アフタヌーン・レクチャー第1シリーズ

相対論的宇宙論入門〜ビッグバンの正しい間違え方〜【2】


2005年9月16日(金)14:00〜15:30

『惑わされるのはいかに容易であるか、どんなときにでも次になすべきことは何かを知ることはいかに難しいことであるか。』(S.ワインバーグ)

0.宇宙膨張の観測的証拠

 相対論的宇宙論の登場(1917年)当時、アインシュタインは宇宙は"静止"していると考えていた。 しかし、この宇宙は膨張しており、始まり(ビッグバン)があったことが観測的に証明された。
 今回は、宇宙膨張に関する2つの重要な観測事実について紹介する。

1. ハッブルの法則(1929年)「遠くの銀河からの光は距離に応じて赤方偏移している」

(1)天体の距離を測る:天体の距離を測るのは至難の業である。 

年周視差概念図 ’周視差(1838年)…地球の公転に伴い、星の見かけの方角が変わる
 視点が移動すると、近くのものは遠くのもの(背景)に対して動く(人間は2つの目の視界の違いから距離を認識する→立体写真

※この方法は正確だが、測れるのは100パーセクほどまで(1天文単位を1角度秒に見込む距離=1パーセク=3.26光年=約3・1018cm)
 cf.人間の視力は1.0で1角度分(5m離れたランドルト環[C]の1.5mmの隙間を認識できる)


⊆膩藁鸚院1905年)…星の色と本当の明るさには関係がある(ヘルツシュプルング=ラッセル図)

セファイド型変光星(リーウィッド 1908年)…明るさの変化周期と本当の明るさには関係がある(周期が長い方が明るい)

 天体の本当の明るさが判れば、見かけの明るさとの比較で距離がわかる!
 同じ明るさの天体は、近いものほど明るく、遠くのものほど暗く見える。


(2)島宇宙大論争(1920年):"渦巻き星雲"は銀河系の中か、外か!?

 シャプレー「銀河系はあまりに大きいので"渦巻き星雲"は銀河系の中にある
      球状星団の分布から銀河系の大きさは10万光年ぐらいあるらしい

 カーチス 「"渦巻き星雲"は銀河系より100倍も遠いところにある"島宇宙"
       渦巻き星雲に現れる"新星"は銀河系に現れる新星よりはるかに暗い

 この論争は議論がかみ合っていなかったし、世間的にも注目は集めなかった。

            ↓

 1923年決着 E..ハッブルアンドロメダ"星雲"は銀河系よりはるかに遠い90万光年のところにある」(※正確には230万光年であることが後に判明)


(3)銀河の距離と赤方偏移の関係
 1914年スライファー「銀河(渦巻き星雲)の多くが赤方偏移している
 1929年ハッブル「赤方偏移の大きさは銀河の距離に比例する

 ■…電気と磁気が周期的に強弱を繰り返しながら進む波(電磁波)

   振 動 数:1秒間に何回強弱を繰り返すか(周波数:単位ヘルツHz)
   波  長:1回ずつ強弱を迎える間に何m進むか
   光の速度:秒速約30万km=振動数×波長

  • X 線 :波長〜10-9m  振動数〜1017Hz
  • 紫外線 :波長〜10-7m  振動数〜1015Hz
  • 可視光 :波長〜10-6m  振動数〜1014Hz
  • 赤外線 :波長〜10-5m  振動数〜1013Hz
  • 電 波 :波長〜 1 m  振動数〜108 Hz

 ■赤方偏移(z)…光の波長が長くなること(赤くなるわけではない)⇔青方偏移

  赤方偏移を生じる原因
  • ドップラー効果:空間に対して物体が運動しているために生じる効果(1842年:特殊相対論的効果)
  • 重力赤方偏移:重力によって波長(空間)が伸びる効果(一般相対論的効果:ブラックホールはなぜブラックなのか)
  • 宇宙論的赤方偏移:宇宙空間の膨張によって波長が伸びる(宇宙論的効果)

※銀河の赤方偏移は宇宙論的赤方偏移によるものである
  • 銀河から光が届く間に距離がa倍大きくなったとすると、波長もa倍に伸びる
  • 遠い銀河ほど光が届く時間がかかり、その分、距離が伸びて赤方偏移が大きい
  • 宇宙膨張では銀河は空間に対して動いているわけではないのでドップラー効果は生じない
 ※実験: 輪ゴムを指にかけてはじくと波が立つ。 輪ゴムを空間、波を光、とする。 指を開いて輪ゴムを伸ばすと、輪ゴムに立つ波の波長が伸びることを観察できる。 つまり空間が広がれば、そこを伝わる振動(光)の波長が伸びる。


2.宇宙背景放射=ビッグバンの"残り火"

■量子力学の誕生(1920年代)
■中性子発見(チャドウィック1932年):単独の中性子は約10分で陽子に変化
■星のエネルギー源(ベーテ、ワイツゼッカー1938年):原子核反応(核融合)

G.ガモフ(1940年代):ビッグバン宇宙論の生みの親  

 宇宙における元素はどのようにつくられたのか? 
         ↓
 「宇宙初期(10分以内)に10億度以上で高密度な中性子ガス"イーレム"からすべての元素が合成された」(αβγ理論;1948年4月1日)
         ↓
   宇宙は"原始火の玉"から始まった
         ↓
   αβγ理論には間違いが多く、受け入れられなかった

F. ホイル:定常宇宙論の権威
 ガモフの原始火の玉理論を「ビッグバン」(大ぼら)と揶揄(1948年)

ペンジアス&ウィルソン:宇宙背景放射の偶然的発見(1964年)

 宇宙のすべての方向から3Kの電波が来ていた(1978年ノーベル賞)
      ↓
   宇宙背景放射(Cosmic Microwave Background):ビッグバンの直接的証拠



★参考文献:

須藤 靖「宇宙の大構造」(培風館)
岡村定矩「銀河系と銀河宇宙」(東京大学出版会)


※宿 題:

 宇宙の始まり(ビッグバン)について書籍にはどのように書かれているか調べてきてください(立ち読みでいいです)。


相対論的宇宙論入門【3】

石坂千春のページ


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