サイエンスショー「振り子のふしぎ」実施報告
長谷川 能三
大阪市立科学館
概要
振り子は、一定の周期で同じ動きを繰り返す、おもりの位置を変えることなどによって周期をコントロールすることができるといったことから、振り子時計などに利用されてきた。
サイエンスショー「振り子のふしぎ」では、振り子の等時性や共振など振り子について様々な実験を行なった。以下に実験内容等を報告する。
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1.実施期間
2001年11月30日〜2002年2月28日
1日3回実施。ただし、土曜日・日曜日・祝日・学校休業期間については、1日4回実施。
2.実験内容
サイエンスショーでは、主に以下のような実験を行なった。ただし、時間的な制約やお客さんの層、演示担当者によって、演示する実験の選択や順序は異なる。
- (1) 振り子とは
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写真1.振り子時計 | |
写真2.強制振動(1) |
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一昔前までは、振り子といえば振り子時計が身近にあったが、最近ではクォーツ時計が一般的となり、振り子時計は急速に姿を消してしまっている。そこで、実際にサイエンスショーの中で振り子時計を見せると、大人では懐かしがる人が多かった。子どもでも、実際に自分の家や親戚の家などにあるという人が意外と多かったが、やはり全く知らない人もいた。
また、振り子時計の振り子以外でも、棒や紐の先に適当なおもりをつければ振り子になることを紹介した。
- (2) 強制振動(1)
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一本の棒に長さが違う3つの振り子をぶら下げ、その中の一つだけが勝手に動き出す手品のような実験。実際には、どれかひとつの振り子の周期にあわせて、微妙に棒を揺らしている。
- (3) 強制振動(2)
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長いロープの先に、水をいっぱい入れたバケツをぶら下げる。紐の先に弱い磁石を結びつけて、
磁石をバケツにくっつけて紐を引っ張ってバケツを揺らす。
磁石が弱いために、単に紐を引っ張っただけではバケツはほとんど揺れなくて、紐を引っ張る周期をバケツの揺れる周期に合わせると大きく揺れる。
- (4) 強制振動(3)
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サイエンスショースペースの天井(つり天井)のすぐ下に、長さ約4mの棒を紐で横向きにつるす。この棒に長さの違う5つの振り子と人が引っ張るための紐1本をつり下げる。
紐を周期的に引っ張ることによって、どれかひとつの振り子だけを大きく揺らすことができる。
- (5) 共振
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写真3.共振ブランコ |
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(4)の実験装置の人が引っ張るための紐にもおもりをぶら下げ、6つ目の振り子にする。すると、この振り子を揺らすことによって、周期の合った振り子だけが揺れ始める。また、この2つの振り子の間で、エネルギーが行き来して、振幅が変化する。
さらに、6つ目の振り子に複数の振り子の周期を合わせると、1対多数の間でも共振が起こることを見せる。また、紐の長さが同じであれば、おもりが重くても周期は同じであるので、同じように共振が起こることを見せる。
- (6) 共振ブランコ
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ふたつのブランコの間で揺れが伝わるようにしておく。片方だけを揺らすと、もう一方が揺れ初め、最初に揺らした方はだんだん揺れが小さくなる。しばらくすると、また揺れが最初に揺らした方のブランコに戻ってきて、これを繰り返す。
- (7) 音叉の共鳴
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振り子の共振と同じようなことが、ふたつの音叉の間にも起こり、同じ振動数の音叉の間では共鳴が起こる。しかし、片方の音叉におもりをつけて振動数を変えると、共鳴は起こらなくなる。
また、振動数を一致させれば、人間の声で音叉を振動させることもできる。
- (8) ブラックバーン振り子
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写真4.ブラックバーン振り子による |
リサージュ図形 |
Y字型に紐を結んだ振り子は、前後と左右の揺れの周期が異なるため、リサージュ図形を描いて揺れる。このような振り子をブラックバーンの振り子という。
ここでは、強制振動で使った水の入ったバケツの振り子をブラックバーン振り子にした。振り子の振れる方向が徐々に変化して、バケツがだんだん自分の方へ揺れるようになることで、少しスリルも味わっていただいた。
- (9) カオス振り子
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振り子ひとつだけでは単調な動きであるが、振り子をふたつつなぐだけで、その動きは非常に複雑なカオスとなる。そこで、かなづちを柄の先で回転軸に固定した振り子に、もうひとつブラシを回転軸を介して取り付け、カオス振り子にした。
3.考察
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写真5.カオス振り子 |
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今回のサイエンスショーの構想段階では、バネを用いた振り子も考えていた。さらに、バネ振り子と糸振り子を組み合わせたウィルバーフォース振り子など、興味深い実験も多い。しかし、糸振り子の場合にはおもりの重さは振り子の周期に関係しないのに対し、バネ振り子の場合にはおもりの重さで周期が変わるなどといったことが見学者の混乱につながりそうであり、サイエンスショーの演示時間等を考え、結局バネ振り子はいっさい出さなかった。
ただし、振り子というのはそもそも単調な動きであるので、お客さんの興味を引いたり、実験にリズムをつけるのに、共振ブランコやブラックバーンの振り子、カオス振り子などが役立った。
また、手元の小さな実験では、見えにくかったり迫力不足だったりするため、サイエンスショーのスペースをフルに活用して装置を設置した。このため、天井からつるした振り子など、実験のたびに片づけられないものもあり、紐を上へ引き上げたり、ブランコは取り付け枠だけを床に固定して、鎖などは片づけるなど、演示時間以外にいたずらされないようにすることに気を使った。
最近では、サイエンスショーで行なっているような実験がテレビ番組などでも紹介されることが多く、実験の結果をあらかじめお客さんに知られていて、やりにくいときもある。しかしながら、例えば今回の実験の中で、3つの長さの違う振り子の内ひとつだけを手品のように動かす実験は、当館でも楽しい科学実験で取り扱うなど、あちこちで見られる実験であるが、3ヶ月間、この実験を知っている見学者は少ないようであった。高視聴率のテレビ番組で取り上げられるかどうかの差は大きいようである。
それから、約20分の演示実験で、最後に「あっ」という実験がないと尻すぼみになってしまうことがある。今回の実験では、あまり派手ではないものの、カオス振り子の意外な動きがお客さんには好評だったようで、実験の最後のおまけの実験として適していた。
[参考文献]
Paul Doherty,Don Rathjen 著 横浜物理サークル(YPC) 訳
『実験たいけんブック3ビンの中に竜巻:力と運動』 (2000)丸善
後藤 道夫・盛口 襄・米村 傳治郎 著
『おもしろ理科実験集』 (1996)シーエムシー
井上 護 編集
『NHKやってみようなんでも実験vol.1−自由研究のヒントがいっぱい−』(1996)日本放送出版協会
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