2004年ノーベル物理学賞

2004年ノーベル物理学賞

 2004年のノーベル物理学賞は、 "強い力"に関する研究への功績で アメリカのグロス博士(63歳:カリフォルニア大学サンタバーバラ校)、 ポリツァー博士(55歳:カリフォルニア工科大学)、 ウィルツェク博士(53歳:マサチューセッツ工科大学)の三氏が受賞しました。

 物質の最も基本的な構造である原子は、プラスの電荷を持つ原子核マイナスの 電荷を持つ電子から構成されています。
 原子核は電気的に反発するプラスの電荷を持つ陽子と電気的に中性な中性子からできていますが、 なぜ、電気的に反発する陽子同士がくっついていられるのでしょう?

 実は原子核の中では、電気的な力より強い「強い力」が働いています。
 この「強い力」が陽子や中性子をくっつけているのです。

 さらに、陽子や中性子は「クォーク」というさらに小さな基本粒子が3個集まって できていますが、このクォーク同士を結び付けているのも「強い力」です。

 この「強い力」には「原子核の大きさよりも遠いところでは働かず、原子核内では電気的な力よりも強いにもかかわらず、 近づけば近づくほど弱くなる」という奇妙な性質があります。近づくと弱くなるという性質はゴムひもに似ていなくもありません。

 この「強い力」の性質によって、陽子や中性子の中のクォークは強く結びついているにもかかわらず、 あたかも何の力も働いていないかのように自由に動いていると考えられています(この性質を"漸近的自由"と言います)。
 また、クォーク同士を遠ざけようとすると、非常に強力な引力が働くため、 クォークを1つだけ単独に取り出すことはできません。

 こうした「強い力」の性質を説明したのが、1973年、グロス博士らの提唱した「色力学」です。
 「色力学」では、クォークに「」という新たな量(性質)を導入し、 「色」を合成して「白く」なろうとする性質がクォークや粒子を結びつける「力」だと説明しました (ここでいう「色」は強い力を説明するための概念であり、日常生活で現れる色とは全く関係ありません)。

 「色力学」の登場により、原子核よりも小さな世界の理解が飛躍的に向上し、 「電磁気力」、「強い力」、「弱い力」という性質の違う3つの力の統一的な理解に道が開きました。


参考: ノーベル財団のプレスリリース


2004.10.7記(石坂





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