長谷川能三のHP研究報告誌  大阪市立科学館研究報告13,137-(2003)



夏休み自由研究「紙のパワーをひきだそう」実施報告


長谷川 能三

大阪市立科学館


概要
 今年度の夏休みの教室では、夏休み自由研究と銘打って3つのテーマに関する教室とコンテストを行なった。 その中の一つ、「紙のパワーをひきだそう」を担当したので、ここに報告する。

1.はじめに
 今年度の夏休み中の科学教室は、夏休み自由研究と銘打って、教室が終わった後も家に帰ってから続けられるようなテーマ・流れ・指導方法にした。
 テーマとしては、発想や努力によって結果に進歩が得られるもの、簡単にいろいろなパターンを試すことが出来るものとして「紙のパワーを引き出そう」というテーマを選んだ。 このテーマは、青少年のための科学の祭典において、大阪府立四条畷高等学校の大塚信之先生が行なわれていたもので、今回、小・中学生の夏休みの自由研究のテーマとしてできるように、一部改良を加えて実施した。

2.実施日時・参加者数
 2003年7月25日(木) 14時〜16時 参加31名

3.内容
 もともとの「紙のパワーを引き出そう」では、B4のざら紙2枚以内とセロハンテープ30cm以内を使って高さ10cm以上の台を作り、その上に鉄板を重ねて載せていき、何kgまでのせられるかを競うというものであった。
 今回、小・中学生をターゲットとした夏休みの自由研究ということで、家庭で簡単に手に入るものを使い、安全に実験できるようにした。 具体的には、用紙は新聞紙を使い、おもりは水を入れたペットボトルを使うように提案した。 ペットボトルの場合、500ミリリットルや2リットルのペットボトルを組み合わせることで、500g単位でおもりを増やすことができ、おもりが崩れた場合にも安全である。 また、対象が小・中学生であることから、製作を容易にするために、セロハンテープの使用制限を緩くした。
 教室では、まず身のまわりのいろいろなもので形によって強度を増しているものをあらかじめ用意し、これらの形を観察してもらった。 具体的には、紙コップ(縁の部分は紙を丸めて強くしてある)・プラスチック製のハンガー(断面がH字型になっている)・ペットボトル(凸凹がたくさんある)などで、これらのものを入れたプラスチックの容器の底も強度を増す工夫がなされていた。
 
写真1.紙コップやプラスチックハンガーの断面 写真2.H字鋼や筋交いの例
写真3.四角柱にした新聞紙
 また、H字鋼や筋交い(すじかい)を入れてある例をビデオで撮影したものを流し解説した。
 次に、ペラペラな新聞紙でも「く」の字型に折り曲げたり、円筒や四角柱などの形にすることにより、自立するようになり、さらに少しくらいならおもりをのせられることを試していった。
 ここで、今回のルールを説明し、いろいろな形の台を自由に作ってもらった。 ある程度丈夫な台ができると参加者全員の前でおもりをのせていき、どのくらい丈夫なものができたかを確かめた。 また、どのような点に工夫をこらしたかを聞いてみた。 最初は500ミリリットルのペットボトルものせられなかったが、2リットルのペットボトルをのせることができる台を(構造は見せずに)見本として見せたが、時間内にこれを上回る記録を出した参加者もいた。 参加者によって、次から次へどんどん台を作っていく人もいれば、逆に1種類の台に時間をかけて作る人もいた。
 こうして時間内にいくつもの台を作ったが、家に帰ってからも研究を続けるように呼びかけた。

4.ルール
 ひとつの台を作るのに使う材料は、
 ・ 新聞紙1ページ分(約40cm×55cm)
 ・ セロハンテープ(幅1〜2cmのもの) 長さ1m
までとする。 新聞紙を切ったりセロハンテープで貼り合わせたりして、高さ10cm以上の台を作る。
 台の上に板をのせ、その上に水を入れたペットボトルをのせていく。 台がつぶれる前にのせることができたおもりの質量で、台の丈夫さを競う。
 おもりをのせることで台がつぶれてしまうため、コンテストでは同じ形状の台を2つ作って応募することとした。

5.テキスト
 教室の当日に配布したテキストを次ページに掲載する。
 テキストは教室の時間内に観察して気がついた点などを書き込む形式とした。

6.考察
 今回選んだテーマは、自由研究として続けていく上で目標がはっきりしているという点はよかったが、他の2テーマと比べ地味な内容であった。 そのため、教室の参加申し込み数やコンテスト応募件数は他の2テーマより少なかったが、その反面、マスコミ関係に取り上げていただいたりもした。
 今後も、その日だけで完結する科学教室ではなく、家に帰ってからも続けられるこのような夏休み自由研究が有効であると思われるが、どのようなテーマにするかが重要であると思われる。
 最後になりましたが、テーマの使用を許可していただき、またアドバイスをいただいた大塚信之先生に紙面をお借りして感謝申し上げます。


[参考文献]
大塚 信之
  『紙のパワーを引き出そう』 第5回青少年のための科学の祭典大阪大会ガイドブック,39 (1997)