希少元素リチウムはどこから?

リチウムの起源は新星!?

 パソコンの充電池などに使われるリチウムという元素は、私たちの生活でも重要な、そして貴重な資源です。

 水素、ヘリウムについで軽い元素で、138億年前のビッグバンでわずかに(水素の数10億分の1程度)作られたと考えられていますが、 恒星ができる際、星の温度が数百万度になると、水素より先に核反応をおこして壊れてしまいます。
 ですから、リチウムがビッグバンでしか作られなかったとすると、今の宇宙には、もうリチウムが無くなっているはずです。
 ところが、ビッグバンよりずっと後になって生まれた恒星には、ビッグバンで作られた量より多いリチウムが含まれています (だからこそ、私たちもリチウムを資源として使うことができます)。

 そのリチウムの起源は長い間、ナゾでした。

 今回、ヨーロッパ南天文台ESOの研究者らが、「新星」と呼ばれる現象を観測し、リチウムが作られている証拠をつかみました。
 新星は「新しい星」と書きますが、新しく星が生まれているわけではありません。
 芯だけになった恒星の最期の状態「白色わい星」の表面で核反応がおきて、突然明るくなる現象です(※星全体が爆発する超新星とは別の現象です)。

 その新星表面の核反応で、リチウムが作られているようなのです。
 作られるリチウムの量は、太陽の10億分の1程度、とごくわずかなものですが、新星爆発は天の川銀河の中だけでも、数十億個も起きてきました。
 今の宇宙にあるリチウムの量を説明するのに十分です。

 私たちの生活は、星のいとなみ「スターズライフ」によって支えられているのです。 
 
★原文は英語ですがESOのプレスリリースをご覧ください。
★国立天文台すばる望遠鏡も「新星爆発は宇宙のリチウム合成工場だった」ことを観測しています。 詳しい解説が書かれていますので、読んでみてください。

2015. 7.30記(石坂

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