長谷川能三のHP研究報告誌  大阪市立科学館研究報告11,115-(2001)



科学教室「電池のいらない簡単ラジオ」実施報告


長谷川 能三

大阪市立科学館


概要
 これまでにも電磁波に関する学習とゲルマニウムラジオの製作を目的とした教室を数度行なってきたが、今回さらにゲルマニウムラジオを改良し、科学教室を行なったので報告する。

1.はじめに
写真1.完成したゲルマニウムラジオ
 ラジオ放送を聞くことができるのは、電波によって音声信号が送られてきているからであるが、電波(電磁波)は信号を伝えているだけではなく、エネルギーも伝えている。 現在のラジオは電池などを使うために電磁波のエネルギーを意識することがないが、電源不要の鉱石ラジオやゲルマニウムラジオでは、電磁波にエネルギーがあることを実感することができる。 そこで今回の科学教室では、ゲルマニウムラジオを通して電磁波について理解を深めることを目的とした。 また、ゲルマニウムラジオの製作を通じて、電気回路や電子部品に対する興味を持ってもらうことも目的とした。

2.実施日時・参加者数
 2001年3月29日(木)14時〜16時参加31名
 30日(金)14時〜16時参加30名

3.内容
(1) 電池で音を出す
(2) 連続音を出す
(3) アンテナによる電波の受信
 (1)〜(3)の内容については、前回の科学教室同じであるので、研究報告No.9,127(1999)参照していただきたい。
(4) ラジオの製作
写真2.教室のようす
 前回の科学教室では、バネを用いた端子を作り、部品をこのバネに挟み込むことでハンダ付けをしないですむようにした。 これにより、ハンダ付けに比べるとかなり当日の手間が省けたと思われるが、一方で、部品がバネからはずれてしまうといった不具合もあった。 そこで今回は、端子はネジのみにして、そこに部品のリード線を束ねて結線バンドで固定する方法をとった。 しかし、実際に教室を行なってみると、参加者にとってはリード線を束ねながら結線バンドで固定するのが難しく、また、ペンチでしっかり締め付けないとはずれてしまうといったこともあり、あまりいい方法とはいえなかった。
 また、前回はフェライトコアが安価で手に入ったので、コイルのインピーダンスの調節による同調方式にしたが、今回同じフェライトコアが手に入らなかった。 そこで、今回はインピーダンスは固定とし、2枚のアルミ箔とビニール袋をコンデンサーにし、コンデンサーの容量の調節による同調方式とした。 このとき、本来アースする側(アンテナのつながっていない側)の端子につながっているアルミ箔を直接手で押さえることにより、コンデンサーの容量調節と人体によるアースを簡単にできるようにした。
 尚、ここ数年、いくつかの部品が少しずつ様変わりしている。 これまで使用していたクリスタルイヤホンは少なくなり、外観はそのままでセラミックイヤホンというものが代替品となってきている。 今回このセラミックイヤホンを使用したが、クリスタルイヤホン同様、ゲルマニウムラジオの音を聞くことができる。 また、ゲルマニウムダイオードも今回1S73Aという型番のものを使用した。 さらに、以前はエナメルで被覆したエナメル線がよく使われていたが、現在エナメル線はなく、ホルム線やポリウレタン線と呼ばれるものに替わっている。 しかし、これらは被覆がほとんど透明で、紙ヤスリで被覆を剥がした部分とそうでない部分の区別がつきにくく、注意が必要である。

(5) その他
 アンテナは、長さ25mほどの被覆線を建物から2mくらい離して張り、末端を分岐して参加者で供用した。 参加者には、自宅でのアンテナ用に1m程度の被覆線を配布したが、大阪ではAMラジオの送信所が高石市や堺市などにあり、送信所から遠い北摂地域などでは比較的電波が弱く、これだけでは十分に聞くことはできない。 そこで、このアンテナ線を電話機のコード(電話線)に巻き付ける方法を紹介した。 ただ、1999年度に館内の電話システムを変更したためか、館内の有線電話のコードに巻き付けてもアンテナとしては機能しなかった。
 また、これを機会に電子工作に興味を持ってもらえたらと思い、電子部品や電子工作キットの入手先を紹介した。
4.テキスト
 当日配布したテキストには作り方は記載せず、実験結果を書き込めるようにした。このテキストを次ページに掲載する。

5.考察
 今回の教室では、フェライトコアが入手できなかったことから、アルミ箔による可変コンデンサーとしたが、結果的に身近な材料でできたことには意義があったと思われる。いっそのこと、ゲルマニウムダイオードを使用せずに、鉱石ラジオにチャレンジするのもいいかもしれない。


[参考文献]
長谷川 能三
  『科学教室「だれでも作れるかんたんラジオ」実施報告』 大阪市立科学館研究報告9,127 (1999)