SUB:【星連テキスト9/14】天の川を追いかけて RE:NON 【星連】ファンのみなさま(^0^)/ 渡部@大阪市立科学館です。 * この原稿は、使用自由・転載自由・改変自由です 渡部義弥 * 最近は、天の川を見たことがない人が増えているようです。 数年前に公開された映画「7月7日、晴れ」では、観月ありさが演じる スーパースター「望月ひなた」が、天の川を見たいということをきっかけに 話が進みました。七夕生まれの彼女が見たことがない というのがポイント になっているお話でした。 確かに、都会の夜空には天の川は見えません。私も、でも、天の川が「ない」 わけではないのです。今回は、何とかして天の川をとらえてみましょう。 なお、月があると天の川は見えづらいですが、このテキスト自体は10月くらい まで使えますから、空のいいときにでもチャレンジしてみてください。 ■では、第34回【星空の連帯】全国版の参加ガイドです。 ▼い つ:9月14日(火)夜9時〜10分間以上 ▼どこで:頭の真上がある程度見えて、周りの灯りが目に入らないところ。 ▼目 標:天の川に挑戦 ▼準 備:  安  全:のために、道路や駐車場などで観察するのはやめましょう。  防  虫:蚊取り線香。虫よけスプレーなどを使いましょう。       また、毒虫や毒蛇の出るところには近づかないようにしましょう。  防  犯:あまり家から遠く離れなくてもいいですが、適当な場所が       ないのならば、防犯ブザーなどを用意しましょう。       夏はいろいろ物騒です。家の人と一緒にやるのも一法です。  目慣らし:今回は、コレがポイントです。暗闇に目が慣れるのに時間がかかります。       ので、まずできるだけ周囲を暗くし、街灯が直接見えないようにします。       そして、真っ暗闇でも目が見えるようになるまで、数分待ちます。  道  具:懐中電灯(観察場所に行ったら消します。)       筆記用具。テントマットや段ボールか寝椅子などに寝転がると楽です。       夏の大三角が見つけられない人は > クロート・フレームを作ってくださ い。できれば、双眼鏡があるといいです。 ▽夏の大三角をキャッチする「クロート」フレームを作ろう  夏の大三角見つけのシロウトから、クロートになるために、  クロートフレームをつくりましょう。  ようは、ミニチュア版の夏の大三角を作り、それを空に当てはめて  星を調べようというものです。辺の長さが9:6:10にするといいので  クロートと名づけました。(この計算の方法は、最後に書いてあります)  用意 太めの針金90cm以上(針金でできたハンガーが便利)       または、ボール紙3本 5cm×18cm、27cm、30cm     30cm定規、針金を使う場合はダテでいいからめがねがあるとよい     セロテープ、紙を切るならハサミ、針金を曲げるならペンチなど  工作 針金または、ボール紙で、辺の長さが 9:6:10になる     三角形を作ります。18cm 27cm 30cmが手軽でいいでしょう。     そんなにキチンとしなくていいです。1cmくらいのズレは     気にせず、作ってみましょう。       一番長い辺は、針金を曲げるとか 切り込みを入れる     などして、マークをつけておくと、便利です。 ▼観 察  まず、頭の真上の夏の大三角形を探します。  ベガ・アルタイル・デネブの3つの星を結ぶのがそうです。  下の図を参考にしてもらうといいと思います。  夏の大三角の大きさが分からない人は、クロートフレームを作ってください。  頭の真上にかざして、目から45cmほど離すと大きさが同じになりますから、  それで見当をつけてください。 北↑ * * * * * デネブ ★ * ※ *   頭の真上   ★ ベガ(織姫星) * * * * * * ★ アルタイル(彦星) * * *        南↓ ▽次に、天の川ですが、織姫・彦星の間といわず、こういう範囲全体が  モヤっと雲のように見えれば、それが天の川です。 ∵ で描きました  南にも北にも、ずーっと広がり、地平線まで続きます。  なお、はしっこははっきりしていません。だんだんに暗くなります。 ∵ ∵ ∵∵∵∵ ∵ ∵ ∵∵∵∵∵ ∵ ∵ ∵∵ ∵ ∵ ∵∵∵∵∵ ∵∵∵ ∵∵ ∵∵ * ∵∵∵ ∵ ∵∵∵∵∵∵∵ ∵ ∵ ∵∵ * * ∵∵∵∵ ∵∵∵* ∵ ∵∵ ∵∵∵ ∵ ∵ ∵∵ ∵∵∵ ∵ ∵ ∵∵ ∵ ∵∵∵ ∵∵ ∵ * ∵∵∵∵∵∵ ∵∵∵ ∵ ∵ * ∵∵ デネブ ∵ ∵ ∵ ∵ ∵∵ ★ ∵∵*∵ ∵∵ ∵∵ ∵ ∵∵ ∵ ∵ ※ ∵∵ * ∵∵∵∵∵   頭の真上 ∵∵ ∵∵∵∵ ∵ ∵ ★ ベガ(織姫星) *∵∵ ∵∵∵∵∵∵ * ∵ ∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵ * ∵ ∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵ ∵ ∵∵∵∵∵∵∵∵∵ ∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵ ∵ ∵∵ ∵∵ ∵∵ ∵∵∵∵ ∵ *∵ ∵∵∵ * ∵ ∵∵∵∵∵∵∵ ∵∵ * ∵★ アルタイル(彦星) * ∵ ∵∵ ∵∵∵ ∵∵∵ ∵ ∵∵∵∵∵ ∵ * ∵∵∵∵∵∵∵∵ ∵ * ∵∵ ∵ ∵∵∵ ∵∵ ∵∵∵∵ ∵∵ ∵ ∵ ∵ ∵∵ ∵∵∵∵ ∵ ∵ ∵∵∵ ∵∵ ∵ ∵∵ ∵  天の川は、大阪や東京のような都会ではまず見えませんが、  ちょっと郊外であれば、たまにうっすらと見えることがあります。  さて、みなさんのところでは、いかがでしょうか。         ▼双眼鏡で天の川を見る  都会では、なかなか天の川が分かりません。そんなときは、双眼鏡を  使うと、確認できることがあります。  天の川は、たくさんの星の集まりです。双眼鏡は、モノを大きく  見せるだけでなく、暗いモノを明るくみせてくれます。  暗いかすかな天の川の星ぼしも、双眼鏡を使えば見ることができますから、  他の場所にくらべ、星が多いかどうかで、天の川が見えているか  どうかを確かめることができるのです。  天の川 と思える方向(夏の三角の中)と、そこから大きく外れた  方向を、見比べてみてください。さあ、天の川の星がわかるかな? ▽双眼鏡をはじめて使う人は、使い方をちょっと練習しましょう。  1:まず、双眼鏡全体をまげて、目の幅にレンズを合わせます。    これをしておかないと、とても見づらくなります  2:次に、ピントをあわせます。    普通、双眼鏡は、レンズの真中と、片方ののぞき口の部分の    2箇所にピントのダイアルがあります。        ○   ○       /   /      /o<ココにピント調整のダイアル     目   目<ココにもピントのダイアル(反対の場所の場合もある)  3:双眼鏡で星や遠くのものを見て、ピントのダイアルがない    のぞき口のピントを真中のダイアルであわせます。    上の図だと、左目がわを 真中のダイアルであわせます。  4:次に、もう片方を、のぞき口のダイアルであわせます。    上の図だと、右目を、そこについているダイアルであわせます  5:双眼鏡を持つときは、腕を脇にピッタリつけてヒジを直角に    まげてもってください。 ▼太陽より明るい天の川  変なことをいうな と思うかもしれませんが、もし、私たちが  光を感じる目ではなく、電波を感じる目をもっていたら、そう  なったのです。  1932年、アメリカの電話会社ベル研究所に勤めていたジャンスキーは、  無線電話の実験のアンテナを使っていて、不思議な現象に気づきました。  彼は、短波での通信に、時々強い雑音が入ることに気がついたのです。  その雑音は、近くのエンジンなどによるものでもなく、雷によるもの  でもありませんでした。雑音が強くなるのは23時間56分ごとで、  これは、太陽でもありません。他の星と同じなのです。  ジャンスキーはまもなく気がつきました。その雑音は天の川が高く  昇っているときに強くなることを。そう、ジャンスキーは世界で  はじめて、天体の電波をキャッチしたのです。そして、それは、  あの明るい太陽でも、他の明るい星ぼしでもなく、天の川、それも  中心方向だったのです。  なお、太陽の電波は、1940年代になってようやく捉えられています。  その強さは、短波では天の川の半分ほどです。 ▼天の川は星の集まり  ということを発見したのは、イタリアの科学者、ガリレオ・ガリレイです。  当時、名前と名字を同じにするというのが流行していたために、変わった  名前の人です。秋野秋夫とか、遊部遊さんって感じでしょうか。  ガリレイは、当時最新の発明品だった、望遠鏡を自作し、  宇宙に向けていろいろな発見をしました。月のクレーターや  木星の衛星、金星の満ち欠け、そして、天の川が星の集まりである  ことも発見したのです。  詳しくは岩波ジュニア新書282「みんなで見ようガリレオの宇宙」を  読んでみてください。彼はいまのオモチャの望遠鏡のようなもので、  こうした発見をしています。  ※もっとも、当時、望遠鏡で宇宙を眺めていた人はガリレイだけ   ではありませんでした。彼は、周囲の協力で本を出版して   自分の発見をPRしたことと、ただ見ただけでなく、かなり   詳しく追跡観測をしたことで、この名声を得ているのです。 ▼天の川は、銀河系の中をチラッと見ている様子  私たちの地球や太陽は、大きな目玉焼きみたいな形をした、  数1000億個の星の集まり、銀河系に属していることがわかっています。  そして、天の川として折り重なって見える無数の星たちも、  その、銀河系に属しています。  しかし、私たちが見ている天の川は、銀河系のほんの一部にしか  すぎません。たとえれば、大きなビルディングが銀河系だとすれば、  天の川として見えているのは、その中の1つの部屋くらいなのです。  部屋を仕切る壁のような役割、向こうを見えなくしているのが、  そこらじゅうにある星間物質で、ガスやチリのようなものが、ポツン  ポツンとあります。でも、それが続いていると、ガラスも何枚も  重ねると向こうが見えなくなるように、遠くの様子を見えなくして  しまっているのです。  でも、こうしたわずかな星間物質があるおかげで、星は生まれます。  わずかな物質が、ゆっくりと集まり、あるいは、近くの星の爆発など  で、吹き集められます。さらにその吹き溜まりがだんだんと周りを  まきこんで、ぎゅうぎゅうと押し競饅頭をして熱くなり、星が生まれます。  天の川の中では、今日もたくさんの星が生まれていることでしょう。  そして、同時にたくさんの星が死んでいっているのです。 ▼夏の大三角の星の距離の計算方法  星と星の間の、見かけの距離(角度)は「球面三角法」で求めることが  できます。球面に張り付いた三角形ABC(角の名前)辺をabcとすると公式   cos c= cos a・cos b + sin a・sin b・cos C  が成り立ちます(公式は理科年表などに載っています)。         a  C|−−−−−−−B   |      /   |     /   |    /  b|   /c <−−別に直角三角形でなくともいいです。   |  /   | /   |/   A  ここで、Cを点の北極としますと、  CA=b=90−Aの星の赤緯  CB=a=90−Bの星の赤緯  C   =AからBの赤経を引いたもの  となります。あとは、公式から解くだけです。  では、Windows の電卓で「電卓の種類」を関数電卓にして  織姫(ベガ)と彦星(アルタイル)の距離を計算してみましょう。          赤緯  赤経  A星 織姫  38.8度 18時36.9分=279.2度  B星 彦星   8.9度 19時50.8分=297.7度  すると、  CA=b=90-38.8 = 51.2 CB=a=90-8.9 = 81.1  C   =279.2 - 297.7 =-18.5   cos c= cos a・cos b + sin a・sin b・cos C ですから、代入して   cos c =cos(51.2)×cos(81.1)+sin(51.2)×sin(81.1)×cos(-18.5)    =0.828 よって、c=34.1度 < Inv cos で計算できます。   同様に、夏の大三角のデネブとベガ、デネブとアルタイルの距離も   計算してみましょう。デネブの座標は以下のとおりです。   A星、B星は、必要に応じて入れ替わることをお忘れなく。         赤緯  赤経   デネブ  45.3度 20時41.4分=310.4度   答えは、デネブ=織姫 :23.9度       デネブ=彦星 :37.3度   34.1:23.9:37.3=9:6.3:9.8 で 大まかに 9:6:10です。  参考文献:斉田博「天文の計算教室」地人書館 1800+税 ISBN4-8052-0602-0  1999/9/11 - FKYOIKUS5 - Yoshiya WATANABE @ Science Museum of Osaka 【遊び】渡部義弥の Fun! Science ⇒ http://member.nifty.ne.jp/science/ 【星連BBS】http://mcgi2.nifty.ne.jp/cgi-bin/thread.cgi?user_id=MAH03312 【職場】大阪市立科学館 Web Page ⇒ http://www.sci-museum.kita.osaka.jp/