長谷川能三のHP研究報告誌  大阪市立科学館研究報告10,91-93(2000)



新展示「エレクトロニクス・計算機」「デバイスギャラリー」製作報告


長谷川 能三

大阪市立科学館


概要
 展示改装に伴い、4階サイエンスタイムトンネルでの資料展示として20世紀の科学「エレクトロニクス」「計算機」、3階デバイスギャラリーで「おもちゃと科学」「解体テクノロジー」を展示しているので報告する。

1.はじめに
写真1.20世紀の科学「エレクトロニクス」
 1997年11月29日から1998年1月18日まで、「半導体・半世紀〜トランジスタ誕生50年展〜」を行なった。 今回の展示改装で新しく導入した20世紀の科学「エレクトロニクス」および「計算機」、デバイスギャラリーの約半分を占める「解体テクノロジー」はこの企画展での内容を活かし、常設展として再構築したものである。 また、デバイスギャラリーの残り約半分は、「おもちゃと科学」と題し科学的なおもちゃを展示し、その仕組みを簡単に解説した。

2.20世紀の科学「エレクトロニクス」
 ここでは、現在のエレクトロニクスの原点ともいえるトランジスタの発明までを取り扱った。 電子部品としては、トランジスタ以前に真空管があったが、これは炭素フィラメント電球の内部の黒化がきっかけとなっている。
 そこでこの展示では、真空管の歴史としてエジソン電球、二極真空管、三極真空管(オーディオン)を展示している。 また、真空管はラジオ受信機の検波器としての利用がよく知られているが、安価な検波器としては鉱石に針を立てた鉱石検波器も利用された。 そこで、鉱石検波器として利用可能な鉱石も展示している。 そして、1947年にトランジスタが発明されたが、初期のトランジスタ(成長型・合金型)のカバーを取り外したものを展示している。
 
写真2.カバーを取り外した初期のトランジスタ 写真3.ラジコンに使用されているコヒーラ
写真4.20世紀の科学「計算機」
 また、このような真空管・鉱石からトランジスタを検波器や増幅器として、ラジオが大きく変わっていった。 そこでこのコーナーでは、ラジオの変遷として真空管式ポータブルラジオや初期のトランジスタラジオも展示している。 さらに、検波器としては真空管以前にコヒーラが使われており、コヒーラの使用例として戦後作られたラジコンも併せて展示している。

3.20世紀の科学「計算機」
 トランジスタの発明以降、エレクトロニクスの中心は真空管からトランジスタへ移っていき、トランジスタを使用した電子式卓上計算機(電卓)も作られるようになった。 さらに、トランジスタの集積技術が確立されると、電卓はどんどん小さくなっていった。 そこでこのコーナーでは、初期の電卓と現在のカード電卓、さらに電卓以前の計算機(計算道具)として、そろばん、計算尺、手回し式機械計算機、電動式機械計算機を展示している。 ただ、スペースの関係上、電卓の変遷については、一部デバイスギャラリーに展示した。

4.デバイスギャラリー「おもちゃと科学」
 ここでは、物理現象を利用したおもちゃを展示し、その仕組みを簡単に紹介している。 主な展示品は、こま、ブーメラン、やじろべえ、バランスボール、ポンポン船、セルトなどである。
 なお、この展示については、学芸員実習生の実習としてキャプションの製作やレイアウト等を行なってもらい、7月末〜9月末の間、1階に展示していた。 今回の3階デバイスギャラリーへの移設に際し、一部追加・修正等を行なったが、ほぼ実習のまま展示している。
 
写真5.展示場3階「デバイスギャラリー」 写真6.デバイスギャラリー「おもちゃと科学」より

5.デバイスギャラリー「解体テクノロジー」
写真7.デバイスギャラリー「解体テクノロジー」より
 ここでは、さまざまな機器を解体することにより、その中に潜むテクノロジーを見ることができるようにしている。 主な展示品は、「デジタルビデオカメラの製作工程」「電卓の変遷」「ノートパソコン」などである。
 なお、デバイスギャラリーはこの2つの内容に固定されたものではなく、これからもいろいろと内容を変えていく予定である。