| サイエンスショー「もえろ、もえろ、火の科学」実施報告 小 野 昌 弘 概 要 2008年12月〜2009年2月期に、燃焼に関する科学を紹介するサイエンスショーを行った。火のつけ方について歴史的な観点からの紹介や、簡単な材料を用いての燃焼の本質に迫る実験などを行い、ものが燃えるは、どういうことかを解説した。本稿ではその内容を報告する。 1.はじめに ものが燃える現象は、以前は、自宅の庭でのゴミ焼きや焚き火、石油ストーブ、ガスコンロなどよく目にするものであった。最近は、それら焚き火ができない環境であり、エアコンによる暖房ができるようになり、また、IHのコンロなどが普及し始め、少しずつ、裸火を見る機会が少なくなりつつある。ものが燃えることについての知識は、以前は生活の中から会得できたが、今後は学習して学ぶ知識になっていくのだろうか。そのようなことを想像しながら、ものが燃える現象について、楽しく、深く学べるようなサイエンスショーを企画・実施した。基本的には、2004年3〜5月に行った「炎の大実験」と同様の内容である。 2.実施項目 (1)火のつけ方 普段の生活の中で、どのようにして火をつけるかを質問しながら、マッチ、ライターをはじめとする道具を見せて紹介した。 紹介した道具 ・電子式ライター ・フリントを擦るタイプのライター ・マッチ ・ファイヤースターター ・ファイヤースチールスカウト ・火打石 ・まいぎり式火起こし器 ・圧縮発火器 (2)酸素中での線香が燃える様子 集気びんの中に、空気だけの場合と、酸素で充填した場合とでは、線香の燃え方がどのように変化するかを確認した。 (3)鉄を燃やす実験 一般概念としては、燃えない鉄も、細かくしていることで、燃やすことができることを確認する実験。 (4)粉塵爆発 粉糖や小麦粉など、紛体の中には、非常に燃えやすいものがある。火のつけたロウソクを用意したビーカー内で、ポリエチレン製の水差し、もしくは、子供用プールの空気入れから空気を送り込み紛体を巻き上げると、大きな炎ができるようすを観察した。 (5)空き缶内でのアルコールの燃焼 ジュースの空き缶の一端を切り落とし、そこへ2〜3滴のアルコールを入れる。アルミ箔で、ふたをして手の熱でアルコールを気化させた後、火をつけると、アルミ箔が吹き飛ぶ小爆発が起きる。 (6)ウィスキーとペットボトルを使ったロケット実験 耐熱耐圧の1.5Lペットボトルにウィスキーを8〜10ml入れ、湯せんした後、着火させると爆発がおき、ロケットのように飛んでいく。 3.解説 (1)火のつけ方 現在、家庭では、直接火をつけるという機会が非常に少なくなっている。そのため、やけどや火事の危険性は、過去に比べると少なくなっているようであるが、まったく火のつけ方を知らないというのも、問題があると考えられる。ここでは、現在〜過去の火の起こし方を紹介することで、ある意味科学的な歴史も紹介するようにした。 最も肝心なことは、摩擦などにより、温度を高くしていくことが火を起こすことに重要であることを述べた。 これまで本燃焼に関わるサイエンスショーを何度か行ってきたが、それまでと大きく変わったのは、まいぎり式火起こし器による発火である。以前は、木の削りかすの中に赤い火種ができる程度であったものを、ホームセンター等で販売している麻布シートの中にくるみ、振り回すことで発火させることができるようになった。この実験によって本当に木を擦るだけで、つまり、摩擦熱により発火させることができるということが、見学者の本サイエンスショーに対する関心をより高めることができるようになった。 写真1.使用した麻のシート。ホームセンターで1巻き、500円程度で販売している。 写真2.約10cm四方程度に切り取り、さらにほぐした麻シートを少し積む 写真3.火起こし器の臼のほうにセットする。その後火起こし器を回して、火種を起こす。 写真4.できた火種 写真5.テルテル坊主のように火種をくるみ、腕をゆっくりと振り回すと煙が出てくる。 写真6.振り回していると、このように燃え出す。 これは、インターネット上の「さあいこか」 http://www.geocities.jp/saaikoka/omosiro/omosiro13.htm のページを参考にさせていただいたものである。 また、回転ヤスリ式ライターの中に入っているフリントと呼ばれる発火石が国内では生産されておらず、多くが中国での製造に切り替わっていた。そのため、国内でのそれなりの大きさを持ったフリントそのものを入手するのは難しいようである。 写真7.ファイヤースチールスカウト(左)とファイヤースターター(右)。ファイヤースチールスカウトは、附属の金属片で擦り、火花を散らす。ファイヤースターターは本体右側のマグネシウム部分をカッターで削り、ティッシュや枯葉の上にのせる。その後、カッターなどで本体から火花を散らし着火させる。 ただし、商品名「ファイヤースターター」「ファイヤースチールスカウト」などと呼ばれる登山・キャンプ用品がこのフリントを使った非常用の発火用道具として販売されており、そちらで代用することができる。 (2)酸素中での線香が燃える様子 ものが燃えるためには、酸素が必要であると小学校6年生で学習する。6年生〜成人にとっては、そのおさらいであり、5年生以下にとっては、新しい知見の認知になる実験である。実際は、6年生以上にとっても、酸素が充填された集気びんに線香を入れると、ポンと爆発するような形で、燃焼が激しくなる様子に驚いていた。 (3)鉄を燃やす実験 鉄は燃えない。これは、一般的な常識である。この時、鉄というのはかなづちや塊、H字鋼などが、質問された人の頭に浮かぶことが多い。そのため、鉄は燃えないというイメージがある。実際サイエンスショーでは、かなづちをライターやガストーチであぶり、燃えないようすを確認している。そこから、鉄を細かくしていくとどうなるかという問いを出し、状態が変わると、最初想定した時の結果とは異なる場合もあることを示した。ここでは、スチールウール、#200〜300の鉄粉を用いて、それぞれに火をつけるとどうなるかを確認した。スチールウールの場合は、少量をピンセットで掴み、ライターであぶることで真っ赤になり燃えること、鉄粉の場合は、ライターやガストーチの炎の中に少量を振りかけることで火花が発せられることで確認した。特に鉄粉がきれいに燃える様子は、見学者にとって非常にインパクトがある様子だった。 (4)粉塵爆発 物を細かくしていき、粉末状にすると、大きな塊でも得ないものも、燃えやすくなる場合があるということを(3)の実験で確認したが、身の回りにある粉末も、条件をそろえると、非常に燃えやすくなることを示す実験。 ここで使用したのは、粉糖と小麦粉である。500mlのビーカーに粉糖をおおさじ2杯を入れ、火をつけたロウソクをビーカーの中に立てた後、ポリエチレン製の水差しや、子供用プールなどを膨らませるときに使用する空気ポンプの先端に、ガラス棒を取り付けたものを利用して、空気を送る。噴出した空気によって粉糖が舞い上がると、着火し、大きな炎ができる。 粉塵爆発の一例として紹介した。なお、小麦粉でも同様の実験ができるので、場合によっては、両方実施することもあった。いずれも燃えやすい物が、空気中に漂い、急激に参加される状態にあると、爆発現象が起こることを紹介した。 (5)空き缶内でのアルコールの燃焼 スチール製の空き缶の上部のふた部分を切り取り、その空き缶の下部には、直径5�个侶蠅鬚△韻燭發里鰺儖佞靴拭�アルコールを2〜3滴入れて、アルミ箔で開口部を覆う。その後、手のひらで空き缶を包みあたためながら振って、缶内をアルコール雰囲気にする。下部の小さな穴に火を近づけるとアルミ箔が吹き飛ぶ様子が観察でき、爆発したことが分る。次のアルコールロケット実験に向けての布石とする実験。 (6)ウィスキーとペットボトルを使ったロケット実験 (5)で行った実験をスケールアップしたもの。使用したペットボトルは、耐熱性と耐圧製をかねそろえたものを使用している。両者を満たすのは、果汁入りの炭酸ジュース用ボトルである。ただし、本実験のために製造されているわけではないので、事故が起きた時には自己責任である。ただ、この実験は、以前より当館で実施している非常に人気のあるもので、1500回以上の実験を行っているが、ボトルが破裂するような事故は1回もない。ペットボトルの耐熱耐圧性能は、以前と変わらないようだが、物によってはペットボトルの肉厚が薄い物があり、感覚的に、若干不安を抱くものがある。 今回使用したペットボトルは、東洋製罐株式会社から、寄贈していただいたものである。おかげで、以前は、市販のジュース入りのものを購入して、1本あたりの使用頻度が50回近くに上ることもあったが、多数のボトルを寄贈していただいたおかげで、1回あたりの使用頻度が下がり、安全性の面においてリスクが低くなった。 なお、本実験は、直径が25cm、長さが1mのアクリルパイプのを横にしたものの中で実験を行った。 このガイドを設けることで、あらぬ方向へ飛んでいくことと、万が一爆発しても、来館者へ危険を及ぼさないようにし、安全性を高めている。 4.まとめ 今回のサイエンスショーは、基本的に当館で以前に行っていた燃焼を紹介する実験とほぼ同じ内容である。 それでも、まいぎり式火起こし器を用いての発火や、フリントを用いての発火方法の紹介と、実際の発火実験を行うことで、内容のアップデートを行った。 また、本サイエンスショーでは、大阪市教員の長期研修で在籍していた藤田麻衣子教諭にも助言、また実演をしていただいた。藤田教諭の参加により見学者への実験の見せ方の配慮などを助言していただき、ショー全体のレベルアップにもつながった。 5.謝辞 本サイエンスショー実施において、ウィスキーロケット実験を行うに当たり、東洋製罐株式会社より、ペットボトル提供の協力をいただきました。本紙面を借りてお礼を申し上げます。 6.参考文献 ・小野昌弘「サイエンスショー炎の大実験実施報告」大阪市立科学館研究報告14 (2004) |