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■プラスチック100年−リサイクル■
2007年は、実用的なプラスチックの誕生から100周年「プラスチック100年」です。画期的な素材の誕生から100年経った今、新たな課題がリサイクルです。
■リサイクルとは
科学館に来られる方々とお話しをしていると、リサイクルに対する関心の高さを実感します。作って、使って、捨てて、を繰り返していれば、近いうちに資源も埋立地もなくなることは容易に想像できて不安にもなりますし、自分自身が、環境に負荷をかけているのは気持ちいいことでもありません。リサイクル(Recycle:再利用)とは、製品化された物を再資源化して、それを利用して新たな製品などを作ること。日本では「循環型社会形成推進基本法」が平成12(2000)年6月に施行され、法律でも規制されています。プラスチックに限らず、新聞紙、牛乳パック、金属もガラスも、可能な限りの素材がリサイクルの対象となります。
■ペットボトル−最も多くリサイクルされているプラスチック製品を例に
ペットボトルは、ボトルがペット(PET=ポリエチレンテレフタレート=polyethylene terephthalate)製で、不純物がほとんどないこともあり、リサイクルしやすい製品です。
PETボトルリサイクル推進協議会(以下、協議会)によると、2005年度は65.5%の回収率があり年々上昇しています。ちなみに製造量は53万トン、実はこちらも毎年増加の一途です。諸外国の回収率と比較すると、アメリカ21.6%(消費量210万トン・2004年度)、欧州34.6%(消費量230万トン・2005年度)と、日本の回収率が高いことがわかります。
回収されたペットボトルは、選別、洗浄、粉砕を経て、「ボトルtoボトル」または「マテリアルリサイクル」のどちらかの方法で処理されます。前者は、その名のとおり再度ボトルにするのですが、PETを一旦原料まで分解して、またPETを合成してボトルにします。後者は、ボトルを細かいフレーク、ペレットにし、それらを温めて柔らかくして繊維や成型品に成型します。
回収できるペットボトルは右図のような三角マークが、リサイクル品として協議会が認定(※)した商品は楕円形のマークがそれぞれ目印です。
※自治体または事業系ルートで回収され、日本国内で再商品化されたフレーク、ペレットまたはパウダーが25%以上原料として使用されており、商品の主要構成部材として利用されているもの。
日本容器包装リサイクル協会の2004年度のデータを元に、再生PETの用途別割合をグラフにしてみました。約半分は「ポリエステル」と名を変えて繊維に生まれ変わっています。プラスチック(熱可塑性の場合)の得意技は、熱によって柔らかくなり好きな形に変えられること。その技を活かしてリサイクルされるプラスチックは、細く伸ばされ繊維に、薄く延ばされシートに、型に入れられ成型品にと、第二、第三の人生を歩みます。
■重要なのはリサイクルすることだけではなく
4月末に日本製紙が、古紙100%の再生紙の販売を中止する、というニュースがありました。実際、古紙のリサイクルには大量の石油などの化石燃料が必要で、結局は資源の有効活用とはなっていない、ことが理由でした。
「リサイクル」というと「環境に優しい」イメージがありますが、大切なのは環境への負荷を総合的に見て判断する力です。最近テレビのコマーシャルなどでも、「3R(Reduce Reuse Recycle)」というキーワードを耳にします。資源の循環を機能させようというもので、さらにここに「リフューズ」(Refuse:辞退する、いずれゴミになるもの、例えばレジ袋を断るなど)を加えて「4R」と言うこともあるようです。使った後のことを考えるのはもちろんのこと、使う(買う)前から考えなければならない私たち消費者は責任重大ですね。
(2007.06.10. HP掲載2007.06.27.岳川有紀子)
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