お米もちモチ


私は、家から駅に向かう途中、田んぼを通り過ぎるのです。夏の終わりから秋にかけては、良く成長してるなあと眺めながらの通勤です。
さて、私たちが日常食べているお米(以下、うるち米)とお餅用の米の違いご存知ですか。なぜうるち米では、餅を作ることができないのでしょう。どんなにがんばって、すりつぶしたり、まとめてみたりしても、糊状にしかなりません。
もち米は、赤飯などご飯状で食べることができますが、食感はやはりもち米らしく、非常にモチモチしています。うるち米ともち米の違いはその中に含まれるデンプンによるものなのです。

米の中のデンプン
お米は、モミ殻をとって玄米にし、そこから、胚芽と糠層を取り除いて精白米とします。この精白米は、胚乳と呼ばれている部分で、主成分がデンプンです。そしてデンプンは、ブドウ糖(グルコース)がたくさん結びついてできているものです。
まず、ブドウ糖ですが炭素が6個水素が12個、酸素が6個で構成されている分子です(図1)。ブドウ糖はとても甘く美味しいですが、ブドウ糖同士が2つ結びつくと麦芽糖(マルトース)になり、ブドウ糖と果糖(フルクトース)が結びつくとショ糖、いわゆる砂糖となり、これらもまた甘くておいしいです。
そして、このブドウ糖がたくさんつながっていくとデンプンを作り上げていきます。
さて、このときブドウ糖がたくさん結びついていくと、少しずつ丸くなっていきます。いわゆるバネのような状態になっていくのです。6個のブドウ糖でひとつのらせんを作り、これが約12巻き程度で1つのセットになり、ばねを作りあげます。バネ状のブドウ糖の集まりが、一本の線状になったものをアミロースといいます。
また、このブドウ糖の集まりが1本の線ではなく、木の枝状のような形をしているものをアミロペクチンといいます。

  
図1
ブドウ糖(グルコース)               ブドウ糖がつながってら直径60nmの
                            らせん状になる。



餅が伸びるのは
うるち米はアミロースが約20%、アミロペクチンが約80%で構成されています。また、もち米はほぼ100%がアミロペクチンで構成されています。
この約20%含まれるアミロースにより、餅になるかならないかが決まってきます。
お米の状態では米の中は、アミロースやアミロペクチンは結晶と同じような状態にありますが、水分や熱を加えていくと、その結晶化状態がほどけてきます。これを糊化(こか)と呼びます。うるち米では、米が炊き上がった状態になります。餅の場合は、さらにここから、糊化したもち米を杵などでついていきますと、アミロペクチンを押しつぶしたり伸ばしたり、こねることになり分子同士を絡めていくということをしているのです。このからみが、餅独特の伸びになっていくのです。
うるち米は、アミロースがあるせいで、アミロペクチン同士の絡み合いが弱くなってしまい、もち米のような伸びが発生しないのです。完全には、解明されていないようですが、この差が、ご飯と餅の違いになっているのです。

最近のお米は、ややモチモチした感じのコシヒカリなどが好まれています。コシヒカリなどにはアミロースが17〜19%とやや少なめなため、あの感触が生まれます。逆に以前好まれていたササニシキなどはアミロースが 20%を少し超えるくらいあるそうですが、これが割合あっさりとした食感を作ります。
最近、知り合いから分けてもらったお米、ミルキークイーンを食べたのですが、ものすごくモチモチしてました。かなり衝撃的でした。アミロースがずいぶんと少なくなっているようです。
もちろん炊き方などでもこの食感は大きく左右されるのですが、アミロースの多いか少ないかがお米の性質をずいぶんと変えるものなのです。

2009.9.23up (月刊うちゅう 2005.1分、加筆訂正)

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