炭素(C) その2
 
  ドラえもんの道具に、「もしもボックス」というものがありました。それは、「もしも何々の世界だったら」というとその世界が実現してしまう道具でした。その中の電話で「もし炭素(C)がなかったら…。」と言ったらどうなると思います?
きっと、生命がなくなってしまいます。 60兆以上あるといわれる人間の細胞、それらを作るたんぱく質、そして遺伝情報を伝える塩基類すべてにCが含まれています。では、C以外のもので、生命は作れたでしょうか?Cと同じように他の元素と結合しそうなものとして、周期表のCのすぐ下にあるケイ素があります。地球上にはケイ素が非常に多いのですが、果たして生命体を作りえたかどうか…。

  さて、化学の世界では、物質を分けるとき無機物、有機物と区別することがあります。無機物にはCがなく、有機物は、Cが含むというのがこの区別のポイントでした。そして、有機物は生命体から作られるもので、無機物からはできないと考えられていました。 ところが、1807年にウェーラーが無機物のシアン酸アンモニウムから、有機物である尿素を合成することに成功しました。これにより、有機物は生命体以外からも作られることがわかりました。

        展示場にあるフラーレン

  Cの最近の話題としては、1996年に、フラーレン(C60個でできたサッカーボール模様状)の発見者ハロルド・クロトーらがノーベル賞を受賞しました。惜しむらくは、現在、豊橋技術科学大学の大沢先生が、1970年に日本語のみの論文でC60の存在を予言していたことです。日本語のため残念ながら、外国にまで情報が渡らず、ノーベル賞受賞者にはなりませんでした。科学館の 展示場4階には、その大沢先生からいただいたフラーレンが置いてあります。 現在、他にもCで作るカーボンナノチューブというものがさまざまな分野に応用できそうで、現在研究が進められています。これは、1991年に当時NECにいた飯島澄男氏が発見しました。発見直後、講演会で話を聴いたことがありますが、ナノスケールのCのチューブができたということに非常に驚いたことがあります。

(うちゅう2002年9月号より)

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