サイエンスショー「光れ!もえろ!かがくパワー!」実施報告
概 要
2006年6月〜8月末に、化学反応で発光するルミノール反応や紫外線による発光現象、炎色反応等を扱った実験ショーを行った。そこでは、発光を伴う化学反応、物理現象を解説し、それらが身の回りでどのように応用されているかを紹介した。本稿ではその内容を報告する。
1.はじめに
身の回りある発光現象は、電球や蛍光灯、最近ではLED、そして、ガスコンロなどの炎が上げられる。 自然界にも、多くの人が知っているものとしてホタルの発光の他、ホタルイカ、ある種のキノコなどの発光もある。
かように身の回りには、さまざまな発光現象があるが、今回のサイエンスショーでは、これら以外にも存在する発光現象の仕組みを解説し、理解を深めてもらうことを目的とした。発光という、見た目のインパクトが大きいものを題材として、それがどのような仕組でおこるのか、また、私たちとどのように関わるのかを説明するこした。
2.実施項目
(1)シャープペンシルの芯の発光
鉄製スタンドを利用して、ワニ口クリップで縦にシャープペンの芯に取り付ける。そこにスライダックで、〜10V程度の電圧をかけるとシャープペンシルの芯が発光する実験。

写真1.シャープペンの芯の発光
(2)紫外線による発光
身の回りにある物品に、紫外線を当てることで発光する物があることを観察する実験。発光させるのに用いたものは以下の通りである。
| 物 品 名 |
発 光 色 |
| 白衣、軍手(漂白済) |
青 |
| 漂白系洗剤 |
青 |
| 蛍石 |
青紫 |
| ピンクカルサイト |
赤紫 |
| 使用済み封筒 |
赤〜オレンジ |
| 日本の紙幣 |
緑、オレンジ |
| 栄養ドリンク |
黄緑 |
| 蛍光ペン |
蛍光ペンの各色 |
紫外線は、ブラックライトを蛍光灯スタンドに取り付けたものを使用した。
(3)ルミノールの発光
ルミノールを次亜塩素酸系の漂白剤を用いて発光させる実験。ビーカーを用いた200mlの水溶液を発光させる方法と、キッチンペーパーに、スプレーのりでヘキサシアノ鉄(��)カリウムの粉末を貼り付け、霧吹きに入れたルミノール液を噴霧する方法も採用した。
スプレーで噴霧する実験では、夜空に浮かぶ星雲のような淡い発光を確認することができる。
(4)ケミカルライト
市販されている、ライトスティックによる発光現象の確認。結婚式のキャンドルサービスの1つとして使われている液体を2種類混ぜることで赤、紫、青、黄色などいくつかの色を発光させその様子を観察した。

写真2.ケミカルライトの発光
(5)プラズマ発光
カーボンファイバーを電子レンジ内に入れ、マイクロ波により炭素のプラズマ発光を確認する実験。 さらに、ここに塩化ストロンチウムを加えることで赤いプラズマを発生させ、そのようすも観察した。

写真3.カーボンファイバーのプラズマ発光
(6)炎色反応
ナトリウム、カリウム、銅、ストロンチウムの塩化物の水溶液をメタノールに加え、霧吹きからガスバーナーに噴霧させることで、大きな炎の炎色反応を観察できる実験。
3.解説
(1)シャープペンシルの芯の発光
身近なもので光るものといっても、見学している方々が想像するものはそれぞれ違うことが予想される。 ただ、ごく一般的に白熱電球は、電気の力で熱くなって光っていることは、日常生活から想像しやすい。
そこで本サイエンスショーでは導入として、電気エネルギーによって発光する仕組みから実験を行った。 シャープペンシルの芯に、電圧をかけるということ自体、非日常的であり、さらにそれが発光することは、見学者にとって大きな感動となり、歓声が上がっていた。
そこで、白熱灯の発光の仕方を解説することで、本サイエンスショーへの興味付けを高めることができ、その後の実験への期待を高めることができた。
技術的な留意点としては、急激に10Vまで昇圧すると芯が破裂するため、ゆっくりと電圧を掛けていく必要がある。
(2)ブラックライトによる発光
ブラックライトによる発光は、街中のディスプレイや飲食店の雰囲気作りに利用されることもあり、大人にはよく知られている。いずれも蛍光剤や蓄光剤を含んだものが発光をしているが、身の回りにもこういった物質を含む物があることを紹介した。
ここでは、まず白衣が蛍光漂白剤で漂白されており、ブラックライトで青白く光るようすを観察し、さらにブラックライトを客席に向けることで、夏場ということもあり、白色系の服を着た人達の服が青く発光することも観察した。
また、栄養ドリンクの発光、使用済みの郵便封筒にバーコードが浮かび上がる実験に見学者の反応が大きかった。栄養ドリンクについては、ビタミンB2が紫外線を受けることで発光する現象だが、飲み物が光るということが、見学者には強いインパクトを与えていたようである。 なお、ここで用いたブラックライトは、350nm付近の紫外線を出している。
(3)ルミノール発光
この発光機構や試薬の調整については、以前にも解説したのでここでは省略するが、新しい演出方法として、以下の方法を考案したのでそれを紹介する。
�仝�手のキッチンペーパー((株)ライオン・リード)にスプレーのりを吹き付ける。
�▲悒�サシアノ鉄(��)カリウムの粉末を、ペーパー上にふりかけ、筆などで満遍なく伸ばす。
��小さなホワイトボードに磁石などで貼り付け、霧吹きに入れたルミノール溶液を吹きかけると、青白い発光 が観察できる。
この方法では、夜空の星を眺めているような状態で発光するので、見学者にとっても好印象をもたれる。 また、ヘキサシアノ鉄は、すぐ溶けてしまうわけではないので、ルミノールを何度も吹きかけることができ、発光が何回も確認できる。さらにある程度の液をキッチンペーパーが吸収してくれるので液だれ防止にもなる。もちろん過剰にルミノールの水溶液を吹きかけると液だれするが、ホワイトボード下部のペン置き部分でさらに、液だれを防ぐことができる。
(4)ケミカルライト
購入したケミカルライトは発光液と酸化液の2種類に分かれており、それを混合することで様々な色を出すことができた。 また、市販品の試供品も譲り受け、それも実験に使用した。発光させたケミカルライトを冷凍庫に入れると光が弱まり、通常時の発光時間よりも長時間発光させることができる。それを、サイエンスショーの中で紹介することで、反応速度が温度に依存することを解説した。
(5)プラズマ発光
電子レンジと炭素繊維を使用した、プラズマ発光の実験はいろいろと紹介されている(佐々木(1993)、 大倉(1996))。今回も最初はこれを参考にして実験を行った。 炭素繊維は、株式会社東レより、譲りうけ、
それを5〜7cm程度の長さに切ったものをリング状にし、ほどけないように、アルミ箔を細くしたもので固定した。
100mlもしくは200mlのコニカルビーカーに高さが約1cm程度の、断熱材としてバーミキュライトをいれる。その上に炭素のリングを入れ、電子レンジを作動させると、写真3のようなプラズマ発光が見られる。
ところが、今回、炭素繊維がリング状でなくてもプラズマを作ることが分かった。
(5)− 1炭素繊維の形状
当館で行っているサイエンスショー研究会で、本実験を披露した後、意見交換の場で阪大名誉教授の宮本重徳氏から、どうしてリング状でなければいけないのか、線状ではできないのかという質問を受けた。その場で実験を行ったところ、長さ3〜5cm程度の炭素繊維で、問題なくプラズマが発生した。この理由については、まだ考察を行っていないので理由を記せないが、この方法でもその後、問題なくプラズマを作ることができた。
これがわかったことで、実験前にリングを製作する手間も省くことができ、また簡単に実験ができることができ、大きな収穫となった。
(5)-2プラズマへの着色
また、プラズマの新規実験として、炭素繊維とともに塩化ストロンチウムを少量入れることで、プラズマの色を薄紫〜黄色の状態から、赤色に着色することにも成功した。ただし、ストロンチウムが加熱された炭素繊維付近からなくなると発光も通常のプラズマと同じ状態になるので、始終、赤い発光を伴わせるには、それなりの工夫が必要と考えられる。この件についても、まだ詳細な実験を行っていないので、今後の課題とする。
さらに、ストロンチウムを入れたまま長い時間(10秒〜)プラズマを発生せた後、レンジの扉を開けると白い煙が立ち上る。ストロンチウムが何らかの変化を起こしていることも確認できた。
なお、塩化銅を入れて実験を行ったが、残念ながら銅の炎色反応の色は確認することができなかった。 今後より詳しい実験を行い、この内容を解明したい。
(5)-3プラズマによるX線の発生
プラズマが発生すると、そのとき同時にX線が発生しているのではないかという指摘を、本実験の予備実験の段階で受けた。これまで電子レンジでプラズマ発光を観察する実験で、このような報告は聞いたことがないので、確認すべく2つの方法でX線の計測を行った。
(5)-3−a サーベイメータによる調査
サーベイメータ(ALOKA TGS−121)を使用し、電子レンジ内でプラズマが発生している時に、観測を行った。本機では、β線、及びγ線による表面汚染や空間線量率を計測できる。
電子レンジ内でプラズマを発生させ、正面扉、左右側面、天板、扉の隙間などに検量計を当ててみるも、いずれも計測値は0だった。

写真4.サーベイメーターによる確認
(5)-3−b デンタルフィルムによる調査
歯医者で検査のために使用するデンタルフィルムを利用して、X線が出ているかどうかを確認した。歯医者でX線撮影を行う場合、ピンポイントの撮影時には、およそ、0.016〜0.039mSvのX線による被爆があるといわれている。ちなみに、日本国内では、1年間に被爆する自然放射線量は、1msVといわれている。
歯科レントゲンで感光するデンタルフィルム(DIF100 ¥3,600− 阪神技術研究所)を入手し、これが感光するかどうか確認を行った。 デンタルフィルムには、ワッシャーなどの金属をテープで固定し、感光した場合にその状態がよく分かるようにした。
約20秒ほどのプラズマ発生を行った後、現像液でデンタルフィルムを現像したが、何もうつっていなかった。 結果としては、どの部分でも感光していなかった。
この実験により、プラズマ状態はできているが、X線が出るほどのプラズマ状態ではなかったことが確認できた。

写真5.デンタルフィルムに、感光したことが
分かりやすいように、金属のワッシャー
をつけた

写真6.レンジ内に、6箇所、扉外側に2箇所
デンタルフィルムを取り付ける。

写真7.プラズマを発生させ、デンタルフィルムが
感光するか確認中。
これは、プラズマの元になっているのが、炭素で原子番号が若く電子が少ないため、制動放射などはおきにくいからと考えられる。 ただし、強い発光現象であるので、直接長い時間この発光を見ることは目に危険である。この実験での解説には、身近なプラズマ現象として太陽、炎、オーロラなどの自然に見られるものの他に、薄型テレビなどに応用されていることを説明した。
4.まとめ
発光現象に伴うその科学を紹介するサイエンスショーを今回実施したが、内容としてはいろいろなものが光るということが、何にもまして見学者の心をひきつけたようである。見た目に綺麗ということが、実験を見るということに集中させる効果が大きかったと考えられる。 そのため、演示者が解説を行う時も、よく話を聞いてくれる姿勢になっていた。
筆者は、サイエンスショーを開発する時に「身近なものの科学を探る」という流れと、「知らないけれども、インパクトの強い実験を見てその科学に関しての興味関心を喚起させる」という2つ取り組み方があると念頭におき実験開発を行っている。
今回は、その両者が大きく交わる部分が結果として多くなった。そのためでもあろうか、見学者が参加できる実験はなかったのだが、興味関心を持続させることができ、来館者の集中した意識を途切れさすことなくショーを終えることが多かった。
ここには、部屋を暗くするなどして、実験に集中してもらうという環境的な要因もあったためかもしれない。 今後もサイエンスショーを開発していくことになるが、今回の良かった点を意識しながら、次回以降のサイエンスショー製作にあたりたい。
5.謝辞
本実験を行うに当たり、株式会社ルミカ様より、ルミカライトの資料を提供いただきました。 また、東レ株式会社様より炭素繊維の提供を受けました。
当館館長高橋憲明氏よりサーベイメータを貸していただきました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。
6.参考文献
・「平成4年度東レ理科教育賞受賞作品集」 財団法人東レ科学振興会 (1993)
・「マイクロ波と電子レンジ実施報告」 大倉宏 大阪市立科学館研究報告誌6 (1996)
・「大人の化学クラブ2002実施報告」小野昌弘 大阪市立科学館研究報告誌(2003)
・「原子力2005」日本原子力文化振興財団 (2005)
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