Csの項目で、ブンゼンとキルヒホッフが分光器を使ってCsを発見した話をしました。彼らはその後も研究を続け、数ヶ月後の1961年2月には、紅雲母の中に新たなアルカリ金属がある事を発見したとベルリンの科学アカデミーで報告しています。紅雲母の試料をブンゼンバーナーで加熱し、分光器で観測していたところ、暗赤色領域(約780nm)に新しいスペクトルを発見したのです。

 彼らは、この元素に、ラテン語で暗赤色を意味する言葉から名前をとりrubidium(ルビジウム:Rb)と命名しました。以下は、Rbを発見したブンゼンの報告の一部です。「…この新アルカリ金属のすばらしい暗赤色の輝線に由来して、私たちは、この元素にルビジウムという名前とRbの記号を与えようと思う。これは、古代人が最も濃い赤を呼ぶ時に使ったルビドゥス(rubidus)にちなんだものである。」(元素発見の歴史2 ウィークス/レスター著、大沼正則監訳より引用)

 ブンゼンは、Ceについては、スペクトルを観測しただけでしたが、Rbについては、その塩化物の融解電解により単体を取り出す事にも成功しました。 Rbはアルカリ金属に属しており、他の同族元素と同じく水と反応します。Ceほどではないですが、Rb単体も空気中で自然発火するなど激しく反応するのでアンプルを使って保存します。また、全元素中セシウムに次いで陽イオンになりやすい性質を持っています。用途としては、Rbの塩は特殊ガラスや、セラミックを作る時に使われる事があります。
 
 また、地学の分野では「この岩石は、できてから何億年経っているのか」ということを調べるのに、ルビジウム−ストロンチウム(87Sr)年代測定法を用いて計測します。これは、Rbの同位体87Rbは放射線(β−線)を出しながらストロンチウムに変わっていく性質を利用したものです。87Rbを含む岩石中のRbの含量と87Srの蓄積量を調べると、その岩石が固化してからの時間を推定する事ができます。107年より古いものの年代を調べる方法として、よく使われているほか、隕石、月の石などの生成年代もこの方法で計測されました。

(うちゅう1998年9月号より)


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