02/Jun./1999 新設

『鼓銅図録』について







鼓銅図録



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1.『鼓銅図録』(こどうずろく)とは
 『鼓銅図録』は、江戸時代の書物で、銅の精練法を紹介した解説書です。鉱山での鉱石採掘から銅吹所での精練各工程、箱詰め、計量までの作業の様子と、それに用いる道具の図が解説とともに収められています。著者は増田綱。刊行年には諸説ありますが、江戸時代後期の文化年間(1800年代はじめ)というのが有力です。
 『鼓銅図録』は、江戸時代、大阪長堀(現在の大阪市中央区島之内)で銅の精練所「住友銅吹所」を営んでいた住友家が贈答用に作成した書物で、主に銅吹所を訪問した幕府高官や外国人などに贈られたといいます。


2.日本の銅産業と住友長堀銅吹所
 江戸時代の日本は世界有数の銅産出国で、一時期はヨーロッパの銅市場価格を左右するほどの力を持っていました。
 当時、江戸幕府の政策により、各地で採掘された銅は特例を除きすべて大阪へ送られ、大阪の地で精錬されました。精錬所は数箇所ありましたが、中でも最大の規模を持っていたのが住友長堀銅吹所でした。開設は1636(寛永13)年で、ここでは高度な精練技術により純度99.9%という高純度の銅製品が生産されました。中でも、「南蛮吹き」と呼ばれる銀と銅を分離する工程は、当時としては特筆すべきものであったといいます。
 銅吹所は1873(明治6)年に閉鎖されましたが、その跡地は大阪市により1990〜1991年に発掘調査が行なわれ、その全容が明らかになりました。現在では、跡地に住友銀行の建物が建っていますが、敷地内の一角には顕彰碑やパネル展示、発掘で出土した遺構の一部の展示があります。


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