長谷川能三のHP研究報告誌  大阪市立科学館研究報告11,61-63(2001)



第2次展示改装、その後


長谷川 能三

大阪市立科学館


概要
 1999年10月に行なった第2次改装によって導入した展示の内、特に関わりが深かった展示について、その後の経過報告をする。

1.真空落下
写真1.真空ポンプのエアフィルター
 落下の速さを比較するためにサイコロと羽を用いているが、羽の傷みが激しく、頻繁に取り替える必要があった。 羽の傷みが激しい原因は、ほぼ真空で落下させた場合、羽がわずかに先に落ちることもあり、その上にサイコロが落ちてきたときの衝撃で痛んでいるようである。 そこで、木製で角が丸く加工されたサイコロを用いたりもしたが、今度はサイコロが痛んでしまった。 また、非常に軽い羽を用いた場合には、空気中での羽の落下が非常にゆっくりなため、羽が排気口の近くにある時に排気されると、羽が排気口に吸い込まれるというトラブルもあった。 そこで、現在では羽を模した紙で代用している。
 また、真空ポンプの排気管から、少しずつオイルがミストとなって漏れるということがおこった。 そもそも排気中には多量のオイルミストが混ざっており、このオイルミストを取り除くためのフィルターが取りつけられている。 このフィルターを清掃していなかったのが原因であるが、このフィルターの役目、清掃の頻度や方法に関する説明がもともとなかったのが原因であった。

2.振り子
写真2.ふしぎな振り子
 楽しい科学実験や科学教室の題材としてきた「ふしぎな振り子」を展示として振り子の展示に加えた。 この振り子は、Y字型に結んだひもを斜めに取り付け、おもりをぶら下げたもので、前後に振ってもしばらくすると左右に揺れるようになったりする振り子である。 これに伴い、現在の所、実体振り子の展示をはずしている。
 また、おもりの重さが違う振り子を、長さが違う振り子に改造できるように部品の製作を行なった。 今後も、来館者の反応を見ながら、振り子の展示を改良していく予定である。

3.虹スクリーン
 スクリーンそのものは何もトラブルはないが、手持ちライトがなかなかうまくいっていない。 設計時に、スイッチは故障の原因となりやすいため、手持ちライトにスイッチを付けずにライトはついたままにしておきたがったが、熱がこもることが心配と言うことで、LED(発光ダイオード)を光源とした。 しかし、LEDではやや光量不足の感もあり、またLEDそのものは電球のように球切れすることはないが、リード線部分が弱く、断線してしまう等トラブルに見舞われた。
 そこで、テスト的に手持ちライトを改造して明るめの豆電球を取りつけたところ、虹はよく見えるようになった。 また、熱の問題もなかった。 しかし、簡単な改造だけでは耐久性がなく、すぐに故障してしまった。 そこで、豆電球を用いた耐久性のある手持ちライトに変えることを予定している。

4.静電気マシン
写真3.静電気マシン
 展示改装後半年間は非常に調子よく動作していた静電気マシンであるが、ある時から非常に帯電しにくくなってしまった。 ライデン瓶の下から漏電してしまっている可能性も考えられてので、ライデン瓶の下にゴムシートを敷き、什器底面から1cm程度離すことによって、ある程度漏電を防ぐことができた。 しかし、根本的な原因は別にあるのか、展示場の朝の点検では静電気が発生するが、昼間、全く静電気が起こらないといったことも多かった。 しかし、いろいろ検討したところ、どうやら梅雨の時期の湿気が原因のようであった。 そこで、展示什器内に乾燥剤を入れたり、背面の扉の周囲をテープで目張りするなどして、湿気を防いだところ、順調に動くようになった。
 また、静電気マシンの本体は、島津理化学機器の既製品に必要最低限の改造を行なったものである。 改造したとはいえ、既製品としては予想以上の耐久性があり、使用頻度の高さの割りに、比較的故障が少なかったと思われる。 また、既製品を利用したことで、故障時の部品の補充や交換が容易になったが、実際には部品の補充・交換の必要も少なかった。 しかし、残念ながら2月末に軸まわりのガタのため、修理が必要となり、その他部品取り寄せにも手間取り、長期調整中となっている。

5.その他(ハンドル)
写真4.従来のハンドルと(上)
     丸い形状のハンドル(下)
 第2次展示改装において、4階サイエンスタイムトンネルに「手回しクーラー」「静電気マシン」「磁力線を見よう」、3階に「回転力発電」「水力発電」「原子燃料サイクル」「電力供給シミュレーション」というハンドルのついた展示を新たに7点導入した。 ハンドルがついた展示は従来からもあったが、展示改装後に子どもがハンドルの先に顔をぶつけるというトラブルがあった。 大事には至らなかったようであるが、今後このようなトラブルが起きにくくなるよう、従来からの展示を含め、ハンドルを丸い形状のものに変更した。 ただ、「手回しクーラー」「手回し発電」「エネルギーと電力」の3点については、ハンドルの取り付け方法やサイズが大きく異なるため、現在の所、ハンドルはそのままである。 また、回転力発電については、小型の丸いハンドルでは非常に回しづらい。 これらについては、今後もハンドルの形状を検討していきたい。
 尚、従来からあったハンドルの付いた展示は、4階「遠心力(曲がる水面)」「じ・し・ゃ・く(1階から移設)」、3階「エネルギーと電力」、1階「鳥をつかまえよう」「ニュートンの7色盤」「ベンハムの円盤」「メカニズム」である。