遥かなりヒッグスへの道
  素粒子研究の第一線にあった欧州合同原子核研究機関(CERN) の加速器LEP(電子-陽電子加速器)が引退することとなりました。 これは今後、新しい実験装置LHC(重粒子加速器)の建設に移行するためです。
  もっとも基本的でありながら、現在まったく理解できていないことに、 「なぜ物には重さ(質量)があるのか」という問題があります。 この問題に答えを与えると考えられているものがヒッグス粒子です。
空間を埋め尽くすヒッグス粒子によって物が減速されること(光速でなくなること) が"重さ(質量)を持つ"ということである、ヒッグス粒子によって減速されない もの(光子など)は質量を持たず、光速で運動する
  LEPは1989年から実験を開始し、2000年4月には設計限界一杯まで エネルギーを上げてヒッグス粒子の検出を狙っていました。 9月にはヒッグス粒子らしき兆候を捕らえていましたが、確証には至りませんでした。 そのため、さらに高エネルギーの実験ができるLHCの早期建設へ移行することを CERNが決定したのです。
   LHCはヒッグス粒子検出だけではなく、超対称性粒子SUSY検出への 期待も寄せられています。SUSYは「なぜこれほどまでに素粒子(クオーク、電子、ニュートリノなど、 物質世界を構成する基本粒子)はバリエーションに富んでいるのか」を説明する カギとなる粒子で、宇宙の未来を左右するダークマターの候補でもあります。 LHCは新しい物理への扉となることでしょう。
  LEPは素粒子が3世代しかないことを明らかにし、 素粒子の標準理論を確固たるものにしました。今回の決定でLHCに真理追究の道を譲り、 11年間の華々しい活躍に幕を下ろすこととなりました。

参考: CERNのプレスリリース





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