『科学談話室』の話題より | ||
[danwa:0911] 並走電荷のパラドックス | |
Date:Wed, 30 Jul 2003 07:56:15 | From: 浜口 |
談話室のみなさん,おひさしぶりです. 浜口です. むし暑い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか. こういうときは,パラドックスを肴にビールといきましょう. (紙と鉛筆の用意はよろしいですか) こんな問題を考えてみました. 『等しい正の点電荷Qが2つあるとし,それらをA,Bと名づけます. それらが,間隔Rの平行な直線上を,真横に並んで,速さVで等速運動をしているとします. A●→V ・ ・ R ・ ・ B●→V AがBから受ける力を考えてみます. V=0なら,クーロンの法則による斥力のみです. V>0だと,Bは周囲に磁場を作るので,Aはその磁場中を運動していることになり,磁場からの力が追加されます. フレミング左手の法則からその力の向きを求めると,引力(Bに向かう向き)になります. したがって,AがBから受ける力は,Vによって変化することになります. (ようするに,Vが大きくなると,AとBが及ぼしあう斥力は小さくなる) これでいいんでしょうか? 』 冷酒もいいですね. (注意:未成年の人はお酒以外のもので楽しんでください) 浜口 |
[danwa:0913] Re: 並走電荷のパラドックス | |
Date:Wed, 30 Jul 2003 14:22:30 | From: 桜井 |
桜井です。 V>0の場合 AがBから受ける力は記述がありますが、BがAから受ける力の記 述がありませんね。 Aも同様に磁場を発生し、その向きはBと反対になるので、お互い に打ち消し合って、電荷による斥力のみ、になるんではないでしょう か。 ビールは晩にならないと飲ませて貰えないです。(-_-;) |
[danwa:0914] Re: 並走電荷のパラドックス | |
Date:Wed, 30 Jul 2003 20:13:45 | From: 浜口 |
みなさん,こんにちは. 浜口です. 私の説明不足だったかな. 間隔一定で等速運動,という設定です. 平行なレール上に束縛されていると思ってください. (あるいは,AとBが長さRの棒でつながれていると思ってもよい) ([danwa:0913]桜井さん) > AがBから受ける力は記述がありますが、BがAから受ける力の記 >述がありませんね。 書いていないだけです. > Aも同様に磁場を発生し、その向きはBと反対になるので、お互い >に打ち消し合って、電荷による斥力のみ、になるんではないでしょう >か。 ふむふむ. しかし,その論法でいくと,静止電荷どうしのクーロン力も,消えてしまうことになるのでは? > ビールは晩にならないと飲ませて貰えないです。(-_-;) 私もそうですよ〜.(^o^) 浜口 |
[danwa:0916] Re: 並走電荷のパラドックス | |
Date:Sat, 2 Aug 2003 08:28:58 | From: 浜口 |
みなさん,こんにちは. 浜口です. この話のどこがパラドックス(矛盾・不合理)なのかといいますと, ([danwa:0911]) > したがって,AがBから受ける力は,Vによって変化することになります. >(ようするに,Vが大きくなると,AとBが及ぼしあう斥力は小さくなる) これは静止系Sでみた場合でした. (静止系Sでは,A,Bは速度Vで並走している) さて,A,Bと一緒に速度Vで移動する座標系S'系を考えてみます. S'系ではA,Bは静止しているので,S'系でみると,AとBの及ぼしあう力はクーロン力による斥力のみです. ところがもとの座標系Sでみると,A,Bの及ぼしあう力はそれとは異なっているのです. へんだと思いませんか. 浜口 |
[danwa:0917] Re: 並走電荷のパラドックス | |
Date:Wed, 6 Aug 2003 22:36:44 | From: Ando S. |
Ando S.です。 1ヶ月近く、日本を離れておりました。帰ってきたら、浜口さんのパラドッ クスです。 最初は、何がパラドックスなのか、ピンと来なかったのですが、 [danwa:0916]の説明でよくわかりました。 正直、このようなことは考えたことがなかったですね。電磁気関係の本をい ろいろ流し読みしてみましたが、これまでのところ、このパラドックスと ぴったりのものはありませんでした。 このパラドックスは、「静止した2つの点正電荷を観測者も静止して観測し ているときは、クーロン力による斥力だけが働いているのに、観測者が速度 Vで運動すると、磁気力による引力が生じて、2つの正電荷の状態が変化する (斥力が減少)のはおかしい」、と言い換えても同じことですよね。そし て、たしかに変だと思いますね。 [danwa:0913]桜井さん: > Aも同様に磁場を発生し、その向きはBと反対になるので、お互い >に打ち消し合って、電荷による斥力のみ、になるんではないでしょう >か。 平行に走る電荷によって、互いの磁場が打ち消されるのであれば、コイルで 作る(小学校のとき釘を中に入れて作りました)電磁石が、できないことに なると思います。だから、これは、ちがうように思います。 で、私の考え(想像): 観測者が静止していても、速度Vで運動していても、2つの点正電荷の状態が 同じであるためには、速度Vで運動しているときに、何らかの別の力が生じ るのだと想像します。その力と磁気力が打ち消しあって、点電荷の状態は変 化しない、ということになるのではないかと思います。だから、その別の力 は、結局、クーロン力(この場合、斥力)を強くする方向に働くのでしょ う。 そして、観測者が運動することで変化することといえば、相対論的になりま すね。それで、何が新しく生じるのかといえば、結局、電荷そのものが増加 するのでしょうか?相対論では、運動する物体の質量が静止しているときよ り増加しますからね。同じことが電荷についても、起こるのでしょうか。 |
[danwa:0918] Re: 並走電荷のパラドックス | |
Date:Thu, 7 Aug 2003 07:52:17 | From: 浜口 |
Ando S.さん,おひさしぶりです. 浜口です. >正直、このようなことは考えたことがなかったですね。電磁気関係の本をい >ろいろ流し読みしてみましたが、これまでのところ、このパラドックスと >ぴったりのものはありませんでした。 電磁気学がからむので,パラドックスとしは,あまり初心者向きではないのでしょう. 初心者向きの本にこれが紹介されているのを見たことはないですね. >このパラドックスは、「静止した2つの点正電荷を観測者も静止して観測し >ているときは、クーロン力による斥力だけが働いているのに、観測者が速度 >Vで運動すると、磁気力による引力が生じて、2つの正電荷の状態が変化する >(斥力が減少)のはおかしい」、と言い換えても同じことですよね。 はい.(^_^) >そして、たしかに変だと思いますね。 でしょ.(^_^) >観測者が静止していても、速度Vで運動していても、2つの点正電荷の状態が >同じであるためには、速度Vで運動しているときに、何らかの別の力が生じ >るのだと想像します。その力と磁気力が打ち消しあって、点電荷の状態は変 >化しない、ということになるのではないかと思います。だから、その別の力 >は、結局、クーロン力(この場合、斥力)を強くする方向に働くのでしょ >う。 正しい考察です.(^_^) >だから、その別の力 >は、結局、クーロン力(この場合、斥力)を強くする方向に働くのでしょう。 そういうことになりますね. >何が新しく生じるのかといえば、結局、電荷そのものが増加するのでしょうか? おしい. 電荷は変化しません. ヒントは, ・静止した点電荷の周囲の電場(電気力線の形). ・ローレンツ収縮. 浜口 |
[danwa:0919] Re: 並走電荷のパラドックス | |
Date:Fri, 8 Aug 2003 18:07:02 | From: Ando S. |
Ando S.です。 [danwa:0918]浜口さん: >おひさしぶりです. > > 浜口です. こちらこそ、おひさしぶりです。 > ヒントは, >・静止した点電荷の周囲の電場(電気力線の形). >・ローレンツ収縮. そうか、電場が、運動方向に対して、収縮するんですね。言いかえれば、点 電荷の電荷量そのものは変化しないけれど、2つの電荷を結ぶ方向の電気力 線の線間隔が密になって、その結果、クーロン力が強くなるということです か。 |
[danwa:0920] Re: 並走電荷のパラドックス | |
Date:Sat, 9 Aug 2003 08:22:14 | From: 浜口 |
こんにちは. 浜口です. ([danwa:0919]Ando S.さん) >そうか、電場が、運動方向に対して、収縮するんですね。言いかえれば、点 >電荷の電荷量そのものは変化しないけれど、2つの電荷を結ぶ方向の電気力 >線の線間隔が密になって、その結果、クーロン力が強くなるということです >か。 はい,そうです!!! 等速直線運動する点電荷が作る電場は球対称ではなくて,進行方向(前後)では弱く,垂直方向では強くなるんです. その結果,電場から受ける力(斥力)の増加が,磁場から受ける力(引力)をうまく相殺してしまいます. じつは,私はこのことを最近知りました. 2週間ほど前に高校生から質問されたのです. 電磁気学の本と相対論の本を見ながら,1日くらい考えて,解決できました.A^_^; 前にも書きましたが,このパラドックスは,電磁気学がからんでいるため,やや高度です. (クーロンの法則,ビオ・サバールの法則を知っていないと,パラドックスに気づかない) 浜口 |
[danwa:0925] Re: 並走電荷のパラドックス | |
Sat, 23 Aug 2003 01:02:42 | From: SMR |
はじめまして。最近この談話室を知りました。SMRです。 で、いきなりですが表題が以前考えたことのある話でちょっと意見が異なるので投稿します。 「電場は・・・ローレンツ収縮で進行方向(前後方向)では弱 く、垂直方向に強くなる・・」には同意見です。でも「・・電場から受ける力(斥力の増加が、磁場から受ける力(引力)をうまく相殺してしまいます」とは異なる意見です。 理由は、数式でおまけに不正確な記述で申しわけないのですが下記です。(おまけに手元に相対論の本がないとわからず、説明もへたかも・・) ①まず、相対論では、力は4元力fというもので記述されてます。 これの空間成分は、高校でならった通常の力(ニュートン力)Kと f=K/(1−V^2/C^2)^0.5の関係があります。(Vは今考えている慣性系からみた粒子の速度、Cは光速です) ②粒子の静止して見える系S’ではV=0なので4元力の空間成分とニュートン力は一致します。f’=K’。 ③この4元力f’を、粒子が速度Vで並走する様にみえる系Sにローレンツ変換すると、座標系間の相対速度Vに垂直な4元力成分は変化しません。つまり(力の方向をYとすると) fy=fy’・・(1)です。 これを通常の力になおすとS系では粒子が運動しているので K=(1−V^2/C^2)^0.5×fy・・(2) S’系では粒子が静止しているのでK’=fy’・・(3) 以上(1)(2)(3)よりK=(1−V^2/C^2)^0.5×K’となり、粒子が運動して見える系では、粒子が静止して見える系より力(y方向)が小さくなります。 これは電磁気力にかぎらずにいえることと思います。 但し、私自身も感覚的にはしっくりしてません。力も結局、相対論では4次元時空のベクトル(の成分)なのでこうなるのかなと思ってます。 |
[danwa:0926] Re: 並走電荷のパラドックス | |
Date: Sat, 23 Aug 2003 09:10:40 | From: 浜口 |
浜口です. SMRさん,はじめまして. >でも「・・電場から受ける力(斥力の増加が、磁場から >受ける力(引力)をうまく相殺してしまいます」とは >異なる意見です。 きちんと計算すると,並走電荷間の力は(相殺されて静止時と同じまま,とはいえず)小さくなる.ということですね. はい,そのとおりです.(^_^) 私は,そこまでくわしく書くのは大変だったので,結論だけを述べたのでした. (相対論を知らない人に説明するのは,相対論そのものの解説をする必要があり,大変) もしも,どなたかからご指摘があったら,触れようと思ってました.(^_^ゞ >理由は、数式でおまけに不正確な記述で申しわけない >のですが下記です。 > >(中略) > >.5×K’となり、粒子が運動して見える系では、粒子が静止 >して見える系より力(y方向)が小さくなります。 同意見です. もともと私は高校生からこの質問を受けて考えてみたのでしたが,おもしろい問題なので,談話室にも紹介させていただいたのです. 生徒に対しては,このことにも触れて説明しましたので,その説明をこちらにコピーします. *****コピーここから***** 期待したいことは 「並走電荷の片方が他方から受ける力F(電場・磁場のどちらを介したとしてもその合力)が,電荷とともに動く系でみた力F0(静電気力のみ)と, 同じであること」 でしたね. ところが計算によると,F=F0とはならず, F0=Q1Q2/(4πεr^2) F =Q1Q2/(4πεr^2) ×Sqrt(1−(v/c)^2) となってしまうのでした. さて,解決はこうです. 「ある系で大きさF0の力を,その系に対して速度vで(力F0と垂直方向に)動く系からみると,大きさは F0×Sqrt(1−(v/c)^2) になる」 (なんで?といわれると,予備知識(相対論)のない人に説明はむつかしいのですが,座標系ごとに時間のテンポが異なることが原因です) したがって,FとF0は「同じ力」です. 問題は解決されていたのです. *****コピーここまで***** つまり, F0=Q1Q2/(4πεr^2) F =Q1Q2/(4πεr^2) ×Sqrt(1−(v/c)^2) を4元力(ミンコフスキー力)に換算すると f0=Q1Q2/(4πεr^2) f =Q1Q2/(4πεr^2) となり,同じになるということです. 私としては,問題は解決されていると思うのですが,いかがでしょうか. またご意見をお聞かせくだされば幸いです. 浜口 |
[danwa:0927] Re: 並走電荷のパラドックス | |
Date: Sat, 23 Aug 2003 | From: SMR |
SMRです. 浜口さん、ご回答ありがとうございます. なっとくです. 問題は解決されてると思います. それと、今回メールを書いていて思ったのですが やっぱり、うまく、説明しようとするのは難しいですね. 私はその点では、もっと勉強しないといけないな.. (教師ではありませんが、会社の後輩や自分の子供 とかにうまく説明したい!) 今後もよろしくお願いいたします。 SMR |
[danwa:0930] Re: 並走電荷のパラドックス | |
Date: Sat, 6 Sep 2003 18:18:32 | From: Bi.Bi. |
浜口さん、みなさんこんにちは。 Bi.Bi.です。 このスレッドは議論が終焉したようですね。 私はカンニングをしました。 中野董夫先生著の相対性理論(岩波)の172ページに似たのがありました。 「静止している電線に電流が流れていて、負の電荷を持った粒子が電流に平行に反対方向へ速度vで動いている場合を考える。」というのです。 浜口さんの解答と同質の議論がされています。 手抜きの横レスでした。 Bi.Bi. |
[danwa:0931] Re: 並走電荷のパラドックス | |
Date: Mon, 8 Sep 2003 15:54:39 | From: 浜口 |
浜口です. Bi.Bi.さん,おひさしぶりです. >このスレッドは議論が終焉したようですね。 まだ,議論を続けることはできますよ. 次の疑問があるからです. (2学期が始まって忙しくなったので,黙っていたのですが A^_^; ) 「導線を平行に張って,同じ向きに電流を流すと,導線間に引力がはたらく」 という事実があります. (わかりやすいように,2本の導線に流す電流を同じとしておきましょう) 電流とは「電子の流れ」ですから,導線間の引力とは,並走する電子間にはたらく引力である,ということになります. これは,並走する荷電粒子間の力は静止時と同じだ,という結論と矛盾するように思えます. 今,中野先生の本が手元にないので確かめられないのですが,本に出ているのはこの疑問に関する話でしょうか. 浜口 |
[danwa:0932] Re: 並走電荷のパラドックス | |
Date: Tue, 9 Sep 2003 18:52:35 | From: Bi.Bi. |
浜口さん、こんばんは。 >「導線を平行に張って,同じ向きに電流を流すと,導線間に引力がはたらく」 >という事実があります. >(わかりやすいように,2本の導線に流す電流を同じとしておきましょう) > 電流とは「電子の流れ」ですから,導線間の引力とは,並走する電子間にはたらく引力である,ということになり ます. > これは,並走する荷電粒子間の力は静止時と同じだ,という結論と矛盾するように思えます. 並走電荷の場合は斥力だったので、平行電流も斥力になるはず、しかし引力とはこれいかに? と言うわけですね。 > 今,中野先生の本が手元にないので確かめられないのですが,本に出ているのはこの疑問に関する話でしょうか. 中野先生の場合は、導線に流れる電子流だけでなく、導線を構成している金属イオンも考慮されています。 これがヒントとなりそうです。 Bi.Bi. |
[danwa:0933] Re: 並走電荷のパラドックス | |
Date: Tue, 9 Sep 2003 21:49:42 | From: 桜井 |
桜井です。 平行電流は斥力ですが、磁力は引力になりますね。 |
[danwa:0934] Re: 並走電荷のパラドックス | |
Date: Wed, 10 Sep 2003 13:14:06 | From: SMR |
浜口さん、Bi.Bi.さん、桜井さん 談話室のみなさん、こんにちは SMRです。 同方向の平行電流間の力は、引力で、 反対方向の平行電流間の力は斥力でしたね。 私も今手元に本がないのですが、 中野先生の本は、 たしか、電流と、電流の方向にはしる一個の電荷の 間に働く力を説明してたと思います。 たしか、キーワードは、ローレンツ収縮。 |
[danwa:0936] Re: 並走電荷のパラドックス | |
Date: Mon, 22 Sep 2003 09:33:51 | From: Bi.Bi. |
談話室の皆さん、こんにちは。 Bi.Bi.です。 議論がほとんど発展しませので、 私が空で思っている事を簡単に書きます。 [danwa:0931] > 「導線を平行に張って,同じ向きに電流を流すと,導線間に引力がはたらく」 > という事実があります. > (わかりやすいように,2本の導線に流す電流を同じとしておきましょう) > 電流とは「電子の流れ」ですから,導線間の引力とは,並走する電子間にはたらく引力である,ということ になります. > これは,並走する荷電粒子間の力は静止時と同じだ,という結論と矛盾するように思えます. 導線は、電子流だけでなく、陽の電荷を持った金属格子があります。 この金属格子が並走電荷の斥力をキャンセルするものと思います。 つまり、金属格子が電子による負の電荷密度を中和するのでは? たしか、電流の流れる導線同士の相互作用の導出は、 電流によって生じる磁場がもう片一方の電流に作用する力を求めたもので、 電荷密度の相互作用は考慮してませんでしたよね。 Bi.Bi. |
・・・さて、この先 話はどうなるのか?お楽しみに!・・・ | |
入室希望の方はこちらへ | 『科学談話室』の話題一覧 |