銀河衝突と星形成

銀河の衝突によって星が爆発的に生まれる

 銀河は数十億〜数千億個の恒星から構成されています。 こうした大量の恒星がいつどのように形成されたかは、まだよく分かっていません。
 大量の星を作るためには、連鎖的な星形成メカニズムが必要です。
 星の材料となる水素ガスの巨大な塊(巨大分子雲)の中で一旦星形成が始まりさえすれば、 形成された星のうち質量の大きなものは短い時間に進化して超新星爆発を起こし、 今度はその爆風が周りの分子雲をはき集めて星形成を誘発する ・・・という連鎖が起き、材料(水素ガス)がなくなるまで星を作り続けます。

 つまり、星形成超新星爆発分子雲の圧縮星形成→・・・

 しかし、では、最初の星形成はどのように始まったのでしょうか? 銀河における星形成にも"ニワトリが先か、卵が先か?"問題が存在するのです。

 この問題に対する一つの答えが、ヨーロッパ宇宙局ESAとアメリカ航空宇宙局NASAの共同運用赤外線宇宙天文台ISOによって得られました。
アンテナ銀河(HST image, ESA/NASA)
 写真はからす座にあるアンテナ銀河NGC4038/4039(地球からの距離6000万光年)です。 アンテナ銀河は2つの渦巻き銀河が衝突合体している最中で、昆虫の触角(アンテナ)のように変形しているため、このように呼ばれます。
 アンテナ銀河は、衝突合体の衝撃で星形成が盛んになっていますが、ちょうど2つの銀河の重なり合う部分(写真では点線で囲まれた部分)では、 星形成の兆候(水素分子からの明るい赤外線)は見られるものの、超新星爆発は起きていないことが分かったのです。
 これは連鎖的星形成において、まだ超新星爆発に至らないほど早い段階を観察しているものと推測されます。 あと数100万年もすると盛んな超新星爆発が起き、アンテナ銀河の明るさが倍増すると考えられています。

 130億年ほど前の銀河形成期には、星はほとんどなく、水素ガスの塊が存在している時期がありました。 それらの水素ガスの塊(前銀河段階)が衝突合体を繰り返して大きく成長をしていったのですが、 その合体における衝撃によって水素ガスが圧縮され、 それが最初の星形成の引き金になったことを、アンテナ銀河は示唆しています。

 さて、アンテナ銀河のように銀河同士が衝突合体を行った場合は最終的にどのような形になるのでしょうか?

 その答えも最近NASAのハッブル宇宙望遠鏡HSTによって公表されました。 ワタボコリ銀河(NASA/ESA/The Hubble Heritage Team[STScI/AURA]))
 この銀河は南天ろ座にあるNGC1316(地球からの距離7500万光年)という巨大な楕円銀河です。
 NGC1316は強力な電波天体としても知られ"Fornax A"と呼ばれています。

 まるで綿ぼこりのような姿ですが、黒っぽい筋は盛んな星形成によって大量に生成した固体粒子(ダスト)です。 NGC1316には生々しい衝突の痕跡が数々残っています。 およそ数10億年前に、水素ガスをたっぷり含んだ渦巻き銀河が衝突合体したものだろうと考えられています。

 衝突合体した渦巻き銀河は長い時間をかけて、丸い楕円銀河に形を変えるのです。 
 こうした銀河進化の解明も、天文学における重要な研究テーマの一つになっています。

※原文は英語ですが、ESAのホームページ および、HSTのホームページ
をご覧ください。

2005.4.5記(石坂

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