サイエンスショー「炎の大実験」実施報告

火をつけるにはどうすればよいのか。また、何が必要なのかを解説しながら燃焼について 考え、さらに、燃焼の速度が速くなった場合の爆発についての実験も行い、その現象を紹介する実験を行ったので、その内容について報告する。


1.はじめに
 2004年3月2日から5月30日まで燃焼に関するサイエンスショー「炎の大実験」を実施した。本サイエンスショーでは、燃焼に関して必要な要件の解説や、燃焼速度が非常に速い場合などにオ起こる爆発に関する実験を行い。燃焼という現象がどういったことなのかを考える内容とした。 火を取り扱う実験のために事故が起こらないよう細心の注意を払いながら演示を行った。


2.実験内容

(1)昔の火起こし
まいぎり式火起こし器(写真1)、圧縮空気による発火など、古代から近
    写真1.まいぎり式火起こし器
代にかけて行われていた火起こしの方法を紹介した。
これら、 道具は学校の授業で使えるように教材会社から発売されているものを使用した。まいぎり式の火起こし器は、なれると2分程度で火口を作ることが できる。 また、現在ライターは圧電素子で火花を飛ばし、引火させているが、少し前のライターでは、セリウムと鉄の合金をヤスリでこすって火花を飛ばし発火させていたことも紹介した。 さらに、空気を圧縮して火をつける方法も紹介した。

(2)ろうそくの燃焼
ロウソクがなぜ燃えているかの紹介。芯の太いロウソクに火をつけ、炎の中に注射器(かん腸器)を差し込み、吸引するとロウの煙が吸い取れる。その後ピストンをゆっくり押し煙を吐き出し、火をつけると、そのロウの煙が燃えるようすが確認できる。

(3)鉄の燃焼
鉄は通常燃えないが、どんどん細かくしていくと燃えるようになることの紹介。鉄の塊から、スチールウール、鉄粉(200〜300メッシュ)と燃やすものを徐々に細かくしていくと、燃えにくいものも方法によって燃やすことができる当為ことを確認してもらった。 また、スチールウールに関しては、集気ビンの中に酸素を入れておき、その中で激しく燃焼することも確認した。

(4)粉砂糖の粉塵爆発
粉砂糖をビーカーの中に入れ、空気入れで砂糖を
   写真2.ビーカーでの粉塵爆発
巻き上げたところにガスライターで火種を要しておくと大きな炎を作ることができる(写真2)。 これは、小麦粉でも同じように燃 焼させることができる。ビーカーでは、若干スケール的に小さいため、A4コピー用紙が入っていたダンボールに手を加え実験を行った。 箱の上部にろう斗を差し込めるだけの穴を開け、箱の内部でゴムのチューブとつなぎ、外部で子供用のプールなどを膨らませるときなどに使う黄色いポンプと接続した。また、箱の4隅に長さ90cmの棒を立てた。この棒を利用しゴミ袋(80×90cm厚さ0.02mm)をかぶせると閉空間を作ることができるようになる。それから、ろう斗を差し込んだすぐ脇に、フィルムケースを置き、その上に小さなろうそくを立てるようにした。 ろう斗に薬さじで2杯ほどの粉糖をいれ、箱にビニール袋をかぶせ、さらにロウソクに火をつけておく。空気ポンプを一気に押し込み粉糖が袋に撒き散らされると大きな火の玉が出来上がり、ビニール袋が3〜4m舞い上がる(写真3)。

(5)アルコールの爆発
空き缶の中にアルコールを入れて、アルミ箔を吹き飛ばしたり、ペットボトルの中にウイスキーを入れて、アルコールのガスをボトル内に充満させることで爆発、ロケットを飛ばす実験。以前行った燃焼実験と同じものなので、内容は参考文献を参照されたい。

  写真3.大きな粉塵爆発

3.解説
(1)昔の火起こし
本サイエンスショーの導入として行った実験だが、火をつけるというと最近はチャッカマンという商品が巷間に出回っていて100円ライターやマッチの出番が少なくなっている。そのような中、マッチのすり方などは、子どもたちにとっては新鮮なものとして映っていた。また、木をこすり合わせて火を起こすことは、野外活動で体験した子どもも幾人か見受けられた。ここでは、どのようにしたら火種を作ることができるかを解説した。

(2)ロウソクの燃焼
ロウソクは何が燃えているのか?この問いに子どもの答えは、芯とロウという答えに大別される。その確認をする実験である。芯の太いろうそくを使うことで吸い上げるロウの量を多くすることができ、注射器でロウを多く吸い上げることができる。このロウソクは以前、教材会社が販売していたものであるが、この会社が倒産してしまったため、現在は入手は、不可能である。今後この実験をするためには、芯の太いロウソクを自作する必要がある。 この実験の続きで、いったん消したロウソクから出てくる煙に炎を近づけることで再び真に火がつくということも行っていたが、子どもたちは驚いていたし、また、このロウソクの実験のおさらいにもなったと思う。

(3)鉄の燃焼
ショーの見学者に鉄の塊が燃えるかという問いに、多くの子どもは燃えないという答えをかえしてきた。一般の生活での体験では、鉄は燃えることはないが、場合によっては、鉄でさえも燃えることがあるということを確認した。スチールウール、200〜300メッシュの細かい鉄粉と徐々に鉄を細かくしていき、空気と触れる面積を大きくすることで、赤く燃えたり、火花を散らすようすに見学者はとても興味を持っていた。特に鉄粉の火花(写真4)が花火のような状態になるのには、強い関心を示していた。 さらに、その時々に応じて酸素中でのスチールウールの燃焼を確認し、酸素が多い状態での鉄の燃焼を確認した。
  スチールウールの燃焼 
写真4.スチールウールの燃焼


(4)粉塵爆発
この実験も以前の燃焼実験で行っていたものであるが、スケールアップしたものを今回追加で行った。まず、予備実験段階では、小麦粉でうまくいくかどうか行っていたが、オーブン等で湿気を取り除かねばならないなど、やや手間がかかったためより扱いやすい粉糖とした。また、ろう斗の脇に置くロウソクの位置だが、最初はやや離れたところの高い場所においていたが、成功する確率が2割くらいと非常に低いものだった。その後、山梨県立科学館の中村主査から助言を受け、ロウトのすぐ脇のあまり高くない位置にロウソクを設置することで、ほとんどの実験で成功するようになった。なお、当初、粉糖はホースに息を送り込むことで巻き上げることも考えていたが、呼気中の水分によりホース内で粉糖が固まることが考えられるので空気ポンプを使用することとした。  
また、話題としては、炭鉱での粉塵爆発なども例に挙げた。

(5)アルコールの爆発

ウィスキーを使ったペットボトルロケットは、当館では定番実験のひとつになっている。そのためここでは改めて書くことはないのだが、見学者の中には、これを演示実験でしたいという人がおり、実験方法を聞きにくる人がいるが、安易に行うと爆発の危険性もあることを肝に銘じておかねばならない。


4.まとめ
今回のサイエンスショーでは非常に身近である燃焼について行った実験である。そして、今回の実験でのテーマは、物を細かくし、それが空気とよく混ざっているときに火がつくと激しい燃焼や爆発が起こるということを訴えた。もちろん燃焼に関しての3要素の話も盛り込んだが、特に後半の粉塵爆発やアルコールの爆発の迫力に、そのテーマが飛んでしまった感もある。 また、おまけの実験として、ショーが始まる前や終わる直前に余興として指を燃やす実験を行った。指を水でぬらし、その上にアセトンをつけることで指に火をつけてもやけどせず炎を見せることができる実験だが、これも、最後に行うと見学者の意識がすべてそちらに流れてしまい。ショーで訴えてきたことが消えてしまうということがあったようである。
火を扱うことは危険なことではあるが、その危険性のため、今の家庭では子どもたちに火の扱い方を教えない。実際、火を使う場面など家庭ではほぼないに等しい。今回、火を扱えるかどうかをショーで聞いてみても、火をつけたことがあるという子どもは少数だった。少し前であれば、家庭でごみを燃やしたり落ち葉を焼くなど、火を扱い、どのようにしたらよくものが燃え、どうしたら危険かということを家庭で学んでいた。子どもが火を扱うことに全面的に賛成するわけではないが、火を扱えなくなっているということが果たして本当にいいこのなのかという感想を持ったショーであった。


謝辞
粉塵爆発の実験を行うにあたり、札幌市青少年科学館の加納氏、日野氏から資料をいただき、山梨県立科学館の中村氏より助言をいただいたことに紙面を借りてお礼申し上げます。

参考文献
・「大阪市科学館研究報告誌第4号 p103〜107 大阪市立科学館 (1994)


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