『科学談話室』の話題より
地 球 内 部 の 熱 源 は ?
2000/02/18 話題提供
2000/03/23 最終更新
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[danwa:0192] 地球内部の熱源は?
Date:Fri, 18 Feb 2000 10:09:17 From: 船場の若旦那
皆様こんばんは。船場の若旦那です
ついでに質問させてください。

地球の内部はとても熱いことはどこにも書いてあるのですが、その熱源についての明 確な説明や、定量的な地球内部の熱の長期的な収支決算についてはまだよく理解でき ません。我が家で考えた理由は:

1)昔の熱かった地球が内部ではまだ冷めていないからまだ熱い。(魔法瓶効果)
2)地球内部での放射性物質の崩壊による発熱。(鉄とニッケルがほとんどの地球内 部でのような核反応が生じているのかわかりませんでした)
3)月の潮汐力で地球内部の液状物質がかき回されるための摩擦熱による発熱。(月 には地球の潮汐力がないため、内部まで冷えてしまっている)

などを考えております。
地球物理学の本当の初歩的事項と思うのですが、素人が少し調べてみてもわかりませ んでした。

もし、地熱の熱源が3)の潮汐力であれば、太陽に依存しないエネルギーは原子力と 潮汐力(地球の自転の慣性)になるのでしょうか?

うちのこどもにもわかるように、なにとぞよろしくご解説をお願いいたします。


[danwa:0194] Re: 地球内部の熱源は?
Date:Mon, 21 Feb 2000 13:41:01 From: 長谷川
船場の若旦那さん、談話室のみなさん、こんにちは。長谷川です。

船場の若旦那さん [danwa:0192]
1)昔の熱かった地球が内部ではまだ冷めていないからまだ熱い。(魔法瓶効果)
2)地球内部での放射性物質の崩壊による発熱。(鉄とニッケルがほとんどの地球内 部でのような核反応が生じているのかわかりませんでした)
3)月の潮汐力で地球内部の液状物質がかき回されるための摩擦熱による発熱。(月 には地球の潮汐力がないため、内部まで冷えてしまっている)
などを考えております。
船場の若旦那さんの家で考えられた3つの理由は妥当だと思います。私も定量 的なことはよく知らないのですが…。

3)の潮汐力については、木星の衛星のイオに火山が存在する原因だといわれ ていますね。しかしあれは木星の非常に大きな潮汐力があるからであって、地 球に働く月や太陽の潮汐力は桁違いに小さいように思えます。

潮汐力は相手の天体の質量に比例して、距離の3乗に反比例します。そこで理 科年表を調べてみると、月の軌道長半径38万4400kmに対し、イオの軌道長半径 は42万2000kmと、あまりかわりません。3乗しても、4分の3程度にしかなり ません。しかし、月の質量が地球の0.0123倍なのに対し、木星の質量は地球の 317倍、つまり木星は月の25772倍もあります。

ということで、イオに働く木星の潮汐力は、地球に働く月の潮汐力の約2万倍 もあります。

さらに、その潮汐から得るエネルギーは、潮汐の周期に比例しそうですが、残 念ながら理科年表には載っていませんでした。


[danwa:0195] Re: 地球内部の熱源は?
Date:Tue, 22 Feb 2000 01:12:26 From: 難波の宇宙人
船場の若旦那さんこんばんは。難波の宇宙人です。

地球の内部はとても熱いことはどこにも書いてあるのですが、その熱源についての明 確な説明や、定量的な地球内部の熱の長期的な収支決算についてはまだよく理解でき ません。我が家で考えた理由は:

1)昔の熱かった地球が内部ではまだ冷めていないからまだ熱い。(魔法瓶効果)
2)地球内部での放射性物質の崩壊による発熱。(鉄とニッケルがほとんどの地球内 部でのような核反応が生じているのかわかりませんでした)
3)月の潮汐力で地球内部の液状物質がかき回されるための摩擦熱による発熱。(月 には地球の潮汐力がないため、内部まで冷えてしまっている)
2つめの放射性物質の崩壊による発熱について私はこう考えています。

地球はできた時、どろどろに溶けていたため比重の重い放射性物質は次第に地球内部に 沈んでいったのではないか。
そしてウランなどは非常に半減期が長くしかも放射線をだしながら、どんどん原子番号 を変えていきます。(一定の経過を辿って最終的に鉛などの安定な物質になります。) この原子番号の変化と出す放射線などは理科年表に載っています。 その放射線のエネルギ−が地球内部の熱源と思います。

放射性物質は次第に減少していくため、地球内部はいずれ固まってしまうと思われます。 しかし地球内部が固まる前に太陽が赤色巨星になり地球を飲み込んでしまうかもしれま せん。


[danwa:0196] Re: 地球内部の熱源は?
Date:Wed, 23 Feb 2000 21:44:02 From: 石坂
談話室のみなさん、こんばんは、石坂です。
ROMになると言いつつ、「地球内部の熱源は?」という、 なんて魅力的なタイトルなんだ!にひかれてしゃしゃり出ます。 すみません。

[danwa:0192]で船場の若旦那さんは書きました:
1)昔の熱かった地球が内部ではまだ冷めていないからまだ熱い。(魔法瓶効果)
2)地球内部での放射性物質の崩壊による発熱。(鉄とニッケルがほとんどの地球内 部でのような核反応が生じているのかわかりませんでした)
3)月の潮汐力で地球内部の液状物質がかき回されるための摩擦熱による発熱。(月 には地球の潮汐力がないため、内部まで冷えてしまっている)
もう一つあると聞いたことがあります(うろ覚えです)。
 地球の核は内核と外核に分かれています。内核は純粋な鉄(と ニッケル)からできていて固体ですが、外核は鉄の他に硫黄、珪 素などが混じってどろどろに溶けています。
 さて、地球から熱が逃げていくと固体鉄の内核が徐々に大きく なっていきますが、外核の溶けた鉄が内核にくっついて固まる時、 潜熱を放出するので、温度が下がらない、というのです。氷水を 冷やしても、全部が凍るまでは温度が0度のままであるのと同じ です。つまり、特に熱源を考えなくても「潜熱」があるので、地 球内部はしばらく6000度のまま変わらない(これ本当でしょうか?)。

 実は地球の内部を温めるウランなどの放射性元素は地球の核に はほとんど含まれていないらしいのです。ウランは重いけど、酸 素や珪素と化合物を作ってマントルや地殻に取り込まれてしまう のです(だからこそ地表にウラン鉱脈があって、人間が利用でき る・・・ ;-)。他の主な放射性元素、カリウム40(K40)やトリ ウム(Th)も同じです。
 だから、放射性元素の崩壊が核を温めているわけではない(ら しい)のです。もちろんマントルや地殻は温めているのですが・・・。
 ちなみに、カリウム40が崩壊したものがアルゴンです。地球 大気の組成で、窒素、酸素についで3番目に多い元素です。アル ゴンは希ガスですから「希な」元素のはずですよね。でも地球に は多い。これは地球内部のK40が崩壊してできたアルゴンが大気に 放出されたものなのです。希ガスでは他にヘリウムやキセノンも 地球上では比較的多いですが、放射性元素の崩壊でできたものです。
 さて、潮汐によって地球に与えられる熱ですが、地球の自転が 遅くなったり、月がだんだん遠ざかっていったりすることで賄わ れます。これは見積もるとだいたい毎秒数兆ジュールになります。
 多いようですが、地表からは地球内部の熱が毎秒数十兆ジュー ル出ていますから、足りません。
 おまけに、潮汐は簡単に言えば地球からの重力と月からの引力 の差し引きですから、地球内部よりも地表の方が効果が大きくな ります。地球内部の液体物質をかき回すことができません。熱源 になるのは難しそうです。

 ああ、他にも、できたての地球はドロドロに溶けていてマグマ オーシャンだったというけど、微惑星の衝突合体は表面でしか熱 を開放しないのに、なぜ全体が溶けることができたのか、とか、 K40はマントルや地殻の岩石中にあるのに、なぜアルゴンは大気 に出てこれたのか、とか、地球と月、水星、金星、火星との違い は何か、とか、他の惑星イオは木星による潮汐力を受けて中が 溶けているというけど、イオは月と同じで公転周期と自転周期が 同じ(いつも同じ面を木星に向けている)上に、月とは違って完 全な円軌道を描いているのに、どうして木星の潮汐力によっても みもみされることができるのか、とか色々書きたいこと、考えた いことがあるのですが、またROMに戻ります。

石坂でした。


[danwa:0200] Re: 地球内部の熱源は?
Date:Sun, 12 Mar 2000 00:23:03 From: 長谷川
談話室のみなさん、こんばんは。長谷川です。

石坂さん [danwa:0196]
イオは木星による潮汐力を受けて中が 溶けているというけど、イオは月と同じで公転周期と自転周期が 同じ(いつも同じ面を木星に向けている)上に、月とは違って完 全な円軌道を描いているのに、どうして木星の潮汐力によっても みもみされることができるのか、とか色々書きたいこと、考えた いことがあるのですが、またROMに戻ります。
完全円軌道で、なおかつ公転周期と自転周期が一致していれば、どう考えて も潮汐力でエネルギーを得られるとは思えないのですが…。

例えば月の場合には、公転周期と自転周期が一致していますが、離心率0.05 の楕円軌道を描いています。地球に近づいたときには平均距離に比べて5% 近く、遠ざかったときには5%遠くなりますので、近づいたときと遠ざかっ たときでは、およそ10%距離が違います。潮汐力は距離の3乗に比例するの で、近づいたときと遠ざかったときでは、潮汐力は30%も違うことになるん ですね。

もっとも、地球の質量が小さいので、これでも月を暖めておくのには不十分 だったらしく、月は冷えてしまっていますが…。

色々書きたいこと、考えたいことがあるのですが、またROMに戻ります。
そう言わずに、出てきて下さいよ〜。


[danwa:0202] Re: 地球内部の熱源は?
Date:Wed, 15 Mar 2000 00:19:25 From: 浦田
こんばんは、浦田です。

さて、想像ですが、地球の殻でさえ月の潮汐力で20センチも変形していま す。 外殻が溶けていて、その中でさらに重い内核がちょうど地球の中心に浮かんで いるなんて、想像できませんよね。外核の中で内核中心から月の方向に何メー トルかずれていて、地球の自転に引きずられた外核を中心付近でかきまわして いるんですよきっと。 (外核がずれたと考えてもいい)

月の公転周期は長かったので、内核が外殻をたいしてかきまわすことも無く内 核が地球の方に片寄ったまま冷えてしまった。

イオ:
地球の自転周期と似た1.2日という公転周期を持つイオは、たとえ自転周期 と公転周期が同じでも、上記と同じく、スピンも含んだ自由度の高い片寄った 内核は複雑な振動をしながら外核をヨーグルトのようにかきまわす。(振り子 の中で周期の違う振り子を振らせたら、複雑な振動をするようなものかな)

ひょっとしたら、核分裂の熱も加わって中心部分は粘性が低いので、内核の月 方向への自由度は高く、外殻を西方向に強く引きずっている(回転)させてい る。



先代の太陽の爆発の破片の中の比重が高くて大きい物が惑星の最初の中心に なった可能性もあるので、核分裂エネルギー説もプラスしたらエネルギー収支 がうまくいかないですか?


[danwa:0204] Re: 地球内部の熱源は?
Date:Wed, 22 Mar 2000 17:46:29 From: 石坂
談話室のみなさま、こんにちは。石坂%ROMのはずなのに、です。

 イオの加熱について、あれから長谷川さんと一生懸命考えました。 本もあれこれ、英語の本までひっくりかえして調べてみました。
 答ははっきりとは書いてありませんでしたが、ヒントを見つけま した:「イオはエウロパとガニメデの影響を受けている」。

 木星にはお月さま(衛星)が16個あります。そのうち特に大きい 4つの衛星は400年前にガリレオによって観察されていて、ガリ レオ衛星と呼ばれています。木星に近い順にイオ、エウロパ、ガニ メデ、カリストです。ガニメデは惑星の水星より大きいです。
 母惑星の木星はガリレオ衛星とは比較にならないほど大きいです が、エウロパやガニメデはイオに影響を及ぼすことができるのでしょ うか?
 理科年表でイオ、エウロパ、ガニメデについて数値を当たってみ ました。
木星からの距離質量公転周期
イオ木星半径の5.9倍木星の10万分の4.7 1.8日
エウロパ   〃   9.4倍    〃    2.5 3.6日
ガニメデ   〃   15倍    〃    7.8 7.2日

 公転周期がイオ:エウロパもエウロパ:ガニメデも同じ1:2で あるのはとても興味深いのですが、それは置いといて、木星→イオ と、エウロパ→イオ、ガニメデ→イオの重力の大きさを比べてみる と、イオがエウロパやガニメデから受ける重力の大きさは、最大で も木星から受ける重力の約10000分の2でした。
 普通なら無視してもかまわない量です。イオの軌道はエウロパや ガニメデが近くにあるときでも10000分の2程度しか変動を受けま せん。
 ところが、木星からイオが受ける潮汐力がハンパではないので、 ことはおもしろくなります。

 [danwa:0194]で長谷川さんが計算しています:
潮汐力は相手の天体の質量に比例して、距離の3乗に反比例します。そこで理 科年表を調べてみると、月の軌道長半径38万4400kmに対し、イオの軌道長半径 は42万2000kmと、あまりかわりません。3乗しても、4分の3程度にしかなり ません。しかし、月の質量が地球の0.0123倍なのに対し、木星の質量は地球の 317倍、つまり木星は月の25772倍もあります。

ということで、イオに働く木星の潮汐力は、地球に働く月の潮汐力の約2万倍 もあります。

 [danwa:0202]で浦田さんが想像しています:
さて、想像ですが、地球の殻でさえ月の潮汐力で20センチも変形しています。
 地面は本当は#もっと変形しているらしいのですが、月→地球の潮汐力 で20cm変形しているとすると、イオはその25772倍で、5.2km変形して いることになります。もっとも、この5.2kmの変形はイオがいつも同じ面 を木星に向けているので、加熱には効きません。

 ところが、上で述べたように、エウロパ、ガニメデの影響でイオが 10000分の2程度木星に近づいたり、遠ざかったりすると、潮汐力は 0.1%程大きくなったり、小さくなったりします。
 5.2kmの0.1%は5mです!ある本にはイオの変化は100m!と書い てありました(私の計算はどこかで間違っているかもしれません)。
 定期的に100mも伸び縮みさせられたら、イオも噴火したくなります よね (^^)。
 エウロパやガニメデの影響で軌道がほんのわずか変化することで、 木星からの潮汐力の大きさが変わり、その結果、イオの定期的な変形 を招いて内部を加熱している、ということ、らしいです。
 逆に、そのくらい変形が大きくないと内部を温めることはできない、 とも言えるのでしょうね・・・。


[danwa:0205] Re: 地球内部の熱源は?
Date:Thu, 23 Mar 2000 13:30:19 From: 石坂
浦田さん、こんにちは。
石坂@科学館です。

[danwa:0202]で浦田さんは書きました:
外殻が溶けていて、その中でさらに重い内核がちょうど地球の中心に浮かんで いるなんて、想像できませんよね。外核の中で内核中心から月の方向に何メー トルかずれていて、地球の自転に引きずられた外核を中心付近でかきまわして いるんですよきっと。
「重い内核が・・・浮かんでいる・・・」?
「外核の中で内核(が)中心から月の方向に・・・ずれてい」る?

 おっしゃっている意味が理解できませんので、状況をスペース シャトル内に移して考えてみます。
 スペースシャトル内で鉄の球を静かに空中に離したら鉄球は地 球に引かれて落ちますか?「浮かんで」いますか?
 400 km上空を飛んでいても、スペースシャトル内には地球か らの引力が働いています。でも、秒速8kmで周回しているため に、シャトル内には地球の引力とちょうど釣合う遠心力が生じて いて「無重量状態」になっています。
 さて、鉄球はどうなりますか?
 また、「無重量状態」のシャトル内では上も下もないのに「浮 く」とはどういうことでしょう?シャトルの中で水と油をフラス コにいれて混ぜたあと放置すると油は「浮いて」くるでしょうか?

 次にシャトル内で、水を静かに放出してみましょう。水は丸く まとまります。その水の玉の中に静かに鉄球を入れたら、どうな るでしょう?
 鉄球は水より重いので地球の方向にずれますか?それとも遠心 力で反対方向に動きますか?

 ではいよいよ、月と地球の場合を考えてみましょう。
 月と地球は互いに引力を及ぼしながら、互いの周りを回ってい ます(公転)。公転の速さはそれによる遠心力が引力とちょうど 釣合う大きさになっています(そうでなければ月はあっという間 にどっかへ飛んでいってしまいます)。
 さて、そんな地球の液体の外核の中に重い固体鉄の内核が入っ ているとして、内核は月の方向にずれるのでしょうか?反対に遠 心力で月とは反対方向にずれるのでしょうか?

結論:内核は外核の中で浮かんでいるわけではないし、内核と外 核の中心がずれることもありません。従って内核が外核をかきま わすことはできません。

先代の太陽の爆発の破片の中の比重が高くて大きい物が惑星の最初の中心に なった可能性もあるので、核分裂エネルギー説もプラスしたらエネルギー収支 がうまくいかないですか?
についてはすでに [danwa:0196]でうまくいかないことを記述して います。そちらをお読みください。


・・・さて、この先 話はどうなるのか?お楽しみに!・・・
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