・いちばん深く影が入っている   ・欠け際はどういう風に見えるか(はっきりしているか、ぼんやりか)   ・色はどんな具合か   をしっかりチェックしましょう。 4:双眼鏡で見てみましょう。   欠けているフチの部分はどんな感じですか?   また、1:と同じ観察をしてみましょう。   どのあたりから欠け始めるかを見てみましょう。 ######################### ######################## #################### %%%%%%%%%%%% #################### ################ # %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% ################ ############## %┌────┐%%% %% ############# ############ %%%%%│嵐の大洋│%%%%%% % %% ########### ########## %%%%%└────┘%%%%%%%%%%% %% ######## ######## %%%%%%%%%%%%%%%%%┌────┐ %%% ####### ####### %%%%%%%%%%%%%%%%%%%│ 雨の海│%% %% ###### ###### %%%%%%%%%%%%%%%%%└────┘%% % ##### #### %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% %%%% #### ##### % %%┌────┐%%%%%%%%%% %%%%%% % ### #### %%%%%%%│ 雲の海 │%%%%%% %%%%%% %%% ### #### %%%%%%%└────┘% %% %%%%%% %%% ### #### %%%%%%%%%%%%%%%%% %% ┌────┐%%%% ### #### %% %%%%%%%%%%%% %%%% %% │ 晴れの海%%%%% ### #### %%%%%%%%% %%%%%%% └────┘ %% ### #### %%%%%% %%%%%%%% ### #### % ┌────┐ ### ##### │静かの海│ ### ###### └────┘ #### ##### %%%%%%%%%%%%% %%% ##### ####### % %%% % %%% ##### ######## %%%% %%%%% %%% ####### ########## %%%% %%%%%%% ####### ########### %%%%%%%% ########## ############# %%%%%% ############ ################ % ############# #################### ################## ######################### ######################## ################################################################   ノート:かけはじめ(おわり)    観察者:    観察場所:    双眼鏡の大きさ:レンズ直径  mm  倍率  倍    手持ちですか?  手持ち  三脚に固定    かけはじめ(おわり)時刻:    X時X分X秒    色は何色ですか?    感想など: 5:写真を写してみましょう。   スナップ写真(手持ち撮影)でも大丈夫です。   コンパクトカメラや小型のデジカメならば   ストロボを「発光する」状態にして写します。   これは、シャッタースピードが遅くなるのをふせぐためです。        レンズ付きフィルム(写ルンですなど)でも撮影できます。   でも、ちっちゃくしかうつらないので、ズームアップに   したほうがいいです。      双眼鏡を三脚に固定し、のぞかせながら写すとズームになります。   双眼鏡と三脚の固定金具がない場合は、ガムテープかなにかで   固定しましょう。固定すればいいのですから。工夫してみてください。   もちろん、持ち主の了解をえてやること      できれば、5分ごとに撮影すると、月食の経過がわかって   おもしろいと思います。    6:ビデオに撮影してみましょう。   かんたんに撮影できます。   三脚に固定して、ズームでアップにしてください。デジタルズームは   使わないこと。ただ、月はどんどん動きますから、時々おいかけないと   うまく写せませんよ。   また、何分ぐらいでビデオの画面を横切るかをチェックしてみましょう。 7:多重撮影にチャレンジ   腕に覚えのある人は、一眼レフカメラで連続撮影をしてみましょう。   フィルムはISO100 レンズは適当 絞りはF8   欠けはじめる前は、で1/125〜1/60   ・カメラを写せる状態にしてから、巻き戻しノブを巻いて、フィルムを    ピンとさせ、ノブをテープで固定します。   ・そして、底面にある巻き戻しボタンを押し込んだ状態で固定します   (ガムテープと何かのカケラを使って押し込んだ状態にします)   ・あとは、三脚に載せて、5分おきに、シャッタを切って、フィルムを    巻き上げる(巻き上がらず、空転するようにします)   ダメもとでやってみましょう。できれば、部屋の中で練習しておくと   よいです。 ■レポート 0:あなたのことを教えてください。  小学生 中〜高校生 理科の先生 それ以外の先生 それ以外の大人  星空の連帯は   はじめて   2〜3回目   4回以上 1:月食のはじまりか終わりを観察したあなた  何時何分何秒にはじまりましたか? あるいは終わりましたか 2:月食の最中  色は何色でしたか? 月全体は同じ色でしたか? 3:何か感想や意見、リクエストがあれば書いてください。 ■月食はめったに起こらない。 月食は、太陽−地球−月 と太陽の反対側に月がある現象です。 つまり満月の時におこります。でも必ずおこるわけではありません。 満月は毎月あります(29日〜30日ごとです) でも、月食はこれから3年は見られません。 これからの月食(日本で見られる本影月食のみ) 皆既は、かいき と読みます。月が全部かくれる月食です。 部分は、一部だけがかくれる月食です。 2004年5月5日5時前後 皆既、皆既が終わる前に月が沈む 2005年10月17日21時前後 部分 2006年9月8日4時前後 部分 2007年3月4日8時前後 皆既 2007年8月28日19時前後 皆既 2008年8月17日6時前後 部分 しかし、それにしたって、回数は上の2倍くらいなのです。 満月のたびにおこってもよさそうなのに、、、。 これの説明は難しいのですが、ようは月が動く場所と太陽が動く場所は 「だいたい同じだけれど」ちょっと違う。からなんです。 ■実験:月食の起こりにくさをチェックしよう 満月の時に、地球の影が衝突すれば月食になるんですけれども、 それは、月と地球の影(太陽の反対がわ)が衝突する「交差点でなければ」 なりません。で、交差点は月3個分の大きさしかないのです。 これを想像するために、地球と月の模型を作ってみましょう。 地球を直径8cmの丸いもの(私の手元ではテニスボールくらい) 月を直径2cmの丸いもの(1円玉の大きさくらい) とすると、地球と月の間は、、、2.4mもはなさなければいけません。 2.4m離れたところの地球の影が月におちるように、日なたでチャレンジ してみてください。 ちなみに、地球の直径は1万3000km、月は3500km 地球と月の距離は36万km〜40万kmです。 ■月食の進むスピード 今回の月食では、月の南半分くらいまでがかくされます。 地球の影のを月が半分つかりながらかすめるという感じですね。 でも、皆既月食などのときは、地球の影に月が突入するという形になります。 月の地球を回るスピードは、すこししか変化しません。 だから、月の動き方はあまりかわらないのですが、 影のかすめかたによって、スピード感覚は違ってみえるかもしれません。 地球の影は月のところで月の3倍くらいの大きさの円です。 だから、たとえば、直径6cmの丸を紙に描き、2cmの1円玉を ならべたり、うごかしたりしてみてどのくらいのスピードで月食が すすむのかをシミュレーションすることはできると思います。 ■月食がはじまる時間 と 月での「月食」 月食がはじまる時間は意外とわかりにくいものです。 日食だと「かけ始めた」というのがわかりますが、月食では 人によって何分も時間がかわってしまいます。これはどうしてでしょうか。 月食は、地球の影に月がかくれるできごとです。 地球の影のフチはくっきりしていません。 これは、発光する元になる太陽に大きさがあるからです。 月食の時、月から地球を見ると、太陽が地球にかくされるように見える はずですが、そのときに太陽はいっぺんに全部なくならずに、 ちょっとずつかくれていきます。 太陽の一部がかくれて見えるところは、光がよわくなっていますが、 完全に影ではありません。そのためこの部分は地球の半影(はんえい) にかくされているといいます。 半影でも、ほとんど太陽からの光が届かない(月から見ると、太陽が ほとんど地球にかくれている)ところは地球から見ると、全部影にかくれて いる本影(ほんえい)のところとみわけがつきにくいのです。 そのため、はじまる時間、おわる時間はわかりにくいのです。 ■太陽の活動と月食の関係 太陽には11年の活動の変化があります。黒点が多くなったり少なくなったり あるいは、太陽からの放射線の強さがかわったりします。 でも、明るさはというと、ほとんど変化がありません。というか、最近まで 測定ができないほどでした。だから、地球の影にかくれる月食の見え方と 太陽活動は無関係かというと、それはちがうかもしれません。 というのは、月食のさいは太陽の光は直接とどかないけれども、 地球のまわりの空気が、太陽によって発光している部分が月を照らすからです。 発光というとむずかしそうですが、夕方、太陽が沈んでも、 空が明るいですよね。特に夕焼けは明るい。 この部分が月を照らすと思ってください。 この地球の空気は、太陽の活動によって、 全体がふくらんだり縮んだりします。かなり激しい変化もあり、 地球の空気全体がふくらんで、人工衛星が急ブレーキをうけ、 落ちることすらあります。 地球の大気による光の影響という形で、太陽の活動が月食の見え方に 少しだけ変化を与えているのはありえます。 ■【星空の連帯】WEBページ ガイドのバックナンバーもあります! http://member.nifty.ne.jp/science/hosiren/ http://www.sci-museum.kita.osaka.jp/~yoshiya/hosiren/