サイエンスショー「マジカルケミストリー」実施報告
小野昌弘
大阪市立科学館学芸課

化学実験というと危ない、怖いなどというイメージもあるが、きれいな色と光がでる 華やかな実験を選び出し演示したのでその内容について報告する。

1.はじめに
化学実験では、溶液の色変化で定性試験や定量試験を行うなど、色で重要な情報を得ることがある。しかし、それらは一般に馴染みのない実験であり化学の実験を行わないかぎり、その存在を市民が知る由もない。そこで、今回のサイエンスショーでは、馴染みはないが試薬の調整によって起る興味深い色変化の実験と、化学発光の実験を取り上げサイエンスショーとした。

2.実験内容
(1)炭酸ガスによる溶液の色変化
500mlの透明なペットボトルに水を約250ml入れ、そこに1mol/lのNaOHを1滴加える。そこにpH指示薬であるフェノールレッドを加え、ボトルの中の水を赤紫にした。ボトルの中へ息を吹き込みCO2を溶かし中性に近づけると、溶液の色が黄色に変化する。

(2)振動反応(BR反応)
   A液:30%H2O260mlを水で希釈して500ml とする。
   B液:KIO320gを150mlの熱湯に溶かし、60% HClO4を加え500mlとする。
   C液:可溶性でんぷん0.3gを少量のお湯で溶 かし、さらに硫酸マンガン2g、マロン 酸10gを溶かして水を加え500mlとする。

A、B、Cの溶液を3リットルの三角フラスコに入れ溶液の色が無色→オレンジ→青紫→無色…と繰り返す色の変化を観察する。最後はハイポ(チオ硫酸ナトリウム)を加え、I2の発生を押さえて終了する。

(3)ルミノール反応
NaOH1gを水で溶かし100mlとし、ルミノール0.1gを加えて溶かす。さらに、別のビーカーにキッチンハイターを10mlとって水で希釈し100mlとする。部屋を暗くした後、2液を混合すと発光する(写真1)。
ルミノールの発光
写真1.青白く光るルミノール

(4)ケミカルライト
市販されているケミカルライトの原液を購入し、見学者の前で液を混合し、液体の発光を観察してもらう。また、この液を製造している(株)ルミカより協賛品として製品を分けていただいたのでそれを利用しながら解説を行った。

(5)試験館内での炎色反応
Φ21mmの試験管に3gのKClO4と少量のSrCl2を入れ、ガスバーナーで試験管を加熱する。混合物が溶解したところで1cm程度の割りばしの破片を入れると小爆発が起り、Srの赤い光が観察できる。

(6)霧吹きを用いた炎色反応
霧吹きにNaClやCuCl2などを加えたアルコール溶液を入れておき、ガストーチの炎に吹きかけると各金属の色を呈した大きな炎を観察できる。NaClやCuCl2などを加えたアルコール溶液を入れておき、ガストーチの炎に吹きかけると各金属の色を呈した大きな炎を観察できる(写真2)。
炎色反応Na
写真2.霧吹きを用いた炎色反応


3.解説
(1)炭酸ガスによる溶液の色変化
 本サイエンスショーの導入実験とした。見た目がきれいな赤紫色の液体が息を吹き込むことで黄色に変化する様子は見学者に化学の好奇心を喚起させるのに充分だったようだ。 現象的には非常に単純で、

  2NaOH+CO2 → Na2CO3+H2O

とすることでフェノールレッドの変色域(黄色<pH6.8〜8.4<赤色)を観察するものである。 フェノールレッドは0.1gの粉末結晶を100mlの水に溶かし更に、0.1mol/lのNaOHを1ml加えたものを使用した。 この実験で、化学実験でおこる色変化は重要な意味を持つことを示した。また、実験に使用した液にハイターや酢を入れることで日常生活と絡めながら解説を行い、ショーの導入として重要な位置を占める実験となった。

(2)BR反応
 細かい反応については、当研究報告誌4号に譲る。本実験ではやはり溶液の色が次々と変化していくダイナミック性に見学者からの驚きの声が上がった。無色の溶液が赤茶色になっていき突然紫になるだけでも驚いていたようだが、更にその色変化が繰り返すということにショックを受ける人が多かった。演示期間の前半では、単にこの実験を行っただけだが、斎藤主任学芸員の助言により、身近にあるもので本実験の前振りを行ってから、本実験を見てもらうとより深く印象に残るようである。本実験の前に行った実験とは、ヨウ素を含むうがい薬、例えばイソジンなどを希釈しそこへ、太目の乾燥したうどんを入れるとヨウ素−でんぷん反応でうどんが青くなる。更にハイポを加えて無色にするという実験である。この実験で、振動反応の色変化では何が起きているのか見学者には理解できるようになり、割合抵抗なく見学者自身が自分で考察できていたようである。

(3)ルミノール反応
 化学薬品で光ができるというのも見学者にとってはインパクトがあるようでこの実験も人気があった。今回は、試薬の処理等の問題もあり、ヘキサシアノ鉄(�掘忙瀬�リウムは使わずハイター中の次亜塩素酸ナトリウムによってルミノールを励起させ460nmの発光を得た。

(4)ケミカルライト
 現在、あちこちで見ることのできるケミカルライト(写真3)の原液を、購入し実験を行った。蛍光液と酸化剤の500mlのボトルが一組となって6,000円だった。いろいろな実験書を見ると試薬を調整して実験をすることもできるが、こちらの方が手間暇かからず、失敗することもない。 この液は(株)ルミカで結婚式場等のイベントで使用する商品として販売している物で簡単に入手できる。
ライトスティック
写真3.ケミカルライト

(5)試験管での炎色反応 強い酸化剤になるKClO4を強熱し、融解させることで割りばしを燃やしやすくすることができる。割りばしが燃えている時にSrの炎色反応が見られるようにした。

(6)霧吹きを用いた炎色反応
 各種金属塩を水に溶かしエタノールやエタノールメタノール混合溶液に加え、霧吹きを用いて巨大な炎を作り(写真3)炎色反応を観察できるようにした。 4.まとめ 今回のサイエンスショーでは、たくさんの試薬を使い、普通の生活をしていく上では何ら関わることのない化学実験を取り上げてみてもらった。 いわゆる非日常の化学を題材としているが、これは、身近な化学(科学)からその原理の探求や紹介型の実験とは違い、見学するものに対して実験結果が非常にインパクトが強く印象に残らなければ見てもらえないであろう事は容易に想像がつく。

 今回取り上げた実験は、見学者の関心を容易につかむことができるものだったので、その意味では成功だったようである。 科学館の役割として、身近なものを取り上げ、その原理原則の紹介や解説を行うのと同時に、普段の生活とはかけ離れた部分で存在するものにも光を当て、それを知ってもらうという仕事もある。 今回のサイエンスショーでは後者を行ったつもりだが、当館で開催したサイエンスショー研究会などで身近でないものなのでなかなか、驚きなどはあってもそれ以上のものにつながらないという指摘を頂いた。

 このあたりは本実験の製作段階から分かっていたことであるが、取りあえず、非日常にある興味深い化学の現象を見てもらい、化学に改めて興味関心を持ってもらう、またなぜそのような化学現象が起るのか理解したいというモチベーションを喚起できたらというところに重点を置いて製作した。その後、さまざまな人々からのアドバイスで、日常とのからみによってより深く理解・関心を持ってもらえるのではないかという意見を頂いたので色の変化を見てもらう実験では、身近な日常とのからみを持たせるようにした。 あくまでも演じた印象でしかないが、日常を絡ませたことで、来館者の反応は良くなったように思う。
 単に実験を見てもらうのではなく見てもらうための工夫がやはり重要であると改めて気づくことのできたサイエンスショーであった。



参考文献
・「大阪市科学館研究報告誌題4号 p113〜117」 大阪市立科学館 (1994)
・「教師のための化学実験ケミカルデモンストレ ーション2・6」 池本 勲訳 丸善 (1998)
・「実験から見た化学理論」 渡辺 紀元著 三共出版 (1992)


大阪市立科学館研究報告誌第11号(2001年発行)より


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