8月の【星空の連帯】は、東の宵空に姿をみせはじめた木星を見ましょう。 ** このガイドは 転載・改変・切り張り自由です 渡部義弥 ** ■はじめに 木星は今から400年前に、ガリレオが望遠鏡で見て大変なショックを受けた星です。 特に周囲をめぐる4つ衛星は、彼の興味をとらえてはなしませんでした。 世界初の天体望遠鏡を使った観測報告書である「星界の報告」には、 衛星が木星をめぐる様子が延々と描かれています(岩波文庫になってます)。 しかし、それ以前から木星は大神ゼウスであり、歳星でありました。 深夜の空の主役であり、歳を刻む名主だったのです。 これから、しばらく木星の観望に適した時期です。まずは昇る木星を 見つめてみましょう。 ■では、第21回【星空の連帯】全国版の参加ガイドです。 ▼い つ:8月22日(土)木星の出から少なくとも5分間(夜7時過ぎ〜8時過ぎ)    **この日は、西日本で午前10時前に日食が見られます。オマケ情報が下の方に ▼どこで:東が開けた場所。水平線、地平線か山の稜線が見えること。 ▼目 標:木星が出てくる様子 ▼準 備: 防 犯:宵の口ですが、不安感があるなら、家の人と一緒に見るか、      痴漢撃退ブザーなどを用意しましょう。 道 具:メモ用具と懐中電灯、時計       ある人は、望遠鏡、双眼鏡、オペラグラス、望遠レンズ付1眼レフカメラ ▼観 察:  木星が東の地平線から昇ってくる様子を観察します。  木星は、東から昇ってくるとても明るい星です。  木星の出 の時刻は地域により違いますし、  山の稜線の具合いや見る高度によっても違います。  下記は0mで計算した各地の木星の出の時刻です。  これを参考にごらんになってください。 ★木星の出の時刻表(高度0mから水平線を見たとして計算)★ ** 山がある時には、仰角1度で4〜5分遅れます ** ** 観察場所が100m高いごと2分昇るのが早まります ** 稚内 19h31m 網走 19h20m 札幌 19h32m 函館 19h33m 青森 19h33m 秋田 19h35m 山形 19h34m 仙台 19h32m 福島 19h33m 新潟 19h39m 富山 19h46m 長野 19h42m 宇都宮 19h35m 水戸 19h33m 銚子 19h31m 東京 19h35m 八丈島 19h34m 小笠原 19h32m 甲府 19h40m 金沢 19h48m 福井 19h50m 静岡 19h41m 名古屋 19h46m 大阪 19h52m 潮岬 19h51m 岡山 19h58m 鳥取 19h58m 松山 20h03m 広島 20h04m 高知 19h59m 松江 20h02m 下関 20h10m 福岡 20h12m 長崎 20h14m 鹿児島 20h11m 名瀬 20h14m 那覇 20h12m 宮古島 20h30m 石垣島 20h36m ★山の稜線の仰角の見極め方  腕をいっぱいにのばしたとき、指一本の巾が約2度です。 ______{~~~~-_ {____ ~~~ ~- ___----___★ {___ 手 / ~~---~~{_____ ____ ←これなら4度くらい。 __________________ {_______/ ▼観察記録 ・観察者 ・木星を見るのは、はじめて? 数回目? 数限りなく? ・場所(できれば海抜も): ・時間  時  分〜  分間 ・木星を見つけた時刻   時  分 ・  〃    仰角   度くらい じゃましたのは地平線? 稜線? 雲? ・  〃    時の色は? 白・黄色・オレンジ・赤・もっと別の色 ・  〃    時の輝き方? チカチカ どんより キラーー などなど ・その後の変化 色と輝き方 ▼観察2:望遠鏡や双眼鏡で、、、 ・オペラグラスやカメラの望遠レンズで見る  →色がよりはっきりして見えます。輝き方など ・双眼鏡で見る(倍率7〜10倍くらい)  何か台に固定して見るといいです。カメラ三脚につけるのもグーー!  →周囲の星は見えますか?  →木星の衛星は見えますか? 何個?    答えは天文年鑑などがあればわかりますが、とりあえず見ておきましょう ・バードウォッチング用望遠鏡で見る(倍率12〜20倍くらい)  →木星の衛星がよく見えるはずです。スケッチをしてみましょう。  →数日見ていると、衛星の移動がよくわかります。  →木星の縞模様も2本くらい見えるかも(性能がいいともっと見えます)  →木星はまん丸ですか? ・望遠鏡で見る(倍率50〜200倍くらい)  →衛星は倍率を低くしてみます  →本体は、縞模様の他に、何か粒のような模様はみえませんか?  →色の違いはわかりますか?  →周辺まで一様な明るさですか? ▼低空の星の見え方 1;太陽は地平線に近づくと赤みが指してきます。月も同じです。   木星は、、、実はやはり赤っぽく見えます。でも、大気の状態によります。 2:惑星は瞬かないから見分けられるといいます。   しかし、木星でも低空では瞬くことがあります。特に風が強い時は 3:望遠鏡で見ると、上下に青と赤の色にじみがついて見えます。   これは、大気がプリズムの役割をはたしているためです。   さらに、風が強いと、この角度がめまぐるしく変わり、   様々な色に輝いて見えることがあります。これをプリズム効果と   読んでいます。 オマケ:なお、デキが悪い望遠鏡や双眼鏡で星を見えても色がにじんで   見えることがありますが、これはその辺の風景を見ても同じです。   人間の目も実はちょっとだけ色がにじんで見えます。   めがねでも試すことができます。 ▼木星の呼び方 ものに名前をつける時は、そのものの特徴をとらえて名前をつけることが 多いです。ただし、木星は木製ではありません。じゃあ、なんでそういう 名前がついたのでしょうか。 1:木星(もくせい・ムーシン)   中国での呼び方が元になっています。中国の昔の考え方では、   自然界は「木・火・土・金・水」の五行からなっていて、   惑星もそれにあわせて5つだと考えられ、名前がつけられました。   1週間の月火水、、は、これにあわせて名付けられました。   ただし、その順番はエジプトに起源があり、それが中国に伝わったようです。   古代エジプトの一週間の順番はカシウスという歴史家が次のように説明して   います。  ・まず最も遠方の土星が曜日の最初にあてられた.  ・そして24時間の各時刻にも順次惑星がわりあてられた.  ・すると1時が土星,2時が木星....ときて,翌日の1時は「太陽」がくる.   であるので,太陽が次の日にあてられた.  ・それからまた1時が太陽,2時が土星....と時間によるわりあてがつづき,   3日目の1時には月がくるので,3日目は月の日となった.  ・これをくりかえして,一週間が決まったというもの.          (天文情報処理研究会・天文教育おたすけCDVer0.84a より) 2:Jupiter(ジュピター)   ローマ神話の最高神、ギリシャ神話では雷の神であり嵐の神であるゼウスです。   宵空に輝く最も明るい星ということで名付けられたのでしょうか。   金星は、真夜中にはけして見えない星なので、一番明るくても最高神には   ならなかったようです。   でも、それなら、太陽と月を最高神にしないのが不思議な気もしますが。   ヨーロッパ諸国では、みなこの呼び方をとっています。 3:歳星(さいせい)   日本での古い言い方です。木星は12年間で太陽を一周します。つまりは   12年間で、星座をめぐることになります。それが、ちょうど12支と   同じなので、そのようにつけられたようです。   ただ、より正確には木星は11.862年間で太陽を一周するんですけどね。 ▼木星ってどんな星 太陽系の惑星のなかで太陽から5番目の軌道を回る第5惑星. 数字をずらずらならべてみます。      無責任なコメント −−−−−−−−−−−−−−−−−−−  −−−−−−−−−− 公転周期:11.862年  長い!! 自転周期:0.414日  短い! せわしない一日 太陽からの最小距離:7.406x10^8km     地球の5倍以上      最大距離:8.160x10^8km     遠近差が結構ある 太陽より受ける輻射量:地球の0.037倍    4%の日射とは寒いですよ 反射能:0.73               ほとんど鏡 極大光度:マイナス2.8等          明るい、金星に次ぐ 赤道半径:71492km             でかい、地球は6400km 扁率:0.065                ちょっとつぶれている 赤道重力:地球の2.37倍          みんな体重オーバー 体積:地球の1321倍            どでかい。太陽系最大 質量:地球の317.83倍           わりと軽い 衛星数:16以上(軌道確定したもの)    家来たくさん 密度:1.33g/cm3              水よりはつまってるけど 赤道傾斜角:3.1度             惑星中最小。四季がない 以上、理科年表より でも、どうしたらこんなのわかるんでしょうね。 公転周期はまあ地球から見てればわかるけど、後は、、、 ▼木星ってどんな星2  木星の表面を見ると、縞模様が特徴的です。この縞模様、  細かくみるとどんどん変化していることから、雲であることが  わかります。  これは、どでかい木星が短い周期で自転していること、、、  #まあ、象がバレリーナのようにまわってるといった感じでしょうか。  と関係があります。  地球の雲も、自転の影響で全体としてナナメにたなびきますけれど、  木星の雲は、そのあまりの自転の速さに、南北方向に大きく  移動できないのですね。 ▼木星ってどんな星3  木星はそのほとんどが、水素とヘリウムでできていると考えられて  います。中心部には地球と同じ岩石と金属、水などがあると予想されて  いますが、全体からするとわずかです。  木星の表面から1/3ほどは大気と液体の水素の海で、その下の  4/7ほどは、水素が金属のような状態になっていると考えられて  いますが、この金属水素ってのは実験室では作れるのだそうですけど、  私はまるで想像ができません。その下にわずかな(といっても地球より  一回り大きな金属、岩石、水などでできた中心核があると考えられて  います。 ▼木星ってどんな星4  木星は、内部からの熱が太陽からの熱の2倍もあります。  この熱は、木星が毎年数cmずつ縮むことによって発生しています。  地球の熱は、主に放射性元素の自然崩壊によるものですから、  ちょっと様子が違いますね。  木星中心部では実に20000度にもなっています。  また、木星中心部は100万気圧以上になっていると考えられています。 ▼木星ってどんな星5  雷が観測されています。その空電は地球からアマチュア無線程度の機材で  とらえることができます。地球の1万倍も強力な雷です。  ただし、アンテナは長さ4m以上のものが必要です。  オーロラも観測されています。強力な磁場に衛星イオの火山から吹き出した  物質がとらえられ、両極に落ちているのです。その様子はハッブル宇宙望遠鏡  によって観測されています。  また、1994年にシューメーカー・レビー第9彗星が木星に衝突したときは、  その衝突で飛び散った物質がオーロラの元になりました。通常とは違う位置に  オーロラが見られ、これもハッブル宇宙望遠鏡が紫外線でとらえています。 ▼オマケの日食情報  22日は、西日本の、大阪南部〜広島を結ぶ線より南西側で 日食が見られます。マレーシアなどでは月が太陽の中にはまり込む 金環日食になりますが、日本では太陽の南側がチラッと欠けるだけ です。他の地点については、リクエストがあれば計算します。    開始   最大   食分 終了 那覇 8時49分 9時51分 0.279 11時0分 福岡 9時29分 9時57分 0.047 10時25分 *食分は、太陽にどれだけ月が食い込んだか、  その長さで測ります。 日食を見るさいは、決して望遠鏡を直接のぞいたりせず、 投影板を使ってみましょう。 また、肉眼で見るのなら、白黒フィルムを感光させ現像 したものや、コンパクトディスクなどが便利です。 カラーフィルムや下敷きでも数秒なら問題ないでしょうが、 これらは熱線を案外通してしまいますのでオススメできません。 いずれにせよ、じーっと見続けるのはやめましょう。 目を痛めます。