流れ星がもたらした思いがけない幸運

幸運の流れ星

 流れ星はいつどこに現れるか分からない、一瞬の現象です。
 そのため、流れ星を見ることは「幸運」とされ、その流れ星が消える前に願い事を唱えると、 その願いが叶う、などという言い伝えもあるほどです(「流れ星」と「星」が付いていますが、夜空の星が流れて消えてしまうわけではありません。 宇宙を漂う1mm程度の粒子が地球の大気と衝突して光る現象です。 地上からの高さは100km程度で、宇宙ではなく、大気中での現象と言えます)。

 そんなわけで、流れ星を見るのには肉眼が一番です。 望遠鏡で流れ星を見ようと思っても、よほどの幸運がない限り、 望遠鏡を向けていた時間・方向に流れ星が現れることはないからです。

 ところが、2002年5月12日、そんなありえないような幸運が世界最大級の高性能望遠鏡VLT(南米チリ) に訪れた、というのです。
VLTの前を横切る流れ星(概念図)
 この日、はるか遠くの銀河の超新星を観測していたVLTのスリット(星の光を詳しく調べるための装置) の前を明るい流れ星が横切りました。 時間にして、1万分の5秒ほどの出来事!です。
 研究者らは最初、超新星の観測データがおかしくなったのでは、と混乱しましたが、 すぐに、流れ星の光が紛れ込んだことに気づきました。

 さっそく、流れ星の光を詳しく分析したところ、温度が4600℃!もあることが分かり、 大気との衝突を示す酸素(O)、窒素(N)、窒素分子(N2)の光も観測されたのです。

 「生命(の材料となる炭素化合物)は宇宙から流星によってもたらされたのでは?」 との説もありますが、今回の流れ星では炭素は観測されませんでした。
 この「幸運の流れ星」は生命の起源に対する論争に一石を投じることになりそうです。

原文は英語ですが、ヨーロッパ南天文台VLTのプレスリリースをご覧ください。



※8月12日前後に流れ星が多く流れます(「ペルセウス座流星群」)。 月明かりもなく、今年は最良の条件ですから、晴れていたら空を見上げてみてください。

2004.8.4記(石坂

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