最近日本人が発見した彗星

このところ日本人のアマチュア天文家があいついで彗星を発見しました。ひとつは「イケヤ・チャン彗星」、もうひとつはおそらく「スナイダー・ムラカミ彗星」と呼ばれるようになるものです。

イケヤ・チャン彗星は、2002年2月1日。静岡県のアマチュア天文家の池谷薫さんと、中国の張大慶(チャン・デギン)さんがほぼ同時に発見したものです。発見時は8等級で、都会で小型望遠鏡をつかってかろうじてみえるかどうかでした。その後、太陽に接近するにつれて明るくなり、現在は双眼鏡でも見つけられる5等級になっています。そして地球に近いために急速に移動しており、現在はうお座からカシオペヤ座にむかっています。3月18日ごろに太陽に最も近づき、下旬にかけて空の暗いところなら肉眼で見られる見込みです。くわしい場所などは下記:国立天文台・天文ニュースや、アストロアーツ社の特集をごらんになってください。

参考:国立天文台・天文ニュース 521 523 528

一方、まだ名前は決まっていませんが、新潟県のアマチュア天文家の村上茂樹さんも、2002年3月13日にアメリカのダグラス・スナイダーさんと同時にわし座に彗星を発見しました。この彗星はこの記事を書いている時点ではまだ名前が決まっていませんが、通例にしたがい発見順に「スナイダー・ムラカミ彗星」と呼ばれることになるでしょう。発見時の明るさは11等級で、都会で小型望遠鏡で見るのは無理でしょう。まだ発見まもないため将来の軌道が発表されていません。

参考:国立天文台・天文ニュース 533

彗星とは

彗星(すいせい)は、太陽をめぐる直径数100m〜数10kmの巨大な雪とドロのかたまりです。(写真は1997年に地球に近づいたヘール・ボップ彗星)

太陽に近づくと表面が蒸発して、ガスやチリをまき散らし、それが太陽の光の圧力で太陽と反対がわにふきながされます。その様子がホウキのようなので「ほうき星」といわれることもあります。英語では女性の長い髪の毛にたとえて comet(髪の毛のようなもの)といいます。

彗星は、いまから46億年前に宇宙のかたすみで地球や太陽が誕生したさいに、太陽系の外苑部に吹き飛ばされ取り残された物質と考えられています。通常は、惑星がめぐる軌道より外側をゆっくりと周回していますが、なんらかの影響で軌道がみだされて太陽に接近することがあります。それが発見されることになるのです。

また、彗星の中には、いったん太陽に接近したあと、他の惑星の影響でハレー彗星のように太陽の近くの惑星間をめぐるようになる周期彗星もあります。

彗星は、発見者の名前が独立発見順に最大3人までつけられることになっています。名誉なことなのでアマチュア天文家が発見を競ってきました。ただ最近は、コンピュータとデジタルカメラを搭載したロボット望遠鏡が自動的に彗星を発見するようになり、アマチュアによる発見数が極端に少なくなっています。

記:2002.3.13


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