プラネタリウムの話題

「宇宙生物を追え!」副読本

 無数に輝く夜空の星。その中には、地球のように生命に満ちあふれた星はあるのでしょうか? 
 生命はどのように誕生したのか、どういう条件の時に生命は誕生するのか、そもそも生命とは何なのか、いまだに謎のままです。
 生命の星とは一体どのようなものなのでしょうか。

あらすじ: 今は未来。地球に一つのいん石が落ちてきた。何の変哲もない小さないん石であったが、科学者に大きな衝撃を与えた。そのいん石の中に明らかに地球外生物の痕跡が見つかったのである。いったいどこから来たのか、太陽系内の天体がくまなく調べられたが、それは太陽系起源のものではなかった。「果てしない宇宙で生命の星を探す」この当てのない探索に一人の賞金稼ぎ(宇宙飛行士)が挑んだ。彼は系外惑星を一つ一つ調べていったが、どれも生命の星ではなかった。そして、長い旅の末に、ようやく生命の星を発見するが、そこは最期の時を迎えようとしていた・・・    

1.生命の星
 生命の存在に関係するものとしては次のような項目が考えられます:温度大気惑星の性質(地面の有無、重力)、中心星の性質(明るさや寿命)、有機物(生命の材料)、磁場(大気を散逸から守る、放射線から生物を守る)、紫外線放射線他の惑星の存在(木星型惑星による小惑星衝突の危険性の軽減)等。

 最初の太陽系外惑星はスイスの天文学者が1995年にぺガスス座に発見しました(51Peg)。それ以来、多数の惑星が発見されていますが、地球のように地面や海があり、生命がいそうな惑星は見つかっていません。

 生命に影響をあたえるであろう上記の項目が、生物の存在に適した星は地球の他にないのでしょうか。地球はこの宇宙で奇跡的な偶然の積み重ねによって生命の星となった『例外』なのでしょうか。
 こうした疑問に答えるためには、地球以外の生命の星、そして地球外生物を見つけ、地球および地球の生命と比較するしかありません。

 その星に生命が存在する場合、次のような顕著な特徴をもつはずです:大気中の酸素分子の存在メタンの存在水の存在紫外線の吸収芳香族有機物の包含岩石中の化石(生物の痕跡)、等。
 したがって、これらの存在を証明することが生命の星探しの方針となります。

2.ハビタブルゾーン
水の星はいたるところにある 生命と液体の水の間には切っても切れない関係があると考えられています。水は?生命の材料となる有機物やミネラルを溶かし、?アミノ酸や高分子の合成の場となり、?有害な紫外線をカットして、生命活動を守ります。そのため、宇宙で液体の水が存在する範囲を「ハビタブルゾーン(生命生存可能領域)」と言います。
 液体の水が存在するためには中心星(太陽)からの距離が大きく影響します。近ければ水は蒸発して失われますし、遠ければ寒くて水は凍りついてしまいます。
 液体の水が存在する範囲「ハビタブルゾーン(生命生存可能領域)」は太陽系の場合、0.97〜1.39天文単位とされてきました。1天文単位は太陽と地球の間の距離で、太陽系の大きさはおよそ100天文単位ですから、ほとんど地球近くだけの細い帯です。

 しかし最近の観測から、ハビタブルゾーン=水の星は宇宙のいたるところに存在することが分かってきました。太陽から遠く離れた場所でも、液体の水が存在しうるのです。また太陽系以外の場所でも、水(少なくとも分子や氷の状態としての水)の存在が知られています。

 では生命もいたるところに存在するのでしょうか?
 太陽系内では木星の衛星エウロパやガニメデ、土星の衛星タイタン等に液体の水が存在するのでは、と考えられており、近い将来、生命探査が行われます。
 もしかしたら地球外生命が見つかるのも、そう遠い日のことではないかもしれません。

3.地球の将来
 地球はこれからもずっと生命の星として存在しつづけるのでしょうか。太陽は徐々に明るくなっており、10億年後には10パーセント明るくなると予想されています。ハビタブルゾーンはそれに伴って外側に移動していき、地球は10億年後にはハビタブルゾーンからはずれてしまいます。
 地球が誕生して46億年。生命が誕生したのは38億年前。多様な多細胞生物が爆発的に出現したのが5億7千万年前です(人類誕生はたった400万年前)。地球生命は30億年間以上を単純な単細胞生物として過ごしてきました。
 そして地球の生命は10億年後には滅びてしまいます。生命の星としての地球の寿命はすでに3/4が過ぎてしまったのです。

参考図書: Horneck, Baumstark-Khan編「Astrobiology - The Quest for the Conditions of Life」(Springer)

※プラネタリウム「宇宙生物を追え!」は2002年11月29日より2003年2月28日まで投影しました。

2002.12.1記

【天文・宇宙】の話題
科学あれこれ
ホームページへ