『科学談話室』の話題より | ||
[danwa:0939] 文部科学省学力テスト | |
Date: Sat, 24 Jan 2004 15:45:23 | From: 浜口 |
談話室のみなさん,おひさしぶりです.
2004年1月24日の朝日新聞朝刊1面に「文部科学省は02年11月に実施した学力テス トの結果を発表した.数学と理科で文科省側が期待した正答率を大幅に下回った」と いう主旨の記事があり,30面に物理の問題が掲載されていました. 掲載された問題文は次のようなものです. *****引用開始***** 【物理IB】 理恵さんは、ボールを真上に投げた。空気の抵抗は無視できるものとして、ボール を放してから再び同じ位置に戻るまでの時間と速度の関係を、上向きを正として表し ているグラフを選びなさい。(問題文は一部簡略化) *****引用終了***** 私はこれを読んで“ボールを放してから再び同じ位置に戻るまでの時間”と“(投 げた)速度”の関係をたずねているのだと理解しました. ところが選択肢を見ても,それにあてはまるもの(正比例のグラフ)がないのです. なんだこりゃ?と思って正答を見ると,出題者は(ボールを放してから再び同じ位 置に戻るまでの間で)“ボールを放してから経過した時間”と“その時間(瞬間)にお ける速度”との関係をたずねているらしいのです. 思わず,問題文を赤ペンで校正しそうになりました. 問題文を一部簡略化したために,こんな変な文になってしまったのか,それとも, 原文からしておかしかったのか,どなたかご存知ないでしょうか. 浜口 |
[danwa:0940] Re: 文部科学省学力テスト | |
Date: Mon, 26 Jan 2004 22:27:04 | From: Bi.Bi. |
浜口さん、こんばんは、Bi.Bi.です。
浜口さん[danwa:0939] > 私はこれを読んで“ボールを放してから再び同じ位置に戻るまでの時間”と“(投 > げた)速度”の関係をたずねているのだと理解しました. 浜口さんのアップを斜め読みして、新聞を見ました。 私直感的に新聞に書かれた「正答」を得ました。 選択肢に正答ありき、という思い込みで文章を読んだからでしょう。 なにがいかんの?と思って、また浜口さんのを読みました。 やっと理解しました。 思い込みは恐ろしいですね。いけませんねー。 しかし、これが出題された文そのままだとしたら、これもまたいけませんねー。 Bi.Bi. |
[danwa:0941] Re: 文部科学省学力テスト | |
Date:Mon, 26 Jan 2004 22:34:47 | From: 長谷川 |
浜口さん、談話室のみなさん、ご無沙汰しております。長谷川です。 浜口さん [danwa:0939] 文科省学力テスト > 掲載された問題文は次のようなものです. > > *****引用開始***** > 【物理IB】 > 理恵さんは、ボールを真上に投げた。空気の抵抗は無視できるものとして、ボール > を放してから再び同じ位置に戻るまでの時間と速度の関係を、上向きを正として表し > ているグラフを選びなさい。(問題文は一部簡略化) > *****引用終了***** > > ・・・・・ > > 問題文を一部簡略化したために,こんな変な文になってしまったのか,それとも, > 原文からしておかしかったのか,どなたかご存知ないでしょうか. 国立教育政策研究所 http://www.nier.go.jp/homepage/kyoutsuu/index.html に、 『平成14年度高等学校教育課程実施状況調査』 http://www.nier.go.jp/kaihatsu/katei_h14/index.htm が載っています。 まだちゃんと見ていませんが、その中の 3 平成14年度高等学校教育課程実施状況調査科目別分析状況(中間整理) の物理IBに、問題例として上の問題も載っています。全問題が載っているわけ ではありませんが、おそらく原文そのままが掲載されていると思われます。 で、これを見ると、問題文は少し簡略化されていますが、浜口さんが指摘され ている文言については、同じですね。 |
[danwa:0942] Re: 文部科学省学力テスト | |
Date:Mon, 26 Jan 2004 23:53:38 | From: Ando S. |
談話室のみなさんこんばんわ。Ando S.です。久しぶりの話題ですね。口火
を切ってくれるのは、いつも、浜口さんのように思います。ありがとうござ
います。 この問題、最初に読んだ時は、私も一瞬問題の意味がつかめず、2度3度読み 返しました。そして、意味が理解できた(正答に到達した)のは、「上向き を正として表している」という表現です。これで、ボールが上昇してその後 落下してくるまでの間における速度の変化を問うているのだなあ、と理解し ました。 「ボールを放してから再び同じ位置に戻るまでの時間と速度の関係」という 表現だけをとらえれば、浜口さんの言われるように、2つの解釈が成り立つ と思います。しかし、そのあとにつづく、「上向きを正として」いう表現 で、問題の意味は一つに限定せざるを得ないように私は思いました。 さらに、つけくわえれば、「理恵さんは、ボールを真上に投げた。」という 出だしの表現にも意味があるように思います。一つの行為を行った後に来る 結果を問うていることになります。浜口さんが理解されたような問題である なら、「理恵さんは、ボールを真上に投げようとしています。」となると思 うのです。 余談ながら、私は、あるきっかけで小学校の時からずっと感じているのです が、ペーパ試験で結果を見ることには限界があるように思うのです。問題の 意味が正しく解答者に伝わらなければ、試験そのものが成立しないし、それ に対する解答者の能力は判定できないのですから。 Ando S. |
[danwa:0943] Re: 文部科学省学力テスト | |
Date:Wed, 28 Jan 2004 20:56:43 | From: 浜口 |
浜口です,こんばんは。 BiBi.さん,長谷川さん,Ando.Sさん おひさしぶりです。(^_^) なにはともあれ,長谷川さんに教えていただいたサイトで,原文を見ること にしました。 すると,例として(今回の問を含む)何問かが掲載されていました。 原文は,次のようなものでした。 *****引用開始***** [2] 理恵さんは、ボールを真上に投げた。ボールの運動について次の各問に答えなさい。 ただし,空気の抵抗は無視できるものとする。 最高点 〇 : : ↑〇↓ 上昇中 : 下降中 : : : ボールを : 放した位置 〇 【1】ボールを放してから再び同じ位置にもどるまでの時間と速度の関係を表すグラフはどれか。 上向きを正として,次の(1)〜(4)のうちから一つ選び番号で答えなさい。 (グラフ4つは新聞掲載と同じ) 【2】ボールにはたらいている力の向きは上昇中,最高点,下降中のときどうなるか。 次の(1)〜(4)のうちから正しい組み合わせを一つ選び番号で答えなさい。 上昇中 最高点 下降中 (1) 上向き 上向き 上向き (2) 上向き 力ははたらかない 下向き (3) 下向き 力ははたらかない 下向き (4) 下向き 下向き 下向き *****引用終了***** 新聞掲載の問は上の【1】です。 文章は,新聞掲載の文章と同じですね。 この文章を読んですぐに意味がわからなくても,選択肢や図があるので,最 終的には,出題者の意図はわかるでしょう。 しかし,悪文であることにかわりはないと思います。 おそらく,出題者は,投げ上げで「時間と速度の関係」といえば, 公式v=v0−gt以外のことは何も頭に浮かばないのでしょう。 (だから,文が他の意味を持つかもしれないとは思いもよらない) 私個人としては,「往復所要時間と初速度の関係」を問うのは,問題として なかなかおもしろいと思ったんですけどね。 浜口 |
[danwa:0944] Re: 文部科学省学力テスト | |
Date:Wed, 28 Jan 2004 21:22:56 | From: 浜口 |
浜口です。 (Bi.Bi.さん) >浜口さんのアップを斜め読みして、新聞を見ました。 >私直感的に新聞に書かれた「正答」を得ました。 「問題文を斜め読みしてすぐに選択肢をみる」というのは「試験のコツ」の ひとつですね。 たいていの生徒や受験生は,そのような方法に十分なれていると思われます. 実際そのほうが点が取れます. (Ando S.さん) >この問題、最初に読んだ時は、私も一瞬問題の意味がつかめず、2度3度読み >返しました。 わたしもそうでした。 (Ando S.さん) >余談ながら、私は、あるきっかけで小学校の時からずっと感じているのです >が、ペーパ試験で結果を見ることには限界があるように思うのです。 はい,限界があると思います。 ただ,客観的かつ公正に点をつけようとすると,ペーパーテストにならざる をえないような気がします。 >問題の >意味が正しく解答者に伝わらなければ、試験そのものが成立しないし、それ >に対する解答者の能力は判定できないのですから。 その通りだと思います。 ペーパーテストの出題者は,意図した意味が誤解なく伝わるよう,十分配慮 した文章を作るべきです。 「自然現象を数量等を用いて正しく表現したり,自然現象とグラフ等による表 現とのの関係について理解する力が十分身に付いていないと考えられる例がみ られた。例えば,等加速度直線運動をする物体の速度と時間のグラフが直線に なることを理解できていないと思われる生徒が4割余りいた。」 (http://www.nier.go.jp/kaihatsu/katei_h14/index.htm) などと分析する前に,自分の出題した文章が適切であったかどうかを分析して ほしいものです。 浜口 |
・・・さて、この先 話はどうなるのか?お楽しみに!・・・ | |
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