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展示場3階「プラスチック」エリア解説
合成プラスチック「ベークライト」
合成プラスチック Synthetic Plastic
石炭・石油を精製して得られる物質を原料に、それらを化学反応して合成するプラスチック。1907年にベークランドが特許申請したフェノール樹脂が、世界初の現実的な完全合成プラスチックとなった。それ以前にもフェノール樹脂に関する論文や特許が存在するが、いずれも製品として完全なものではなかった。この後さまざまなプラスチックが誕生し、現在では100種類以上の合成プラスチックが使われている。
■ベークライト BAKELITE
1907年、ベークランドが合成法を見い出した世界初の完全合成プラスチック。フェノールとホルムアルデヒドを高温、高圧の状態で化学反応させて得られるフェノール樹脂の商標。ベークライトの特徴は、電気を通しにくい(電気絶縁性)、化学的に強い(酸・アルカリ,有機溶媒に反応しない)、硬い、などがある。誕生当初は、黒や褐色など暗い色のものが多かったが、後に研究が進み着色も可能になった。この「ベークライト」の誕生から、プラスチックを利用するライフスタイルが始まった。
■ベークライト特許書類1号【複製】
1907年2月28日、ベークランド(Leo H. Baekeland)が、フェノール樹脂の合成法について初めてアメリカ特許庁に提出した特許。タイトルは「繊維・多孔質物質を硬化する方法」。木材や石綿などの繊維質素材に、フェノール類とホルムアルデヒドを浸み込ませ、強固な縮合物を合成させる方法が記されている。熱(50℃から135℃まで加熱する)、圧力(50〜100psi)、縮合剤(塩化亜鉛など)の条件が明記されている。この他にも1910年までに、フェノール樹脂の合成に関する4つの特許を取得している。
■ベークライト商標登録書類【複製】
ベークランドが、自分の発明した方法で合成できるフェノール樹脂を「ベークライト」と表することを、アメリカ特許庁に商標登録した申請書。申請日は1909年6月20日であるが、この論文中に「…この商標は、1907年6月30日以来ずっと使っている…」とあることから、申請の約1年前、最初のフェノール樹脂の特許申請4ヶ月後には、この商標を思いついていたことがわかる。自分の名前ベークランドと、“-ite”(鉱物、製品などの意味を持つ接尾語)を、上手く組み合わせて名付けている。
■ベークランド(Leo H. Baekeland)【写真複製パネル】
世界初の合成プラスチックを発明したベークランド(1863-1944)。ベルギーに生まれ大学で化学を学び、大学の教職に就いた後、渡米した。1907年のプラスチック「ベークライト」以外にも、写真用印画紙「ヴェロックス(VELOX)」、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)の合成方法などを発明した。いずれの発明においても大金を得たベークランドは、化学者、発明家としてだけでなく、起業家の才能を持ち合わせた人物と言える。1910年にはベークライト社を設立し、自ら社長となった。この写真は、1925年にアメリカ化学会の会長に就任した際、雑誌「TIME」の表紙に掲載されたものである。(TIME誌からの複写)
□ベークライト原料 フェノール【実物資料】
□ベークライト原料 ホルムアルデヒド【実物資料】
□ベークライト製 電気スタンド【実物資料】
1920〜30年代、ドイツ?製。電気を流しにくい性質(電気絶縁性)を活かした商品。コンセントのプラグやソケット、本体をさわっても感電の心配がなくなった。
□ベークライト製 真空管ラジオ【実物資料】
1950年頃、日本製。正面には、Ideal(摂津金属工業株式会社)のロゴ。
□ベークライト製 保温ポット【実物資料】
1925〜40年頃、イギリス、ロアノイド(ROANOID)社製。中は魔法瓶。台所用品はプラスチックをいち早く受け入れ、錆びない,割れにくい,軽い,デザインが斬新などの特長が流行に拍車をかけた。
□ベークライト製 灰皿【実物資料】
1930年頃、アメリカ?製。ベークライトは熱で融けたりやわらかくならない熱硬化性樹脂。
□ベークライト製 サクラカメラ【実物資料】
1931年、日本、小西六本店(コニカの前身、現コニカミノルタ株式会社)製。日本初の大衆カメラで、ボディ全体がベークライト製。格段に軽くなり、撮影が楽になった。
□ベークライト製 ボックス【実物資料】
1920〜30年頃、イギリス製。この頃、流線型やジグザグ模様など直線と円弧を組み合わせたような「アール・デコ(Art Deco)」が流行し、プラスチック製品にも取り入れられた。
□ベークライト製 アクセサリー【実物資料】
ベークライトはこれまでにない新しく画期的な素材としてもてはやされ、ジュエリーやアクセサリーとしてもブームになった。斬新なデザインと素材感が、特に女性の間で流行した。
□ベークライト製 ブローチ(花)【実物資料】1940〜50年、アメリカ製
□ベークライト製 ブローチ(さくらんぼ)【実物資料】1930年頃、アメリカ?製
□ベークライト製 指輪【実物資料】1930年代製。リングは銀製
□ベークライト製 イヤリング(黒)【実物資料】1930年代、アメリカ製
□ベークライト製 イヤリング(黄)【実物資料】1950年代、イギリス製。クリップ部分は真鍮
□ベークライト製 ボタン【実物資料】1950年代、アメリカ製
(2009.10.08.更新)
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