惑星の過酷な運命

惑星は星の”ミネラル”供給源なのか!?

  太陽系以外で惑星を持つ星の一つHD82943(うみへび座の星です)にリチウム(6Li) が含まれていることがわかりました(太陽系外惑星さがしの現状については こちらもお読みください)。 これはヨーロッパ南天文台(ESO)の4基の8.2m望遠鏡VLTのうちKUEYEN(現地語で「月」という意味です) という望遠鏡で観測したものです。
   水素は1000万度という高温で核融合を起こしヘリウムに変わります(これが太陽などの恒星のエネルギー源です)。 それに対してリチウム6Liは150万度という比較的低い温度で壊れてしまうため、 普通の星には含まれていません。 太陽などの星ができるとき、その中心部分が水素核融合を起こすほど高温になる前、 中心が数百万度で星全体がかき混ぜられているような状態があります。 このとき星を作る材料に含まれていた6Liがみんな壊れてしまうのです。 ですから、もし現在光っている星に6Liがあるならば、それは星ができた後、 星全体がかき混ぜられなくなってから供給されたものと考えられます。

  HD82943の惑星は太陽系とずいぶん違い、木星のような大きな惑星が水星よりも 内側に入り込むような軌道を回っています。 この想像図は Gabi Perez and the IAC による もともと木星のように大きな惑星は中心の星から離れた冷たい場所でつくられるはずですので、 HD82943では、なんらかのメカニズムによって、星の近くまで落ちてきてしまったことが考えられます。
   こうして外側から落ちてきた惑星が、ついには星に取り込まれてしまい、リチウムの供給源になって いるのではないか、というのです。 観測されたリチウムの量は、木星サイズのものなら2個分、Liを比較的多く含む地球型の惑星 なら3つ分ということです。
   惑星はせっかく誕生しても、不運なものは母なる星に取り込まれてしまうようです。

この結果は5月10日付けNATUREに発表されました。
原文は英語ですが ESOのプレスリリースをご覧下さい。

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