長谷川能三のHP研究報告誌  大阪市立科学館研究報告15,167-174(2005)



夏休み自由研究「アニメを作ろう」実施報告


長谷川 能三

大阪市立科学館


概要
 2004年の夏休みの教室では、夏休み自由研究と銘打って3つのテーマに関する教室を行い、その中の一つ、「アニメを作ろう」を担当した。 教室の内容等について、ここで報告する。

1.はじめに
 2004年度夏休み自由研究「アニメを作ろう」では、1日目はジュニア科学クラブ会員専用、2日目と3日目は一般向けに行なった。 そこで、1日目は少し時間の配分を変更し、2日目・3日目で見本となるような装置の製作を行なうなど、2日目・3日目とは少し内容を変えて行なった。
 また、2003年には夏休み後半に解説教室を行なったが、参加者が少なかったため、今回は行なわなかった。

2.実施日時・参加者数
 2004年8月4日(水) 14時〜15時30分 参加3名
  5日(木) 14時〜15時30分 参加33名
  6日(金) 14時〜15時30分 参加28名
※8月4日は、ジュニア科学クラブ会員専用

3.内容
 まず最初に、参加者に漫画とアニメーションの違いを考えてもらい、動きのあるアニメーションがどのようにできてきたのか、初期のアニメーション装置を作っていった。
 
3-1.ソーマトロープ
 1枚の紙の表と裏に少しだけ違った絵を描き、紐を付けて回転させることで、2つの絵を素早く交互に見せる装置である。 今回は、紙に柄を付け、うちわのような形にし、柄を手のひらで回転させるようにした。  絵が2種類しかないため、まだアニメーションと呼べるものではないが、残像現象や補間という視覚の性質をうまく利用したものであり、アニメーションの発明へとつながる重要なものである。
 
3-2.フェナキストスコープ
 周に沿ってたくさんの絵を描いた円盤と、スリットの入った円盤を軸でつなぎ、同時に回転させることで動きを見せることができる装置である。 これについては、あらかじめ製作しておいた見本で、本当に動いて見えるかどうかを確認した。
写真1.大型フェナキストスコープ
 参加者は、鏡を使うことで円盤が1枚で済むタイプのものを作るようにした。 但し、最初からたくさんの絵を描いたり円周上にたくさんのスリットを切り取るのは手間と時間がかなりかかるため、動機付けとなる最初の工作は、あらかじめ幾何学的な絵を入れ、スリットもカットしたものを配布して行なった。
 このような単純なものでも、実際に絵が動いて見えると興味が増すようで、家に帰ってから自分でできるように、いろいろなパターンの台紙を配布した。
 しかし、フェナキストスコープは、動きを複雑にするために絵の枚数を増やそうとすると、どうしても1枚の絵のサイズが小さくなってしまう。 そこで、1日目にジュニア科学クラブの会員とともに、木の板を使って直径約80cmの大型フェナキストスコープを製作した。 板に円やスリットの位置の下書きは会員にしてもらい、私がジグソーでカットしている間に、貼り付ける絵を描いてもらった。 この大型フェナキストスコープは、自由研究の例として2日目・3日目の参加者に見てもらった。
 
3-3.ゾートロープ
 初期のアニメーション装置のもうひとつのタイプとして、ゾートロープも製作した。 これは上部にスリットを入れた円筒を回転させるもので、回転部分さえ作ることができれば、円盤に比べて円筒の方が製作が容易である。
 今回、回転部分には、安価なCD-Rの中央の穴の部分に、ビー玉をセロハンテープで固定して作った。 また、ゾートロープについては、スリット部を含め、台紙のカットも参加者が行ない、絵も各自で描くようにした。

 このように、少し絵を動かすだけでもこれだけの手間がかかることから、ふだん何気なく見ているアニメーション番組がどれほどすごいのかを、参加者に考えてもらった。 またアニメーションだけでなく、テレビや映画で映像が動いているしくみも、アニメーションと同じであることも伝えた。  また、フェナキストスコープやゾートロープで、スリットの数と絵の数が違うとどうなるのか?スリットの幅は広い方がいいのか狭い方がいいのか?絵の枚数を多くするにはどのような工夫をすればいいのか?など、自由研究を行なう上でのヒントを出した。

4.その他
 アニメーションの製作には、どうしても手間がかかるため、今回の教室では、なるべく興味を深めることに主眼を置き、手間のかかる部分は家に帰ってからじっくりと取り組むことができるように、心がけた。

5.テキスト・台紙
 教室の当日に配布したテキストや、当日使用した台紙、帰ってからも続きができるように配布した台紙(スリットの数が違うもの、絵を描く部分にフレームがあるもの、ないもの)を、次ページ以降に掲載する。 ただし、テキストは教室の進め方に沿って4ページずつ配布した。 また、テキストには、教室の時間内に観察して気がついた点などを書き込むスペースもあけておいた。