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■DNAの長さ■
DNAは、生物の細胞内に存在する遺伝情報を伝える物質で、デオキシリボ核酸(deoxyribo
nucleic acid)のという物質の名前の略です。下の写真は、1億倍に拡大したDNAの模型の一
部で、青森県の藤崎園芸高校科学部の学生さんたちが手作りで製作したものです。2004年2月29日
まで開催していた新作展示展「ナノって何ナノ?〜身近な原子・分子の世界〜」で展示して
いたのですが、ご覧になられたでしょうか。ぽこぽこしているのがひとつの原子で、それらいくつ
もの原子(らせんの山から山の部分で約800個の原子がある)を規則どおりに結合させて、2重
くっています。この模型の原子は発泡スチロール球で、ボンドを使って原子どうしをくっつけて
います。
DNAはこのとおり原子でできていますが、それはDNAだけでなく、わたしたちの身のまわりに
それらすべてが原子というとっても小さなつぶでできています。今月はDNAの長さを考えなが
想像していただこうと思います。
@人間のひとつの細胞中には、実寸で、幅2ナ
ノメートルのDNAが合計1.8メートル分存在する。
1.8メートルのDNAが、細胞中の23対の染色体に分かれて存在しています。1ナノメートルは
、10億分の1メートル。幅が2ナノメートルしかなくて長さが1.8メートルもあってもDNAは絡まっ
たりはしません。ネックレスの鎖なんてかんたんに絡まるんですけど。
Aひとつの細胞中に存在するDNAを1億倍に
拡大すると、幅20センチメートル、長さは18万キロメートル。この長さ、地球4周半です。
右の写真で私が持っているDNAの模型は、18万キロメートルのうちの70センチメートルです。
B人間は約100兆個の細胞でできています。とい
うことは、ひとりの人のからだが持つDNAの長さは、実寸で、100兆×1.8メートル=1800
億キロメートル。この長さ、地球と太陽の距離の約1200倍です。
これを「光年」という単位で表すと、0.02光年となります。自分の体の中に天文学的規模のDNA(実寸で)が存在しているなんて。
Cひとりの人間のからだが持つDNAのすべて
を1億倍に拡大すると、幅20センチメートル、長さ1800京キロメートル。この長さは、約200万
光年で、地球からアンドロメダ銀河くらいまでの距離なのだそうです。
原子の世界は、「小さな宇宙」と言われることがあります。その理由がわかるような気がしませんか。

さらに、人間をつくる原子の数は、「原子体重計」という展示物で計ることができます(新着展
示展の後、展示場4階で公開中)。その展示によると、私のからだは約4760杼個(4760×10^24個)の原子でできているそうです。
DNAは3.4ナノメートル分で約800個の原子がありますから
、1つの細胞にあるDNAは約4200億個の原子でできています。さらに人間は約100兆個の細胞でできているので、体内にあるすべての
DNAは約42杼個の原子でできていることになります。この数は、からだ全体で考えれば約0.9%。
人間がどんなにたくさんの原子でできているか、原子がどんな
に小さなものか、自分のからだの中の小さな宇宙をみなさんも想像してみませんか。
(2005.08.02.更新)
(岳川有紀子:科学館学芸員)
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