【星連】ファンのみなさま 渡部@大阪市立科学館です(^^)/ 3月は別れの季節。卒業の季節です。今回の【星連】は、 そんな記念になるようにと、なかなか見られない星を見ることにします。 *** この原稿は 転載・コピー・改変自由です *** ■はじめに:せっかちな神様 水星は、英語で Mercury(マーキュリー)。伝令・通信の神様です。 この名前は、わずか数日間でどんどん位置が変わってしまうために つけられたのでしょう。太陽のまわりをはたった88日間で一周です。 今回の【星空の連帯】では、全国でこの「せっかちな神様」を捕まえます。 今回は、他の「神様」が協力してくれますよ。 それでは第28回【星空の連帯】全国版のガイドをお送りします。 ■日時:3月3日(水)日没20分後〜50分後(日没時刻は後にあります) ■目標:水星 ■場所:西の空ができるだけ低いところまで見える場所。     地平線・水平線まで見えれば、ベスト。     また、安全な限りでできるだけ高いところから観察すること。 ■準備:  道具:できれば、小さくてよいので双眼鏡。  防犯:あまり家から遠く離れなくてもいいと思いますが、     適当な場所がないのならば、痴漢撃退ブザーなどを用意しましょう。     また、家の人や先生と一緒に参加する方法もあります。  防寒:普通の防寒でいいですが、たちどまって大丈夫な程度に。 ■観察  ◆日没時刻の確認   今回の、水星は見える時間が短いです。日が沈んでそれほど間もなく   沈んでしまいます。チャンスを見逃さないように、日没時刻を確認して   ください。前の日の新聞を見てもかまいません(そんなに変わりませんから)   一応、各地の日没時刻、おもな地点を掲載しておきます。   (私のテキトーなプログラムで計算しているので、2〜3分の誤差があります) 根室 17:07 釧路 17:11 旭川 17:19 宗谷岬 17:21 札幌 17:24 盛岡 17:28 青森 17:29 仙台 17:30 山形 17:32 秋田 17:32 小笠原 17:32 福島 17:32 水戸 17:33 宇都宮 17:35 浦和 17:37 横浜 17:37 新潟 17:38 前橋 17:39 甲府 17:41 長野 17:42 静岡 17:43 金沢 17:48 名古屋 17:48 岐阜 17:49 福井 17:50 京都 17:53 大津 17:53 奈良 17:53 大阪 17:54 神戸 17:56 和歌山 17:56 岡山 18:01 高知 18:03 松江 18:04 松山 18:06 広島 18:07 山口 18:11 大分 18:11 宮崎 18:13 熊本 18:15 福岡 18:15 佐賀 18:16 鹿児島 18:16 長崎 18:18 名瀬 18:21 福江 18:22 那覇 18:31 伊良部 18:41 石垣 18:46 与那国 18:48  ◆まず、木星・金星をさがし、それから水星を、、、   空気の澄んでいるところでは、いきなり低空に輝く水星を見つけることが   できますが、都会ではかなり暗く見えてしまいます。   そこで、まず、確実に見つけられる木星・金星を探し、それから水星を   探しましょう。(手品のテクニックでもあるそうです。困難は分割せよ!)    日の入り後、西の空を見てください。モーレツに明るい星が金星。    その下に木星があります。そして、、、木星のすぐわきに水星が    あるのですが、、、下の図を参考に探してみてください。    ゲンコツサイズは、腕を伸ばしたときのゲンコツをたてたときの    大きさです。星を探す頼りにしよう。    見つけられなければ、双眼鏡などを頼りにしてもいいでしょう。    双眼鏡の視野は、ゲンコツより一回り小さいくらいです。 高度30度………: …………………: …………………… : : : : : : : : : : ★:金星 : : : : 高度20度………: …………………: …………………… : : : : : : : :★木星 : : : : : : ☆水星 : 高度10度…_____………………… : ……………………… / ____} : : | ____] : : | ____] <ゲンコツサイズ : | ____) : : | _______ ) : : 水平線_______________________________________________ 西南西 西  ◆金星・木星・水星の明るさ・色は??    金星を基準にして、木星・水星の明るさを表してください。    また、それぞれ色は何色に見えますか?    もし、双眼鏡も持っていたら、双眼鏡で見た色と目で見た    色が同じかどうかも調べてみましょう。 ■観察レポート   観察日時:   観察場所:何県何町? 山の上? 家の脇?   天気は:   誰と? :一人で? 家族と? 友達と??   水星は見つけられましたか? はい いいえ   明るさと色        明るさ  色(目) 色(双眼鏡)    金星  100   ?    ?    木星   ?    ?    ?    水星   ?    ?    ?   感想・質問・【星連】へのリクエストなど何でも ■大科学者・コペルニクスは水星を見たことがなかった。   とよくいいます。コペルニクスというのは16世紀のポーランドの   科学者で「地球も他の惑星も太陽の周りをまわっている」という、   非常識なことをいった人です。そうしたほうが、カンタンに宇宙の   姿を説明できるからだったのですが、このコペルニクスえらそうに   惑星のことをいったわりには、水星を見たことがなかったと伝え   られています。   でも、水星を見たことがなくとも、彼の考えは正しかったことは、   いまは世界中の人が知っています。   なお、コペルニクスは当時、複雑な惑星の位置の理論をたて、   複雑な計算もできる天才として人々に尊敬されていました。   ただの変な人ではなかったのです。それが重要です。太陽の周りを   地球をまわっていると、何の実績もない人がいっても笑われるだけ   ですが、コペルニクスは周りのだれもまねできない精密な理論と   計算で、自分の正しさをしめそうとしたのです。   世の中には、突飛なことをいう人は大勢います。そして、それは   誰でもやれることです。しかし、それをちゃんと裏付けて示すのは、   大変な努力と時間・自然に対する謙虚さが必要です。   そこがデタラメな人と科学者をわける大きな違いなのです。 ■水星をさぐったマリナー10号〜水星は、カラカラの星だ。   火星へ、木星へ、、多くの惑星探査機が飛んでいきます。しかし、   水星に到着した探査機はたった1つ、マリナー10号だけなのです。  マリナー10号について。   アメリカの探査機。1973年11月にアトラス・セントールで打ち上げられ,   金星の近傍通過中に初めてテレビ撮影を行う,その後1974年3月に   水星の近傍を3回通過し4000枚以上の写真を撮影した。  天文教育おたすけ Ver0.95より   マリナー10号によってもたらされた水星は、クレーターだらけの月の   ような世界でした。海などなく、大気はほとんどないと考えられます。また、   巨大な陥没地形が見つかっていて、水星全体が縮むような事件があったの   ではないかといわれています。   水星探査には、様々な困難があります。一番の困難は熱いことです。   太陽のすぐ近くをまわっているため、機器が熱で故障してしまうかも   しれません。特に半導体は熱に弱いので、対策が大変です。   しかし、そうすると探査機が重くなってしまい、作るのにお金がかかります。   水星探査を安くやるために、科学者・技術者は日夜頭をヒネっている   ところなのです。 ■強力なレーダーで水星を探る   最近、水星の極地方に、氷があるのではという発表がなされました。   これは、アメリカのプエルトリコ準州にある、アレシボ天文台の   直径305m(1000feet)の望遠鏡からのレーダー電波で解析したものです。   私たちは、普段目に入ってくる光で「あれは木でできている」「あれは   土だ」と大まかな判断をすることができますが、アレシボ天文台は、   それを電波で行ったわけです。ただ、水星自体は電波を出していないので、   懐中電灯で光をあてるように、レーダーで電波をあてて調べたという   ことなのです。   また、かつてレーダー観測で、水星の自転が57日ということがわかりました。   水星の自転は公転と同じ88日といわれていました。水星は永遠に続く夜と   永遠に続く昼があると考えられていましたが、水星にはちゃんと1日があった   結果です。さて、このように公転の2/3で自転をすると、   水星の1日はどのくらいになるでしょうか? カンタンな算数です。   あなたも、この問題にチャレンジしてみませんか?   式を使わなくても、図を描きながら考えてもかまいません。 ■太陽面の水星通過の時に水星の大気を探る。   いまから8年ほど前に、日本から太陽の前面を水星が通過していく様子が   観測されました。この時、京都大学の飛騨天文台では、太陽望遠鏡を   使って、水星の大気を探る観測が行われました。   これは、太陽からの光が水星の大気を通ってくるときに、水星の大気に   よって起こる吸収を調べ、さらにはその組成を調べようというものでした。   私も、機器の整備などでちょっとだけ協力をしました(観測にはいきません   でした。それは同僚が行いました)が、アメリカからきたチームの人は、   なんと、ソニーのハンディカムでこの現象を調べようとしていたそうです。   どうするかというと、分光器で分光したスペクトルをハンディカムビデオで   連続的に撮影し、変化を調べようというものです。   もちろん、ピントまわりなどは改造されていたそうですが、身近な機器でも、   天文学の研究は行えるのです。   なお、この時、残念ながら水星の大気は検出できませんでした。 1999/2/28 - FKYOIKUS5 - Yoshiya WATANABE @ Science Museum of Osaka 【遊び】渡部義弥の Fun! Science ⇒ http://member.nifty.ne.jp/science/ 【星連BBS】http://mcgi2.nifty.ne.jp/cgi-bin/thread.cgi?user_id=MAH03312 【職場】大阪市立科学館 Web Page ⇒ http://www.sci-museum.kita.osaka.jp/