長谷川能三のHP研究報告誌  大阪市立科学館研究報告11,79-81(2001)



展示パネルの移設


長谷川 能三 ・ 岳川 有紀子

大阪市立科学館


概要
 1999年10月の第2次展示改装において、展示の操作方法を解説するパネルや展示内容を解説パネルが利用しやすいような工夫をこらした。 しかしながら、実際には十分には活用されておらず、これを改善するために、移設等を行なったので報告する。

1.第2次展示改装に際して
 これまでの開館当初の展示や1次改装の経験をふまえ、第2次展示改装の特に4階サイエンスタイムトンネルのコーナーでは、展示装置の操作方法を解説する「操作パネル」や展示内容・関連事項を解説する「解説パネル」について、以下のような点を工夫した。
  • 操作パネルは、直感的にわかりやすいようにイラストを多用し、文字を少なくする
  • 必要に応じて、スイッチやハンドルのそばに補助的な小型の操作パネルを追加する
  • 解説パネルは、来館者の段階に応じて簡単な解説から詳しい解説まで用意する
  • スペースを有効に活用するため、また最初から文字が多いと読む気がしないということから、解説パネルはシートめくり方式にする
  • シートめくり方式の解説パネルは、内容の追加・変更・修正が容易にできるように、カラー印刷したものを、いわゆるパウチして使用
このシートめくり方式の解説パネル(通称「パラパラ本」)については、4ページ立てとし、1ページ目はサイエンスタイムトンネルのテーマに合わせてなるべく歴史的な写真などを使った表紙に、そして2〜4ページ目で展示内容の解説や関連した内容を取り扱うこととした。 本文は、2ページ目は大きな文字で簡単な内容に、3ページ目、4ページ目と進むに連れだんだん小さな文字で詳しくという形にした。 また、このようなシートめくり方式の場合、開いたまま立ち去る人もいるかもしれないので、手を離せば自然に元に戻るようにした。
 さらに、あまり費用のかかるような展示解説パネルでは本末転倒であるので、一部の展示解説パネルは第2次改装前に3階にあったものを流用し、表の面と裏面を、それぞれ別の展示のパネルとして使用した。 残りについては新規作成したが、やはり多くのパネルは表の面と裏面で2つの展示のパネルとして使用した。

2.展示パネルの評価
(a)移設前
(b)移設後
写真1.パネル移設の例
 このように、いろいろと考えて作った展示パネルであったが、来館者にはあまり利用されていないようであった。 これは、2つの展示に対して1つの展示パネルを使用したことにより、展示と展示パネルが離れてしまったことが大きな原因ではないかと考えられた。
 また、展示評価委員会や友の会会員から、新展示についていろいろとご意見をいただいた。 展示そのものなども含め、評価委員会の報告については別掲のとおりであるが、展示パネルについては、主に以下のような点を指摘していただいた。
  • 展示パネルと展示が離れているため、パネルがあることに気付きにくい
  • パラパラ本の表紙デザインはかっこいいのであるが、表紙だけで難しそうな印象を受けてしまう、もしくは、解説であることに気付かない
  • パラパラ本を読むときに、めくったシートを手で押さえているのに疲れるため、読みづらい。

3.展示パネルの改修・移設
 指摘をいただいた点について、まず、パラパラ本の表紙については、すぐに取り外してみた。 はずしてみると、確かに文字の大きな簡単な解説文が前面に出て、親しみが持ちやすくなったように思われる。
 展示と展示パネルが離れている点については、2つの展示に対して1つの解説パネルを使用していたことから、移動するだけでは解説パネルが不足することになる。 またフロア全体に関わり、費用もかかることから、すぐにというわけにはいかなかった。
 しかし、スイッチの近くの小型の操作パネルを活かす、展示本体にパラパラ本を取りつける、既製品のパネルボードを利用するといったことを検討した結果、一部のパラパラ本を除いて展示の近くに展示パネルを移設することが可能となった。 そこで、休館日の2月19日に見取り図のとおり移設を行なった。 さらに、この移設で設置できなくなったパラパラ本については、あらためて台を追加設置した。
 
写真2.パラパラ本取り付け金具
交換前(左)と交換後のU字ボルト(右)
 また、新たに製作したパラパラ本の台や展示本体にパラパラ本を取りつけるにあたっては、従来の金具(手を離せば元に戻るが、手で押さえるのに疲れる)をやめてU字型ボルトを使用し、さらに横開きにすることで、手を離しても読むことができるようにした。 このため、パラパラ本が開いた状態のままで放っておかれることもあるが、支障をきたすほどではなかった。

4.考察
 今回の移設によって、来館者の活用度が上がったかどうか、正式な調査は行なっていないが、解説を読みたいという来館者に解説があることに気付いてもらいやすくなったと思われる。 展示パネルの内容や位置などをよりよくするために、今後も来館者の意見や様子から、柔軟に対応していきたいと考えている。