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■ドライフラワーをつくるには?■





月刊「うちゅう」2001年2月号 化学のこばなし(21)より


 冬はあんまりいい生花がなくて・・・ということは今ではほとんどありませんので、わざわざドライフラワーをつくる必要もないのかもしれませんが、私のようにいただいた花が捨てられなくてドライフラワーに、という方もきっといらっしゃることと思います。私は「日陰の風通しのよいところに、束にして数日間吊るして乾燥させる」というスタンダードな方法でしかつくったことがありませんが、最近はこのような自然乾燥ではなく「シリカゲル」という乾燥剤(吸湿剤)を使う方法がスタンダードになりつつあるようです(特に新しい方法ではなく1973年に製造特許が認められている)。自然乾燥よりも花の色を美しく乾燥することができるということでも話題になっているようです。今回は、シリカゲルを使ったドライフラワーの作り方と、必需品のシリカゲルについてご紹介しましょう。
  ドライフラワー


■シリカゲルはどこに?

 ドライフラワー用として販売しているシリカゲルを購入するのがもったいなければ(1kgで1500円くらい)、お菓子の乾燥剤として入っているシリカゲルをたくさん集めて使うという方法はいかがでしょうか。
  シリカゲル 透明な袋をあけてつぶつぶのシリカゲルを使います。


 シリカゲルのその成分はニ酸化ケイ素といって、分子式ではSiOとして表すことができます。ニ酸化ケイ素は石英・ガラスなどの主成分でもあり、また、宝石の主な成分であるものもあります。石英の中でも無色透明な結晶である水晶、不純物として鉄をふくむ紫色のアメシスト(紫水晶)や黄色のシトリン、チタンの不純物によりピンク色に見えるローズクォーツ、そしてめのう、オニキス、オパールも、シリカゲルとおなじ二酸化ケイ素が主成分でもそれらは宝石として扱われます。(「宝石の写真図鑑」参考)


■シリカゲルの色がおしえてくれること

  乾燥剤のシリカゲルをじっくり観察してみると、通常の白いシリカゲルに混ざって着色されているものがあります。これは塩化コバルト(U)という物質がシリカゲルに塗られているもので、乾燥している時と湿っている時とで色が変わる優れた物質です。この性質を利用して、シリカゲルがまだ乾燥剤として使えるか、使えないかが判断できるサインになってくれています。乾燥している時は青色、湿っている時はピンク色です。シリカゲルは、その表面に水分を吸着することによって乾燥剤としてはたらいていて、ある一定以上の水分を吸収すると、もう乾燥剤として使えなくなりますが、外見的には何も変化がありません。そこで、塩化コバルト(U)があれば、青かピンクか、色を見れば私たちでも容易に乾燥剤として使えるのか否かが判断できる、というわけです。また、乾燥剤のシリカゲルが必ず透明な袋に入っているのですが、その理由も、シリカゲルの色を見る必要があると思えば、納得できますね。


■ドライフラワーのつくりかた

 タッパーなどの密閉できる容器に、花と、花が埋まるくらいのシリカゲルを入れて、数日間置いておく。


■シリカゲルは捨てないで!

 シリカゲルの、塩化コバルト(U)の示す色によってまだ乾燥剤として使えるかどうかが判断できる性質は便利ですが、もうひとつありがたい特長をもっています。それは、繰り返し何度も使うことができる、ということです。色付きのシリカゲルがピンク色になってしまっている時は、そのシリカゲルを加熱して、限界まで吸着している水分を蒸発させてしまえばよいのです。お鍋などにシリカゲルを入れて、コンロの弱火で振りながら温めればOK。そしてそのシリカゲルが再び活躍できる乾燥剤になったかどうかは、また、色で判断すればよいですね。しっかり青色になっていれば大丈夫、また使うことができます。
  シリカゲルを乾燥 注意:シリカゲル乾燥用のお鍋は料理用のものとは別に。 加熱中は換気をして。

 (岳川有紀子:科学館学芸員)

(2004.11.20.更新)

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