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■2011年は世界化学年!■


月刊「うちゅう」2010年12月号 化学のこばなし(77)より


 2011年は、世界化学年です。2009年は世界天文年、2005年は世界物理年。ようやく化学の年がきました。

世界化学年2011 (International Year of Chemistry:IYC2011)
 天文年はガリレオガリレイが初めて望遠鏡を覗いて400年、物理年はアインシュタインの奇跡の年から100年。そして化学年は、マリー・キュリー(キュリー夫人)がノーベル化学賞を受賞してから100年目に当たることを記念して設定されました。今回も、国際連合総会で決定された、世界共通のイベントです。
 日本でも、世界化学年日本委員会というのが立ち上げられ、委員長には、2001年にノーベル化学賞を受賞した理化学研究所理事長の野依良治さんが、委員には、2010年に文化勲章(旭日大綬章)を受賞した有馬朗人さんや、宇宙飛行士の毛利衛さんらが名を連ねています。

公式ロゴ(IYC2011より)。 “C”の意味は、chemistryの“C”、炭素の“C”、Marie Curieの“C”に繋がり、さらにChallenges, Creativity, Changesの“C“へと広がっていきます、と説明されています。

Chemistry-our life, our future(私たちの暮らしと未来につながる化学)
 これが世界化学年のスローガンです。化学というと、難しい、危険、というようなネガティブなイメージもありますが、このスローガンのとおり、私たちの暮らしは今も未来も、化学の恩恵を受けていることは間違いないはずです。つまり、化学は化学者だけのものではなく、この世界に住むみんなのためにあると言えると思うのです。
 世界化学年は、化学者にも一般市民のみなさんにも、多くの方が楽しみながら、化学の意義を実感することができる、すばらしい機会になるでしょう。

マリー・キュリーの業績
 私のように、子どもの頃に伝記を読んで彼女の生涯や業績を知ったという人も少なくないのではないでしょうか。血の滲むようなひたむきな努力と、夫婦の結束、研究が原因で病気になってしまったこと、…が子どもだった私の心に強烈な印象を残しました。自転車で新婚旅行に行った、というのも新鮮な驚きでした。
 マリー・キュリー(Maria Curie)は、1867年11月7日、ポーランドで生まれました(1934年没,享年66)。学業成績が優秀で、フランスのパリ大学へ進学し、そこで夫となる物理学者のピエール・キュリー(Pierre Curie,1859−1906年)と出会い、結婚したのは1895年のことでした。
 その後、放射能の研究を本格的に行い、ウランの放射能がウラン原子そのものの性質であることの確証、新元素として天然放射性元素のポロニウムとラジウムの発見(1898年)、「放射能」(radioactivity)という概念を提唱するなど、数々の業績を上げました。
 1911年のノーベル化学賞は、「ラジウムおよびポロニウムの発見とラジウムの性質およびその化合物の研究」に対して単独で受賞しました。この8年前、1903年には、「放射能の研究」の業績によって、夫のピエール・キュリーとアンリ・ベクレル(Antoine Henri Becquerel)とともにノーベル物理学賞を受賞しています。

ポロニウムとラジウムを探してみましょう(科学館4階「いろいろな元素」)。ただ、放射性元素なので本物は置いていません。

科学館も、みなさんも
 科学館も、この1年、"化学"を盛り上げていく予定です。ご期待ください。みなさんも、化学の本を読んでみよう、とか、夏休みの自由研究は化学で、などなど、化学に注目してもらえると嬉しいです。
 日本委員会のホームページでは、公式イベントの内容が公開されつつあります。科学館のイベントと合わせて、ときどきのぞいてみてください。

(2010.12.25.更新岳川有紀子


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