■1月の【星連】は,「星食」の観測をします。 日食や月食ならぬ「星食(せいしょく)」とは、星が月にかくされる現象です。 星は無数にありますので、星食自体は珍しい現象ではありません。 しかし、観察しやすい時間に1等星がかくされるとなると、これが、 意外なほど起こらないのです。日食が見える割合とあまり変わりません。 9日は、冬の1等星アルデバランが夜9時とほどよい時刻に月にかくされます。 オレンジ色の星が月に食べられる様子を、ぜひ観察してみてください。 ◇目標   月 と おうし座のアルデバラン ◇観察時刻 1月9日(金) 21:00〜21:50 ・・星食中・・ 22:30〜23:10        または、19:00ころから1時間おきに24:00まで ◇観察場所 月が見えればどこでもOK ◇準備   時計・メモ用具・できれば双眼鏡 ◇防寒   寒い時期ですので、風邪を引かないように十分注意しましょう。       #そういう当人が風邪引いてます。ヘーックしゅ(^^;。 ■観察 ◇肉眼で  おうし座やアルデバランがわからなくても、月はわかりますね。 9日に限っていえば、月のすぐそばにある赤っぽい星がアルデバランです。 もし、21:00すぎ〜23:00前で、赤い星が見あたらなければ、それは、 月にかくされている最中です。 なお、月の欠けているほうからかくされますので、肉眼では、 空中で突然星が、なくなったように見えるかもしれません。 1:かくされていく様子をみよう。  21:00〜21:50 まで、1分ごとに月とアルデバランの様子をみる、、  のはしんどいので、だいたいの「めやす」を書いておきます。  (いい加減な計算なので、数分は誤差があります)  その前10分間、後5分間の観察をするとよいでしょう。  稚内:21:43 根室:21:50 札幌:21:40 仙台:21:40  東京:21:37 新潟:21:36 大阪:21:29 高知:21:24  福岡:21:17鹿児島:21:21 那覇:21:16石垣島:21:07  ・チェックポイント!   ・かくされた時刻は?(初級)    時   分   秒(秒は上級)     すでにかくれていたら、それは何時何分にはかくれていたか?   ・月のどこにかくされたか?(中級)     一番ふくらんでいるところを真ん中とすると、     真ん中? 真ん中より下? 端っこすれすれ?     できれば、スケッチをしましょう。(上級)     月の形を画用紙に描き、どの場所にかくれたかを記入します。 2:月から飛び出す時刻を観測する  こちらも、各地の荒っぽい予報をします。 月の明るいがわからでてきます。  稚内:22:59  根室:23:05 札幌:23:00 仙台:23:03  東京:23:00 新潟:23:00 大阪:22:51 高知:22:45  福岡:22:39 鹿児島:21:37 那覇:22:16 石垣島:21:57  ・チェックポイント!   ・でてきた時刻は?(中級)    時   分   秒(秒は上級)     すでにでていたら、それは何時何分のこと?   ・月のどこからでてきたか?(中級)     一番ふくらんでいるところを真ん中とすると、     真ん中? 真ん中より下? 端っこすれすれ?     できれば、スケッチをしましょう。(上級)     月の形を画用紙に描き、どの場所にかくれたかを記入します。 3:のんびり観測(初級〜中級)  星が見えてきたら、1時間おきに24時まで、  アルデバランが月の右か左かどちらにあるか観察してみましょう。  写真を多重露出にして、1時間に1回露光(上級)してもおもしろい  ですね。ただし、この場合広角レンズが必要です。 4:のんびり観測(初級)  適当な時刻に、月のそばにアルデバランがあるかどうかを観察します。  そして、*時*分には、見えた か 見えなかった かを記録します。  これだけ。 5:双眼鏡観測(中級)  時計かストップウォッチを片手に、かくれた時刻を測ります。  できれば、ストップウォッチを、適当な時刻にスタートさせ、  双眼鏡をのぞいて、かくれた・でてきた瞬間にラップを押すと  秒の単位まで、精密に測定することができます。 ■星食によってわかること 1:月の動き方が超精密にわかる!  星食は、月の運動によって起こります。ですから、星食を詳しく  観測することで、月の動き方のデータがとれるのです。  月の動きは、実は素直に地球を丸を描いて回っているのではなく、  かなりふらふらと地球のまわりを回ります。  こうした月の動きを精密に予測するには、月がどう動いているかを  正確に観測しなければなりません。星食の観測はこのような目的に  ぴったりです。  世界のこうした星食のデータは、日本の海上保安庁水路部が運営して  いる「星食国際中央局」によってとりまとめられています。  #前は、グリニッジ天文台でしたが、現在は日本が行っています。 2:連星が発見できる  月の縁に星がかくれるさいに、一気に暗くならずに、2段階で暗くなる  ことがあります。これは、二つの星があいついで月に隠されたことを  意味します。望遠鏡では分かれて見えなくとも、星食の時に「連星」  が見つかることもあるのです。 3:恒星の直径が測定できる  ほとんど、不可能に見える、恒星の直径の測定ですが、星食がそれを  可能にします。非常に精密な(1/1000秒単位の)観測が必要ですが、  月のかげに恒星がかくされるさいの回折パターンの観測から、  恒星の面積を割り出すことが可能です。 、、、しかしながら、星食の観測は天文学の第1線とは言い難いものが あるのが本当のところです。 ■星食で発見された 天王星と海王星の環 星食は月だけではなく、惑星によっても起こります。 もちろん、惑星は点にしか見えませんから、月による食よりも確率はぐっと 小さくなります。しかし、そのごく稀なチャンスを使って天文学上の発見が なされたことが幾度もありました。 そのうち、もっともドラマチックなのが天王星と海王星の環の発見です。 ここでは、そのうち天王星の発見についてご紹介しましょう。 天王星の環が発見されたのは 1977年のことです、この時、天文学者は 直接、環をみていないのです。観測は、成層圏を飛ぶアメリカの カイパー空中天文台や、その観測を支援する埼玉の堂平山にある 国立天文台や世界各地の望遠鏡で同時に行われました。 観測の目的は、天王星によって星がかくされている時間を測って、 天王星の正確な直径を測定すること。天王星の公転運動を正確に 測定することでした。 さて、いよいよ天王星に恒星が隠されようとする少し前に、 はたして、恒星が何回かまばたきをするように暗くなったのです。 そして、天王星の背後から恒星が姿を出したあとも、 同様に何回か、恒星が暗くなりました。恒星の減光は、天王星本体に 対して対象に起こりました。1度だけなら、衛星により隠された 可能性もありますが、このさい観測されたものは、明らかに環による ものと考えられます。前後9回ずつの減光から、9本の環があると 考えられたのです。 そして1986年。アメリカの宇宙探査機ボイジャー2号は、史上初めて 天王星に接近し、10本の鮮明な環の映像を送ってきました。 宇宙船による直接探査の実に10年も前に、人類は星食によって環を 発見していたことになります。 なお現在では、地球上空にある巨大望遠鏡ハッブル・スペース ・テレスコープ(HST)が、鮮明な天王星の環の撮影に成功しています。 なお、海王星の環は、1984年にやはり星食観測によって発見されました。 確認したのは、やはりボイジャー2号で1989年のことでした。 海王星の環は非常に暗く、HSTからの撮影は成功していません。 海王星の環は、地球軌道上からは星食によってしか確認ができないのです。 ■小惑星の星食による形状測定(みえない を みる) 総合研究大学院大学の佐藤勲氏は、アマチュア観測家とネットワークを使って 小惑星の星食の観測を行っています。そして、多地点による同時観測から、 小惑星の大きさや形を測定することに成功しています。 小惑星の大きさは、大きなものでも直径1000kmほどです。小さな小惑星では 直径500mというものも発見されています。これほど小さいものが1億km もの 彼方にあると、実際は直径は距離と反射率を元に推定した値でしかありません。 そこで佐藤氏は、星食を同時に多地点で観測することにより、精度よく 小惑星の大きさを測定することに成功したのです。これは、星食の観測が、 潜入と出現の時刻を0.1秒の単位で測ればよいという、比較的簡単な作業で あることが大きいでしょう。現在、日本で稼働しうる口径 0.5m 以上の 天体望遠鏡は100台以上、0.2m 以上であれば、数万台はあるでしょう。 これらの望遠鏡にビデオや光測定器をつけたり、あるいは肉眼で観察する ことにより「みえない」小惑星でも、背後の恒星をかくすことで「みる」 ことができます。つまり、ほとんどの小惑星は、小型望遠鏡ではみることは できませんが、小型望遠鏡で見える11等星より明るい恒星は、100万個も ありますので、ここまで手を広げれば、年に10数回の 観測のチャンスがおとずれます。 佐藤氏と協力アマチュア天文家はこれまでに2つの小惑星について、 大きさと形状の測定に成功しています。これらの情報から、小惑星の 反射率が測定でき、さらには、小惑星がなにでできているのか、表面の 様子はどうであるのか、見当がついていきます。 近年は、ロケット探査機による直接探査も行われていますが、 佐藤氏と協力アマチュアの観測も、まだまだ価値がありそうです。 ■次に日本でみられる星食(時刻は大阪で計算) ◇みやすい時刻にみられる1等星の食 1998年4月1日 16:59〜18:20 アルデバラン食(日入が 17:58。低空) 1998年12月3日 20:44〜21:41 アルデバラン食(満月でまぶしくて観察しにくい) 1999年1月5日 22:28〜23:36 しし座のレグルス食(ただし低空で起こる) 1999年2月23日 22:22〜23:19 アルデバラン食 1999年6月18日 21:41〜22:3 レグルス食(梅雨のさなか) ◇時刻にこだわらなければ、、 1998年7月14日  4:30〜5:15 アルデバラン食 1998年10月9日 23:15〜0:15 アルデバラン食 1998年11月14日  〜2:00 火星食(隠された状態で昇る。北日本のみでみられる) 1998/01/06 Yoshiya WATANABE @ Science Museum of Osaka