星形成銀河における巨大ブラックホールの成長

巨大ブラックホールの急速な成長

 銀河中心にある巨大なブラックホールの成長について、 ケンブリッジ大学のアレグザンダー博士らの研究がイギリスの科学雑誌Nature(2005年4月7日号)で紹介されています。

 銀河系(天の川銀河)も含め、大半の銀河の中心には100万〜1億太陽質量ぐらい(太陽質量は約2×1030kg)の巨大なブラックホールがあります。 その巨大ブラックホールの質量と、銀河の円盤部を除く星の総量とはよく比例していることが分かっています。
 このことは、巨大ブラックホールの形成と銀河の星形成の間に、物理的な関係があることを示しています。

 巨大なブラックホールの代表としては、遠方のクェーサーが挙げられます。
 クェーサーは質量が1億太陽質量もある巨大なブラックホールですが、その母銀河ではそれほど星形成は盛んではありません。

 ということは、クェーサーよりも遠方(80億光年より彼方)に、星形成が盛んで、かつその中心で巨大ブラックホールが成長途中にある銀河があるはずです。

 アレグザンダーらは、80億光年より遠いところにある15個のサブミリ波銀河からのX線を観測しました。 サブミリ波銀河は星形成が盛んな銀河だと考えられています。 また、X線の強さは中心ブラックホールの活動性(成長)の指標となっています。

 アレグザンダーらの観測によると、サブミリ波銀河ではクェーサーより一桁ほど小さいものの、 1年間に太陽1個分くらい大きくなっていくブラックホールがあることが分かりました。

 「1太陽質量/年」という成長率は極めて大きく、1億年でブラックホールの質量が1億太陽質量になる計算です。

 急成長するブラックホールを持つサブミリ波銀河の形をよく調べてみると、 銀河同士の衝突が行われているらしいことが分かってきました。

 前回報告したように、銀河同士の衝突が起きると星形成が盛んになります。
 そして、効率よくガスを中心に落としてブラックホールの成長を助けます(ガスはブラックホールのエサです)。

 激しい衝突をした銀河は丸くなることが分かっていますが、実際、巨大なブラックホールを持つ銀河は巨大な楕円銀河が多いです。
 日々進む観測研究によって、巨大ブラックホールの成長と、銀河の進化、という天文学上の2大研究テーマについて、実は原因が一つであることが解明されてきています。

2005.4.13記(石坂

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