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■ノーベル化学賞2010■
2010年10月6日の夜、ノーベル化学賞の発表がありました。
なんと今年も、日本人2人を含む3名が受賞。白川英樹博士の受賞から10年となる記念すべき年に、またも日本人の受賞です。
とりいそぎ、速報としてご紹介します。
有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング
For palladium-catalyzed cross couplings in organic synthesis.
受賞者
Richard F. Heck(リチャード・ヘック) デラウェア大学(アメリカ)
根岸 栄一(ねぎし・えいいち) パデュー大学(アメリカ)
鈴木 章(すずき・あきら) 北海道大学
薬、プラスチック、繊維など私たちの身の回りにある素材には、炭素(C)という元素を基本骨格としている物質がたくさんあります。こうした物質を有機化合物と呼んでいます。
有機化合物には、天然のもの、人工的に実験室で合成されるものがあります。炭素どうしを人工的につなげようとする場合、実はなかなか簡単にはつながりません。
そこで、パラジウムという触媒を使って、炭素どうしをつなげること(結合)に成功し、応用が進んでいる、という成果が、今回の受賞理由です。
たとえて言えば、仲が良くない男性と女性がいたとして、そこに優れた仲人役(キューピット役)が登場したことによって、そのふたりが結ばれた…というイメージに近いでしょうか。
このように、それまで難しかった結合を化学反応によって作ることができるようになったことで、新しい化合物を比較的容易に効率的に合成できるようになりました。
その成果は、医薬品、液晶、農薬…といった私たちにとって身近なものとしても恩恵をうけています。
なお、賞金の1千万スウェーデン・クローネ(およそ1億2千万円)は、3人で等分されます。
科学館では急ぎ紹介パネルを作り展示しています
詳しくは、ノーベル財団のホームページをご覧ください(一部、日本語による概要のページもあります)。
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私は学生のときに有機合成の研究室にいたのですが、炭素3つを輪っか状に結合するシクロプロパンという化合物の合成をしていました。
なので、今回のクロスカップリングの反応は経験がないのですが、新しい反応経路の発見や応用は、実験をとても簡単にしてくれるものでした。
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これまでにノーベル化学賞を受賞した日本人
1981年 福井謙一(ふくい・けんいち) 化学反応過程の理論的研究
2000年 白川英樹(しらかわ・ひでき) 導電性高分子の発見と発展…関連展示3階「スーパープラスチック」
2001年 野依良治(のより・りょうじ) キラル触媒による不斉反応の研究
2002年 田中耕一(たなか・こういち) 生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発
2008年 下村脩(しもむら・おさむ) 緑色蛍光タンパク質の発見と生命科学への貢献
(2010.10.08.岳川有紀子)
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