炭素(C) その1
 
  何年か前。東京上野の国立科学博物館で「ダイヤモンド展」という特別展がありました。もともと、鉱物や、宝石も展示している博物館ですから、ダイヤモンド展もありだなと、覗いたのです。すると、普通なら来ないであろう、マダムたちがわんさと集まっていました。たまたま見学した日がそうだったのかもしれませんが、男性は本当に数えられるほど。ダイヤモンドが魅力的なのはわかりますが、熱気と羨望と嫉妬と入り交ざったふしぎな雰囲気があたりを支配していました。今回は、ダイヤモンドを構成する炭素(C)についてのお話です。

 人類が初めて触れた単体の元素は、炭素だったと考えられます。物を燃やしたときの炭やすすがあちこちにあったはずですから。そして、元素名が「炭素」で作られる物質はダイヤ、黒鉛、すす、などがあります。つまり、炭素は、1つの元素から作られていても、性質の違う物質を作れるのです。古くから知られていたこれらを構成する元素が同じものである、とわかるようになってきたのは、18世紀の後半のことでした。

     ダイヤモンドの指輪…

  さて、炭素そのものの性質は、原子量が12.01、密度がダイヤで約3.5g/cm3、黒鉛で約2.3g/cm3、融点が4100℃、沸点が4827℃となっています。 そして、Cはどこにでも存在します。有機物を作る根幹の物質であるため、アミノ酸、たんぱく質、糖などとして生物や植物の中に存在するし、空気中にも有機物ではありませんがCO2という形で約0.03%存在します。 しかし、人目を引くといえばCの単体ダイヤでしょう。産出地域が限られ、量も少ない、手を加えたときの輝きがとてもまばゆい…。ダイヤは、ひとつのCに4つのCが共有結合して大きな結晶を作ります。この結合の仕方が、へき開をさまざまな方向に取れる原因になっています。ですから、ダイヤモンドも力をかけると、へき開面で割れることもあります。Cについては語ることがたくさんあるので、次回もCの話にいたしましょう。 

(うちゅう2002年8月号より)

炭素その2へ


周期表トップへ